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全国大学選手権大会・2回戦 対同志社大学戦

全国大学選手権大会・2回戦 対同志社大学戦

2011/12/26

残り1分での逆転劇! いざ国立へ


12月25日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学 18-12 同志社大学●



《帝京》
1吉田 2白 3前田(龍)⇒西村⇒前田(龍) 4小瀧⇒小山田 5マニング 6ボンド 7松永(浩) 8大和田
9滑川 10森田 11南藤 
12南橋 13中村(亮) 14伊藤(拓) 15竹田

《同志社》※先発のみ
1張 2日野 3北川 4前田 5冨田 6於保 7金本 8西林 9下平 10森脇 11宮島 12小林 13西田
14藤本 15正海



大学選手権2回戦の相手は、唯一、大学選手権3連覇を成し遂げている同志社大学。3連覇を目指す帝京としては、この立ちはだかる壁をしっかりと乗り越えていきたい。まずはディフェンスから流れを作って、強みであるFWをどこまで前面に出せるかが注目となった。

【前半戦】

寒空の中、いよいよキックオフ。帝京フィフティーンはやや硬い表情だ。試合の入りは序盤からやや苦しい展開を迎える。キックオフからのボールでラックを構成するも、パスアウトの際にオブストラクションの反則を取られてしまう。開始1分でPGを奪われ、3点を先制されてしまう。

だが、慌てる様子はまったく見られないのが帝京の最大の強み。一方で相手の攻めも鋭く、必死の防戦が続く。相手キックのボールがゴールライン際に転がるも、FB竹田が懸命に戻ってグラウンディング。ドロップアウトかと思われたが、判定はキャリーバック。相手ボールの5mスクラムとなる。

微妙な判定だが、ここはプレーで挽回するしかない。しっかり守って相手のミスを誘い、ピンチをしのぐ。

なおも守りの時間帯が続く。同志社自慢のBKに展開されてゴール前へ。再度、5mスクラムもここはFW陣が頑張る。吉田・白・前田が驚異の推進力を見せる。押し込んでターンオーバー、攻めに転じる。

竹田の好タッチキックで相手ゴール前まで運び、帝京ボールのスクラム。ここまで来れば、FWで取り切るのみ。No8大和田が持ち出し、FL松永(浩)へ。ラックサイドでラインを形成していたLO小瀧からLOマニングへとすばやくパスが渡って、トライ。帝京が逆転に成功した(5-3)。



その後、またしても攻められる時間帯となるが、しっかりとしたディフェンスで防ぐ。CTB中村(亮)、SO森田、HO白ら、FW、BKとも好タックルを連発。また、小瀧がパスカットを試みる。惜しくもノックオンとなるも、鋭い出足で相手の攻撃のリズムを乱す。

苦しい展開をしのぐと、帝京の攻めの時間帯がやってくる。この試合何度もゲインを見せた大和田の突進でゴールラインに迫る。だが、惜しくもグラウンディングできずにキャリーバック。仕留めるまでには至らない。さらにマニング、森田の突進で前進を図るも、相手ディフェンスにからまれて攻めきれない。

手に汗握る展開で、前半は5-3で折り返すこととなった。

同志社大学の厳しい攻守になかなかペースをつかめなかった前半だが、それでもリードして折り返すことができた。後半も我慢の展開が予想されたが、ここは全部員一丸となって戦ってくれることを願うのみ。



【後半戦】

ハーフタイム。岩出監督は選手を諭すように語り掛ける。「もしかしたら自分も甘かったかもしれないが、自分たちのスイッチをもう一度リセットして、甘さを捨ててチャレンジしていこう。過信していたわけではないが、楽にゲームを進めようとしていたところがあったのではないか。すぐに取れそうなところで取れないことにイライラしないで、一つ一つのプレーに集中しよう」。

いよいよ勝負の後半戦が再開される。開始直後は帝京が攻め込む。

相手ボールをFWが押し込んでターンオーバーすると、中村が前進。さらにFWで前に出て、ゴール前へ。モールを形成し、押し込むかに見えたが、相手がモールから離れてしまい、オブストラクションを取られてしまう。

5分にPGを決められ、逆転を許してしまうが、ここでもけっして焦ったり、浮き足立ったりすることはない帝京。WTB伊藤(拓)が相手のキックをチャージするなど、反撃に転じる。相手の反則を誘い、すぐに再逆転に成功する(8-6)。

その後、大和田らが大きくゲインする場面があるが、仕留めるまでには至らない。お互い一進一退のシーソーゲームとなる。同志社、帝京、同志社とPGを取り合い、11-12と1点リードされて、残り時間は5分。



だが、ここでも帝京は焦らず、目の前のプレーに集中している。

キャプテン森田はこう振り返る。
「まだ残り時間はありましたので、まずはボールの再獲得とエリアを前に上げることを考えました。『大事なポイントだ。丁寧に集中してプレーしよう』と声を掛けました。」

SH滑川はこう語る。
「『どうやったら点数が入るかな』と冷静に考えていました。厳しい状況こそ成長につながりますし。顔もずっと笑顔だったと思います。帝京には頼もしいFWがいるので、間違いなく大丈夫だと思っていました。」

CTB南橋はこう語る。
「自分たちの自滅の部分も大きかったので、そこを修正しようと声を掛け合っていました。きつい時間帯でも全員が楽しんでできたと思います。」

リードされて残り5分という場面で出たのは、まさに「Let’s Make Smile!」。
そして、厳しい状況をも成長の糧として楽しむ「
Enjoy」。
さらには、仲間を信じる「Team
work」。
苦しいときに立ち返るべき根幹がこのチームにはあった。

最善を尽くすことで、勝運も味方する。相手が22mライン付近からダイレクトタッチを蹴る。帝京ボールのラインアウト。モールを形成し、押し込む。さらにFWでじりじりと前進。マニングの突破でゴール直前まで迫る。残り時間は1分少々。ラックの斜め後ろにFW陣が並ぶ。敵のディフェンスがそちらを意識したと見るや、滑川が持ち出して前進、そのまま中央に逆転のトライ。



キックオフのボールも支配し、そのままノーサイドのホーンが鳴る。18-12で帝京が準決勝進出を決めた。

最後の最後まで勝敗の行方がわからない緊迫した好ゲームに、スタンドからは両校への惜しみない拍手が送られた。対抗戦を全勝で勝ち抜いてきた帝京にとって、今シーズン初めてとも言えるギリギリの厳しい試合だった。だが、この厳しさを経験したことで、もう一度、気持ちを引き締め直し、成長できる機会を得られたと言えるだろう。

舞台は国立競技場へ。3連覇への挑戦権を得るべく、また正月にラグビーができる喜びを胸に、帝京フィフティーンは次へのステージへと進む。

《試合後のインタビュー》

■岩出雅之監督
「大学選手権に入ってけっして調子は悪くはなかったのですが、心の隙ということではなく、チームの甘さが少し出てしまったゲームだったと思います。同志社大学さんのバランスの取れたディフェンスにうまくボールが回らず、攻撃が寸断されてしまいました。ただ、結果として最後に勝利をものにできましたので、学生たち自身がまだまだ力不足の部分があると実感できたいいゲームになったと思います。
ちょうど昨日のミーティングで、「最悪の状況になったときの冷静さとか、集中力を切らさないためにどこへ立ち戻るか」といった話をしました。学生たちがそれをどう捉えていたかはわかりませんが、最後の最後に落ち着いて取り切ってくれたことは、今日のような出来のよくない中でも、チームとしてのしぶとさ、強さを感じました。
今日のゲームを経て、学生たちは一皮も二皮もむけて、大きく成長してくれるのではないかと思います。同志社大学さんのプレーに学ぶべきところは学んで、次の試合に今日の反省がしっかりと出るゲームをしたいと思っています。
最後になりましたが、同志社大学さんの果敢なファイトに敬意を表したいと思います。」

■キャプテン・森田佳寿(4年)
「試合前は、この試合を通してもう一歩大きくなりたい、もっと強くなろうといって臨みました。自分たちの甘さが出てしまったゲームでしたが、それに気づかせていただいたことは大きな収穫ですし、こういった厳しいゲームを経験して勝ち切ることができた、厳しい状況を乗り越えることができたということは、メンタル面でまた一つ大きくなれたのではないかと思っています。
ただ、同志社大学さんのすばらしいプレーから生まれるプレッシャーの中で、自分たちがやってきたプレーを正確に続けることができなかった点に関しては、これから必ず修正しなければならないので、この一週間を使ってしっかりと準備し直したいと思います。」

■厳しい展開でも常にFWを引っ張った・PR吉田康平(4年)


「今日は本当に最後までわからない試合でしたが、最後は自分たちは勝ちに行くだけだったので、勝利を信じて自分たちの力を出し切りました。スクラムではペナルティが多くなってしまい、そこから失点したり、流れを持ってこられなかったりしたので、この一週間、細かいところまできっちりと整理して、次の試合でそれが出せるようにしたいです。次はセットプレー、ブレイクダウンで圧倒し、自分たちのラグビーをしてしっかり勝ちたいと思います。」

■攻守に激しさを見せ続けた・FL松永浩平(3年)


「ターンオーバー、タックル、思い切りのよさというテーマを掲げて試合に臨みました。ターンオーバーの部分で焦りから反則をしてしまった場面があったので、そこは次までに修正したいです。タックルは必死でやっていましたが、もっと回数を増やせるようにしたいです。次戦もディフェンスでチームに貢献できるように、思い切ってプレーしたいと思います。」

■再三にわたって縦への突破を見せた・No8大和田立(2年)


最初からガツガツと自分たちのペースで行こうと話していたのですが、同志社大学さんのプレッシャーと自分たちのミスで、こうした競った試合になってしまいました。ただ、ここで自分たちの足りない部分がわかりましたので、それをいい収穫として修正して、次の試合に向けて頑張りたいと思います。
今日はボールを持って何度かゲインできたのですが、そのあとがあまりよくなかったので、そこは修正して次に臨みたいです。ジュニア選手権の決勝ですごく悔しい思いをしましたし、自分のプレーについてどこをどう伸ばしていくべきかと悩んだときもあったのですが、今日はそれも自分の発奮材料にして、思い切りプレーしようと思っていました。次の筑波大学さんには対抗戦で勝っていますが、油断せず、自分たちのプレーをしっかりやって、絶対に勝ちたいと思います。

■BKリーダーとして冷静にプレーした・CTB南橋直哉(4年)
「同志社大学さんは両CTBがキーマンだったので、この二人には絶対に走らせないようにしようという気持ちで試合に臨みました。今日は勝ち切れたことはよかったのですが、課題の多く出た試合でした。その課題を次に向けてもう一度修正して、準備したいと思います。
自分はBKリーダーという立場で、森田や滑川らと、気持ちを冷静に保ってプレーしようと言い合っていました。そうした気持ちでやらないと、他の選手たちにも影響を与えてしまいかねないのですが、今日は冷静にいいメンタルを保って試合ができたと思います。結果的にノートライに抑えることができたのですが、PGで失点したので、自陣でのペナルティをなくすことと、エリアを取ることを意識して次の試合に臨みたいと思います。また、ディフェンスで切られる場面もあったので、そこは自分としても修正していかなければと思いました。」

■力強いディフェンスでピンチを救った・CTB中村亮土(2年)


「苦しいゲームでしたが、自分たちにとって次につながる、成長できるゲームだったと思います。ディフェンス面では相手をノートライに抑えられたので、そこはよかったと思っていますが、細かい修正点をもう一度確認して次に臨みたいと思います。
アタックでは、タイミングとしてはいい形でボールをもらえた場面もあったのですが、もっと自分の力強さを相手にぶつけるべきだったところもあったので、そこはしっかり確認して次のゲームにつなげたいです。次の筑波大学さんもいいディフェンスと、外に大きく展開してくるという特徴のチームだと思うので、まずはしっかりとディフェンスして、また自分の持ち味の力強いストロングランを出せたらと思っています。」

《PICK UP PLAYERS》


広い視野と冷静な判断でチームを救う
SH 滑川剛人(4年生・ゲームMVP)



NAMEKAWA TAKEHITO
1990年1月1日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
桐蔭学園高校出身
身長166㎝/体重65㎏/血液型B型

■最後はしびれる場面でのナイストライでした。
「ありがとうございます。」

■相手のディフェンスをしっかりと見据えて、冷静にプレーしていました。
「帝京にはたのもしいFWがいるので、その分、自分の視野が広がります。FWにはいつも感謝しています。」

■今日のゲーム全体を振り返って、感想を聞かせてください。
「非常に厳しいゲームになりましたが、今シーズン、こうした厳しいゲームが少なかった分、ここでこうした厳しいゲームができて、そこを勝ち切れたことは自分たちの成長につながります。3連覇に向かう上で、こうした試合は大切になってくると思うので、自分たちも反省しつつ、今日、厳しいゲームができたことに対しては同志社大学さんのスピリッツに感謝したいです。」

■特に最後など、苦しい展開が続きましたが、どんなことを考えてプレーしていたのでしょうか。
「自分では『負けるかもしれない』という意識はまったくなくて、どうやったら勝てるかなと試合中ずっと冷静に考えていました。そのときそのときで、やるべきことはできていたのかなと思います。」

■接戦だったとはいえ、ディフェンス面ではノートライに抑えることができました。
「たしかにノートライに抑えたのですが、ディフェンスで抜かれた部分や、一つ一つのタックルが甘かった部分もありました。そこはしっかりと確認して次に臨まないといけないと思います。」

攻撃の場面では滑川選手からのハイパント攻撃が目立ったように思ったのですが、試合前からのゲームプランだったのでしょうか。
「いろいろな戦術・戦略がある中で、同志社さんのディフェンスシステムを見て、自分からのハイパントが有効だろうと判断した場面では狙っていきました。最初から意図したというよりは、相手のディフェンスを見た結果、そういう選択が増えたのだと思います。」

■大学選手権での試合に臨む上で、あるいは3連覇を目指す上で意識していることはありますか。
「ここまできたら、起こったことをマイナス思考で捉えるよりも、いいところを探してチームを作っていく方がいいですし、そのいいところがチームの強みになってくると思いますので、どんどんいいところを伸ばして戦っていきたいと思っています。」

■では、次戦に向けての意気込みを聞かせてください。
「学生相手の試合は最大でもあと2試合。残り少ない時間なので、一分一秒を無駄にしないように、体を張って、みんなで戦っていきたいですね。」


常に冷静にゲームをコントロールする不動のSH。相手の動きを見ながら、FW、BK、さらには自らのラン、キックと巧みに使い分ける。この日も、その的確な判断がチームに勝利をもたらした。本人が語るように、強力FWが彼の視野を広げてくれているという側面もあるが、その広がった視野を存分に使いこなしているのは、彼の判断力が高く、かつ素早いからだ。バイスキャプテンとして、チームからの信頼も厚い。今日のような厳しい試合を経て、次戦でもよりいっそう頼もしいプレーを見せてくれることだろう。試合後は帝京ファンから握手を求められ、笑顔を交え真摯に対応する姿が印象的であった。まさにチームを代表する存在の滑川、次戦でもきっと何かをやってくれるに違いない。

《NEXT MATCH PREVIEW》

【1月2日(月・祝)大学選手権準決勝 VS筑波大学 国立競技場 14時キックオフ】

大学選手権準決勝の相手は、対抗戦グループの筑波大学。対抗戦では勝利している相手とはいえ、けっして油断はできない。だが、帝京も厳しいゲームを乗り越え、大きく成長している。目標としている日本一の最後の挑戦権は、次の試合に勝つことではじめて得ることができる。まずは、自分たちのラグビーを出し切って勝利し、決勝戦へと駒を進めたい。そのためにも、多くの方々に国立競技場での応援をお願いしたい。次も赤い服を身にまとい、選手たちに勇気とパワーを与えてほしい。

(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

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