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全国大学選手権大会・決勝 対天理大学戦

全国大学選手権大会・決勝 対天理大学戦

2012/01/09

136人でつかんだ3連覇。ラグビーができる幸せに感謝!


1月8日(日)・国立競技場
○帝京大学 15-12 天理大学●

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《帝京》
1吉田 2白 3前田(龍)⇒辻井 4ボンド 5マニング 6大和田⇒小山田 7松永(浩) 8李 9滑川 10森田
11菅谷⇒小野 12南橋  13中村(亮) 14伊藤(拓) 15竹田

《天理》※先発のみ
1藤原 2芳野 3金光 4田村 5上田 6唄 7関口 8山路 9井上 10立川 11木村 12ハベア 13バイフ
14宮前 15塚本

ついにこの日がやってきた。史上2校目の大学選手権3連覇に挑む帝京。春からこの日の勝利を目標に、日々、積み上げ、成長を重ねてきた。相手は強力BKを擁する天理大学。ここまで爆発的な攻撃力で勝ち上がってきた関西の雄に、大学選手権すべてノートライで勝ち上がった帝京が立ちはだかる。


【前半戦】
機は熟した。アップから気合い十分の帝京。だが、気負いは感じられない。
スタンドを真っ赤に染めた帝京ファンの声援をバックに、いよいよ決戦の舞台が開けられる。
その気合いは、キックオフ直後にいい形で表現される。キックオフボールを確保したNo8李が前進し、モールを形成すると22mライン付近から一気にハーフウェイラインまで押し込む。まずはFWの力強さを見せつける。

しかし、天理の強力BKにカウンターアタックから展開され、一転、ピンチになる。中村(亮)、南橋の両CTBらの好タックルでなんとか止める。ゴール前で懸命のディフェンスをしてターンオーバー。またもモールで押し込み、ピンチを脱する。

今度は一転、帝京の攻撃。積極的にBKに展開して前進を図る。いい形でつながり、相手ゴール前へ。ここからはFWで攻めるが、惜しくもノックオンでチャンスを逸する。

その後も帝京の攻めが続くが、カウンターラックでターンオーバーされる。相手BKが縦に抜け出し、さらに継続される。WTBに走られるが、1回戦で負ったケガから戻ったWTB菅谷が後ろから追い付いて捕まえる。

帝京は耐える時間帯が続く。16分、スクラムから展開されて、ゴール前まで持ち込まれる。グラウンディングできていないようにも見えたが、判定はトライ。大学選手権初のトライを献上し、先制されてしまう。

だが帝京はけっして慌ててはいない。
インゴール。キャプテンSO森田は「もう一度、我慢して、前向きに戦おう」と声をかけ続ける。

その後も相手BKに走られる。が、決定的な場面を作られるも、ここも菅谷が戻ってタックル。先ほどとは逆サイドのWTBを捕まえ、相手のスローフォワードを誘う。
「足の速さはディフェンスにも生かされる」といって起用した岩出監督の采配がズバリと当たる。

ここから帝京の逆襲が始まる。モールからSH滑川がキック。相手のミスに乗じ、ボールを奪うとBKに展開。CTB南橋、中村(亮)WTB伊藤(拓)らの前進でゴール前へ。ここまで来ればFWの腕の見せどころだ。一気にモールを形成し押し込み、そこから李が持ち出してトライ(5-7)。

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帝京はその後も積極的にBKへ展開。再三、いい形を作り前進するが、惜しくも仕留めるまでには至らない。だが、このBKでの前進が帝京の強力FWを生かす力となる。32分、ゴール前5mのラインアウトからFWで前進。最後はFL大和田が逆転のトライを決める(12-7)。

帝京、天理ともに持ち味を出し合う好ゲームとなり、前半を12-7で折り返すこととなった。


【後半戦】
ハーフタイム。岩出監督は今一度相手攻撃に対する細かなディフェンスの指示を与える。
いよいよ勝負の40分。前半は1トライを奪われたものの、天理BK攻撃をよく凌いだ帝京。また、攻めてもBKで前進してFWで取り切るという理想に近い形を作り上げている。攻守ともに後半も同様の形を出し切りたいところだ。

帝京はその後半もBK展開からの前進を図る。FW戦も変わらず優位に進める。FWで押し込んでBKに展開と、まさにFW、BK一体となった攻撃を見せる。

ペナルティでスクラムを選択し、ゴールラインに迫るもグラウンディングできずに、キャリーバック。スクラムでは大和田がボールを持ち出そうとした瞬間に笛が吹かれ、スクラム・ホイールの判定で、相手ボールになる。

攻めながらも取り切れない展開が続くが、帝京はけっして慌てない。ケガで満身創痍のキャプテン森田がチームを鼓舞すれば、森田に負担をかけまいとするチームメイトたちが攻守にわたって懸命に前に出る。FL松永が、南橋がカバーDFに奔走する。ピッチに立っていた菅谷が「松永のDFは鬼気迫るものがありました」と振り返る。

相手SO、CTBの突破でピンチを招くも、WTB伊藤(拓)、FB竹田らの気合いのこもったタックルで防ぐ。だが、31分、負傷で一人少なくなった時間帯に展開され、つながれ、ついに同点トライを許してしまう。

ここでも森田キャプテンは冷静だった。
「もう一度、エリアを前に出して戦おう」と言って、チームの集中力を高める。

帝京はBK展開からFW攻撃、そこからさらにBK展開と、連続で仕掛けていく。南橋の前進でゴール前まで迫りスタンドが沸くが、惜しくもノックオン。残り時間は2分。「両校優勝」も頭をよぎる時間帯に、天理がBK攻撃を仕掛ける。一発でトライを取り切る力をもつ相手の攻撃に、スタンドにも緊張感が走る。

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しかし、帝京は最後の最後でも堅いディフェンス力を発揮する。相手の出足を止め、FWの集中力でラックからターンオーバー。途中出場のFL小山田らがしっかりと押し込み、ボールを越えていく。相手は焦ったのか、ここでハンドの反則を犯してしまう。場所はゴール正面。森田がPGを狙う。

決まれば3点リードとなる。残り時間は1分。ゴール正面とはいえ、そのゴールポストの後ろから日の光がまともに差し込んでくる。しびれる局面。キッカー森田は、足の故障を押してプレーし続けてきた。疲労も極限のはず。ここで部員136人の、いや全ての帝京ファンの気持ちが一つになる。

森田のゴールキックはやや右にそれる。ボールはゴールポスト最上部の旗にあたり、「カツン」という乾いた音とともにポストの内側に飛んでいった。両線審の旗があがる。ペナルティゴール成功。15-12となった。

そして…キックオフのボールも確保。スタンドの帝京ファンからは昨年度の決勝同様に、勝利へのカウントダウンが巻き起こる。「7,6,5…2、1…」。ついにホーンが鳴ってノーサイド!真っ赤に染まったスタンドでは誰彼となく、抱き合っている。涙を堪えられないファンの姿もあちこちに見られる。ついに帝京が大学選手権3連覇を成し遂げた。
そして…。森田ら帝京フィフティーンが喜びに沸くスタンドを見上げると、そこにはやはり、この1年間、そして4年間ともに一緒に戦ってきた最高の仲間たちの笑顔があった。

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《試合後のインタビュー》
■岩出雅之監督
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「皆様のご支援、ご声援のおかげで、3年連続大学日本一となることができました。本当にありがとうございました。
今日の試合に関しては、戦略面、精神面の2つの側面からお話させていただきます。まず戦略面に関しては、2つのことがありました。1つは、われわれの強みを出し、天理大学さんの強みを出させない戦法を取ろうということ、もう1つはケガで調子のよくなかったSO森田の負担をできるだけ軽くしてやろうということです。その結果、FWの頑張りに期待するという戦い方となり、また、相手にボールを渡してしまうといい展開をされてしまうので、FBからのタッチキックもやめて、カウンターアタックを仕掛けていこうというプランになりました。FWもBKもよく頑張って、森田キャプテンのケガをカバーしてくれたと思います。
精神面に関しては、自分たちがどんな環境でラグビーをさせてもらっているのかを考えるように言いました。昨年は大きな災害がありました。チームにいる留学生のふるさとニュージーランドで大地震があり、そして3月には日本で東日本大震災があり、和歌山出身の私の地元では台風による大洪水がありました。そんな中で『3連覇』という声をかけていただけることがいかに幸せなことか、勝ち負け以前にラグビーができることの幸せ、3連覇にチャレンジできることの幸せを感じながら戦いました。勝負の世界に生きる者としては『甘い』と評されるのかもしれませんが、『もし決勝戦で負けたとしても、両チームの健闘をたたえ合えるようにしようよ』と考えることで、かえってプレッシャーから解放されたように思います。実際、天理大学さんのファイトはすばらしいものがありました。心から敬意を表したいと思います。
これまで帝京大学ラグビー部には、すばらしいキャプテンが数多くいました。その中でも今シーズンの森田キャプテンは、歴代ナンバーワンと断言できます。その森田を中心としたチームが優勝できたことは、指導者としてもうれしい限りです。
はじめにも申しましたが、やはりここまで来られたのは、いつも応援してくださる皆様のご支援のおかげです。選手、スタッフ一同を代表し、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。」

■スクラムでプレッシャーをかけ続けた・PR吉田康平(4年)
「僕たちは多くの人に支えられながらラグビーをやっているので、まず、支えてくれている人たちに感謝したいです。グラウンドに入った瞬間に、バックスタンドに帝京の赤い応援団が見え、うれしくて力が湧きました。ゲームも、FWでプレッシャーをかけるという部分がしっかりとできたと思うので、よかったです!」

■ラインアウトを修正し、安定させた・HO白隆尚(4年)
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「3連覇というよりも、純粋に優勝できたこと、136人の部員全員が一丸となって大学選手権に臨んで、最高の結果を得て、最高の喜びを感じられたことがうれしいです。来年も“強い帝京大学ラグビー部”として、FWにはより引っ張っていってほしいので、後輩たちには今年のチームを越えられるように努力していってほしいと思います。」

■セットプレーもフィールドプレーも献身的に活躍・PR前田龍佑(4年)
「春シーズンは下のチームからスタートして、夏合宿でAチームに上げてもらい、ここまでやってこられたのですが、それはチームのみんなやスタッフの方々のおかげなので、いまは喜びよりも感謝の気持ちでいっぱいです。今日は相手の1番(天理大PR藤原選手)が自分の幼なじみだったので、絶対に負けないという気持ちでした。ミーティングで特に帝京の強みであるFWで勝ち切ろうと話していたので、それができてよかったです。この経験を社会人になっても生かしていきたいと思います。」

■攻守に前に出て体を張った・LOティモシー・ボンド(4年)
「すごくうれしいです!最後のホーンが鳴ったとき、『よかった』と思いました。今日はみんなで『この試合はディフェンスで勝つぞ』と言っていたので、いいディフェンスができて、またいいアタックもできてよかったです。」

■冷静な球さばきとともに献身的なタックルも光った・SH滑川剛人(4年)
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「みんなでここを目指してやってきたので、素直にうれしいです。ピンチもチャンスもありましたが、結果としてどんな点差でも勝てたことはうれしいですね。春シーズンからいろいろなことを乗り越えてきましたが、優勝して3連覇できたのは、部員だけでなく、スタッフや応援してくださっている方々の支えがあったからこそなので、本当に感謝しています」

■大きな相手を何度もタックルで止めた・CTB南橋直哉(4年)
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「3連覇と同時に、自分たちの代で日本一になれたことは本当にとてもうれしいです。U-20日本代表のとき、同じポジションにアイセア(天理大CTBハベア)がいて、自分がリザーブだったので、絶対に負けないで立ち向かおうと思っていました。粘り強く、低く突き刺さるいいタックルができたと思います。後輩たちには帝京大学ラグビー部のよい文化を引き継いでもらって、また新たな歴史を作っていってもらいたいと思います。」

■走力だけではなくタックルでも魅せた・WTB伊藤拓巳(4年)
「優勝という目標を達成できてすごくうれしいです。4年間で一番うれしい試合でした。この先の人生でも自分の宝物になると思います。今日は136人の部員全員の分、自分がタックルに行こうと思って臨みました。チームメイトのことを思うことでいいタックルができたと思います。」

■急遽途中出場もセットプレーをしっかりと安定させた・PR辻井健太(4年)
「今は率直に優勝できてうれしいというのと、あのノーサイドの瞬間をグラウンドで味わえたことが本当にうれしいです。今日はタックルにいく場面は多くはなかったのですが、自分はいつもうちのAチームを相手に練習しているので、コンタクトで負ける気はまったくしていませんでした。準決勝で一度出場していたので、今日は落ち着いてプレーすることができました。4連覇は簡単ではないと思いますが、努力すればきっとできると思うので、後輩たちには頑張ってほしいと思います。」

■最後まで相手にプレッシャーをかけ続けた・FL小山田岳(4年)
「今は優勝できたことと、高校時代に花園で負けた悔しさを晴らせたことで、最高にうれしいです。天理大学さんのすばらしいアタックに苦しみましたが、みんながしっかりとディフェンスしていたので、自分もタックルだけをしっかりとやろうと思って入りました。何本かいいタックルができたので、よかったと思います。」


《PICK UP PLAYERS》

誰もが認めるキャプテンシーでチームをまとめた
SO 森田佳寿(4年生・キャプテン・ゲームMVP)

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MORITA YOSHIKAZU
1989年5月14日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
御所工業高校出身
身長172㎝/体重83㎏/血液型O型

■優勝おめでとうございます。まずは今の気持ちを聞かせてください。
「ありがとうございます。心からうれしいです。昨年、優勝できたときから、今日をターゲットにずっとみんなで積み重ねをしてきましたから、いろいろありましたが、目標を達成できたことで胸がいっぱいです。」

■ゲームを振り返っての感想を聞かせてください。
「天理大学さんがすばらしく、厳しい時間帯も多くありましたが、どの時間においてもみんなが我慢強く、自分たちのやってきたことを信じてやり切れたいい試合だったと思います。136名+スタッフのみなさん、応援してくださる方々のためにもタックルに行こうと最後まであきらめずに戦ったことで、最後にPGももらえたのではないかと思っています。ここまで支えてくれたみなさんに感謝したいです。」

■その最後のPGですが、かなり緊張する場面だったと思います。どんな気持ちで蹴ったのでしょうか。
「練習でも、最後にPGで試合が決まるという場面をイメージして蹴っていたので、それと同じ気持ちで蹴りました。なんとか入ってよかったです。」

■森田選手自身のすばらしいタックルも何度もありました。
「僕だけじゃなく、チームみんなが、試合に出られないメンバーも含めて、部員136人分タックルに行こうと言っていたので、みんながいいタックルをしてくれたと思います。」

■「いろいろなことがあった」とのことですが、この1年を振り返って、乗り越えるべきたいへんな場面もあったのでしょうか。
「対抗戦も全勝といういい結果が出ましたし、正直、絶体絶命の苦しい場面というものはなかったかもしれません。ですが、いい結果が出ていても、内容的に修正しなければならないことはたくさんありました。そうした中で、結果的にうまくいっているときの気持ちの油断や慢心が怖かったです。いい結果を得ている中で、日々、油断なくやっていくことが一番たいへんでした。」

■今後の目標を聞かせてください。
「まずは、日本選手権で学生代表としてしっかりと戦います。また、大きく見ると2019年に日本でワールドカップがありますから、そこで日本代表として入って活躍することを目指しながら、まずはトップリーグで自分のプレーがどれだけできるかをチャレンジしていきたいと思います。そのためにも、目の前のことに集中して、日々、積み上げていきたと思います。」

■トップリーグに進むとのことですが、進路は。
「東芝に就職する予定です。」

■最後に後輩たちに向けてメッセージをお願いします。
「入学してきたときからすばらしいクラブでしたが、毎年毎年、それを上回ろうと言いながらこの4年間成長してきました。これから先もそういう流れを続けて、今後10年も20年もその先も、このクラブがすばらしいクラブであり続けてくれることを願っています。」


岩出監督が「歴代キャプテンナンバーワン」と評するほど卓越したキャプテンシーと高い人間性でチームを優勝に導いた。この稀代のキャプテン。1年時から帝京のジャージに袖を通してきたが、ルーキーシーズンの対抗戦慶應戦ではややイージーなミスを繰り返し一時は自らのプレーに迷いを抱いてしまうなど、彼なりに挫折を味わった時期もあったようだ。だが持ち前の明るくポジティブな性格で、最後に最高の結果を出してくれた。その戦いはまだまだ終わらない。日本選手権でも学生チャンピオンとしての堂々たる戦いぶりを見せてくれるはずだ。


《NEXT MATCH PREVIEW》

【2月25日(土)日本選手権1回戦 対戦相手・場所・キックオフ時間未定】
このチームの戦いはまだまだ続く。学生の試験期間などをはさみ、舞台は日本選手権へと移る。昨年のワールドカップの影響で、約1ヵ月半の間があくが、逆に準備期間も増え、このチームで一緒に戦える時間も増えた。1回戦の相手は全国クラブ大会優勝チームの予定だが、現在のところ相手も場所も時間も未定(公式サイトはこちら)。決まり次第、当サイトでご案内する予定だ。まだまだ進化を続けるチームをさらに応援していこう。
〔1月15日(日)午後11時より、NHKBS1のスポーツドミンゴで決勝戦の模様等が放送される予定です。詳しくはこちら

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(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

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