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大学選手権ファイナルステージ準決勝・対早稲田大学戦

大学選手権ファイナルステージ準決勝・対早稲田大学戦

2013/01/04

『好敵手との正月決戦を制し、5年連続の決勝進出』

1月2日(水)・国立競技場
○帝京大学 38-10 早稲田大学●

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《帝京大学》
[FW]①森川 ②泉⇒竹井 ③出渕⇒猿渡 ④小瀧⇒大和田 ⑤マニング ⑥イラウア ⑦松永(浩)⇒坂手 ⑧李
[BK]⑨天野⇒流 ⑩中村⇒森谷 ⑪磯田 ⑫荒井(基) ⑬権⇒南藤 ⑭小野(寛) ⑮竹田

《早稲田大学》※先発のみ
[FW]①上田 ②須藤 ③垣永 ④近藤 ⑤芦谷 ⑥金 ⑦古賀 ⑧佐藤
[BK]⑨西橋 ⑩小倉 ⑪荻野 ⑫布巻 ⑬森田 ⑭中靍 ⑮原田

  【前半】  
前人未到の地まであと2つ。好敵手・早稲田との注目の一戦とあり、正月の国立競技場は独特の雰囲気で年明けを迎えることとなった。
試合開始直前。そんな中でも、帝京の選手たちはアップから気合いと冷静さをバランスよく保っている。全員が大きな声でチームを鼓舞しながらも、的確に指示をし合っている。ほどよい緊張感だ。目の前の相手は早稲田大学。対抗戦では勝利しているとはいえ、後半30分過ぎまでリードを許す苦しい展開だっただけに、いうまでもなく侮れる相手ではない。

この日は強風、いや時折、突風も吹くコンディション。トスに勝った帝京はあえて風下を選択する。前半は耐えて、後半、追い風を受け、一気に攻めに転じる作戦だ。太陽の光も正面に受ける形になるが、それでも後半に有利になる環境を選んだ。

いよいよ80分が幕を開ける。この風を考慮し、なるべくキックを使わず、ボールをつないで前進する帝京。「FWから前に行くぞ」という泉キャプテンの言葉通り、FWでボールをつなぎ、密集に相手のディフェンスが集まったところでBKへと展開して前進を図る。だが、予想以上の強風に、ペナルティからのタッチキックすら戻されてノータッチになるほどだ。

帝京、早稲田ともに激しさを出し合い、ターンオーバーの応酬となる。帝京はFWで、早稲田はキックで前進を図る。序盤は強風もあり、耐える時間帯が長くなる帝京。だが、ここでしっかりと我慢強くディフェンスする。風と太陽のために起こったキック処理のミスから得点されるものの、そこは織り込み済み。帝京の選手たちに、焦りはまったく見られない。

接点での激しさは風とは関係ないとばかりに、FW陣は激しく体を当て続ける。PR出渕がラックで相手を激しく押しのければ、FLイラウアは相手ボールを奪い取ってのターンオーバー。モールもぐいぐいと押し込む。

また、この日はスクラムでも圧倒する。特にPR出渕の働きが秀逸。強烈な押しを見せた。ゴール前で得たペナルティでもスクラムを選択。帝京ファンで真っ赤に染まったスタンドの目の前だ。スタンドの声援に呼応するように、逆サイドのチーム応援席からの声も大きくなる。スタンドも含めたチーム全員、そしてファンの後押しが選手に力を与える。

帝京のトライはこのスクラムから生まれる。しっかりと押し込むことで安定した球出しができ、そこからBK-FWとつないでのトライだ。

FW陣の活躍が目立つ中、BKもオフェンス、ディフェンスともに奮起。CTB荒井(基)がタックルでもランでも魅せる。SO中村は的確な判断とすばやいポジショニングで早稲田のハイパントをうまく処理して、カウンターアタックに出る。前進を図る各選手ともボールキープへの意識が高く、早稲田が接点に人数を掛けてきてもマイボールをしっかりと確保し、継続する。

風に苦しめられた前半を粘り強いディフェンスと激しい攻撃でしのぎ切り、7-10の3点差でハーフタイムとなった。


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  【得点経過】  
【7分】帝0-3早
ハーフウェイ付近で帝京がペナルティ。PGを決められる。

【13分】帝0-10早
ゴール前、早稲田ボールのラインアウトからモールとなる。サイドを突かれ、トライを奪われる。

【30分】帝7-10早
ゴール前で早稲田がペナルティを犯す。帝京はスクラムを選択。No8李-SH流-WTB小野(寛)と渡りラックに。FLイラウアが前進し、PR森川がラックに。さらにPR出渕が形成したラックからLO小瀧が持ち出してトライ。ゴール成功。

  【後半】  
3点のビハインドで折り返したが、後半は強風の中での風上に立てる。岩出監督からは「後半も前半と同じように粘り強く戦おう」との指示が出る。選手たちからも自信に満ちた表情がうかがえる。気合いも十分だ。

その気持ちが後半開始2分で早くも結果につながる。ターンオーバーから、左右ワイドに展開して揺さぶり、逆転に成功する。FWの力強さに加え、BKの展開力が大きく向上した今年の帝京の攻めを象徴するようなシーンだ。

その後も、帝京ペースでゲームが進む。ターンオーバーされても、すぐにターンオーバーし返すなど、激しさと集中力を切らさない。

FL松永(浩)が集中力の増した走りで突破を図り、No8李、CTB荒井(基)は相手のパスをインターセプト。HO泉、SO中村、WTB南藤らは好タックル。FB竹田、FL坂手は前進と好プレーが続く。ボールがこぼれても、PR森川がナイス・セービングでキープする。

帝京は最後まで攻め続け、終了間際の早稲田の反撃もしのいで、38-10で勝利。決勝進出を決めた。

試合後、岩出監督は「集中力とコミュニケーションの勝利」と評した。攻撃面ではボールを相手に奪われない集中力と、テンポよくつないでいくコミュニケーションがしっかりとなされ、守備面では激しいタックルとボールに絡み続ける集中力。さらにはリポジションやノミネートでのコミュニケーションが最後までしっかりと発揮されていた。

スタンドの応援席、さらには赤い旗が振られるファンの応援席からは、これまでにないほど大きな喜びの声が上がっていた。「部員146人+スタッフ+ファン」が一体となってグラウンドの22人にパワーを送っていた。決勝戦でもこの一体感がグラウンドに立つ22人に力を与えてくれることだろう。

泉主将は試合直後、幾分ほっとした表情で回顧してくれた。「国立という大舞台は自分も含め初めての選手もいたのですが、『こんな中でプレーできて、緊張なんてしているのもったいないぞ!』と声を掛け合って、その通りにプレーできました(笑)」。一方、4年連続で国立を経験する小野副将はチームの一体感を一番の勝因に挙げた。「去年の4年生のような圧倒的な経験者は少ないのですが、今年のチームは146名が本当に一つになれています。今日もスタンドの控え部員やファンの方々の声は本当に心強かった。こんな雰囲気を作ってくれて、次もやるしかないですよね…」。
 残された階段はあと一つ。
ファンも関係者も、そして146名の部員も残されたあと一試合、あと80分…『仲間』を信じて戦おう。そう、楕円のボールは信じる者の前に、必ず落ちてくるはずだ。


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  【得点経過】  
【2分】帝14-10早
早稲田のSOの仕掛けを止めると、FLイラウアがターンオーバー。LOマニングにつないでラックにし、SH流-SO中村-CTB荒井(基)-HB竹田と渡り、再度ラックに。ここから逆サイドに流-中村-CTB権-No8李と展開。李が前進し、つかまるも、イラウアがボールを拾ってそのままトライ。ゴール成功。

【9分】帝17-10早
ゴール正面で早稲田が反則。SO中村がPGを決める。

【15分】帝24-10早
SO中村が好タッチキック。ゴール前5mで帝京ボールのラインアウト。モールを形成して押し込み、崩れかかったところでNo8李が持ち出してトライ。ゴール成功。

【23分】帝31-10早
CTB荒井(基)がパス・インターセプト。CTB権-WTB小野(寛)とつないでトライ。ゴール成功。

【26分】帝38-10早
22mライン内側で帝京ボールのラインアウト。ややボールが乱れるも、PR出渕がうまく拾って前進。FLイラウアがもらって、そのまま持ち込み、トライ。ゴール成功。

《 AFTER MATCH SAY 》

■岩出雅之監督
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「あけましておめでとうございます。今日の試合は、夏から秋、そしてこの試合という流れを感じられる試合にしよう、勝ち負けも大事だけれど、その中身、成長した部分をお互いに感じ合える試合にしようと言って臨みました。大学選手権セカンドステージでは勝利を積み上げることはできたものの、勢いを感じるまでにはまだまだだったからです。両チームともに考えていたことだとは思いますが、このゲームで勢いを得て、大きな成長につながる試合にしたいと思っていました。前半、風下からのスタートでしたが、守りの我慢ではなく、攻めの我慢ができたと思いますし、後半は相手が風下で苦しむ中、しっかりと攻め切ることができました。トータルとして、いい集中力、いいコミュニケーションを発揮することができたのではないでしょうか。
正直に言いますと、早稲田大学さんはできれば決勝戦で戦いたい相手でした。帝京大学の歴史においても、私自身の指導においても、早稲田大学さんから多くのものを学んできたという思いがあります。また、早稲田大学さんが一年間、われわれをターゲットに努力されてきたと聞いていますし、私自身も『早稲田大学さんに勝とう』と言ってチームを鼓舞してきましたので、願わくば決勝戦で戦いたかったです。すばらしいプレーをされた早稲田大学さんを相手に今日はいいラグビーができたと思いますが、決勝戦では早稲田大学さんの分までしっかりと戦いたいと思います。」

■キャプテン・HO泉敬(4年)
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今日は抽選会で相手が早稲田大学さんと決まってからその早稲田大学さんにフォーカスを当てて練習してきたのですが、試合開始のホイッスルが鳴る前からファイティングスピリットを出して、最初から最後まで戦い抜こうということをテーマに戦いました。前半は風下ということで我慢の時間帯が長く、攻め込まれたところもありましたが、しっかり我慢できた部分も多かったと思います。後半は風上になって、いい集中力といいコミュニケーションができ、いい攻め方ができたと思います。細かいミスなど課題もありましたが、FWで前に行けたところなどよかった点もあったので、どちらも次に生かせるように、自分たちらしくチャレンジャーとして決勝戦に臨みたいと思います。史上初の4連覇を目指すことになりますが、先輩たちが築いてくれた3連覇があるからこそ僕たちは4連覇にチャレンジできます。このチャレンジできる喜びを噛みしめ、悔いのないように全員で戦いたいと思います。」

■スクラムで相手を完全に圧倒した・PR出渕賢史(4年・ゲームMVP)
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「今日はとてもいいスクラムが組めたと思います。いろいろな駆け引きを試してみましたが、ちょうど当てはまって、うまく自分の方に呼び込むことができました。今までスクラムがあまりよくなかったので、FWのまとまりということを意識して練習して、ヒットもよくなり、圧力も前に伝わるようになってきました。練習の成果がようやく出てきたという感じがしています。前半、トライを奪われはしましたが、みんないいディフェンスができていましたので、負けるとかそういう気はまったくありませんでした。仲間を信頼できましたし、守れるという感触があったので、焦りもまったくありませんでした。帝京と言えばまずはFWという誇りをもって、決勝戦までの残りの日々をいい形で過ごして、いい準備をしたいと思います。」

■常に体を張り続け、反撃ののろしとなるトライを奪取・LO小瀧尚弘(2年)
「今日は、絶対に負けられない試合ということで、アップからチームも自分自身も気合いが入っていました。とにかくやってきたことを全部出し切ろうという気持ちで臨みました。前半は風下ということもあって、苦しい場面もありましたが、みんなが粘り強くタックルに行って3点差に抑えられたことが後半につながったと思います。決勝戦では自分のできることをしっかりやって、周りを信じて、そして周りに自分を信じてもらえるように体を張って戦いたいと思います。」

■試合前からハートを前面に出し、チームを鼓舞し続けた・SH天野寿紀(4年)
「やってきたこと、やるべきことをしっかりやり切るという意識で臨みました。出られない仲間の分まで、146人分のエネルギーを使って、グラウンドで出し切ろうと思いました。また、先発で出させていただいているのは、ハートの部分を前面に出すところ、自分が出ることでみんながいいムードで試合に臨めるところ、FW、BKみんなのスイッチを押せるところを信頼してもらっているからだと思うので、そういうところをしっかり出していこうと考えていました。ただ、今日は相手のプレッシャーもきつく、ミスが続いてしまったところは反省点です。新チームの立ち上げから大学選手権の決勝戦をターゲットにやってきたので、日数は少ないですが、みんなでいい準備をして、146人で最後に笑えるようにしっかりと練習したいと思います。

■アタックでもディフェンスでもチームを牽引・WTB小野寛智(4年)
「前半は風下でしたが、しっかり我慢して後半に入ることができ、後半は自分たちのテンポが作れた試合だったと思います。まず最初から飛ばしていこうということで、一人一人が気持ちを作って前に出ていこうという話をしていたので、アップからよく声が出ていて、その気持ちがいい試合につながったと思います。戦い方としては、まず相手のアタックを止めて、そこへプレッシャーをかけていこうということを話していました。主にコンタクトの部分で負けないように、受け身にならずに打ち勝っていこうと言っていました。全体的にはいいディフェンスができたと思いますが、タックルのバインドが甘かったところもあったので、あと一試合、そういう細かい部分を修正して試合に臨みたいと思います。決勝戦までの日々を、チーム一丸となって、Aチームだけではなく全員でまとまって戦っていきたいと思います。一日一日、練習も私生活も全力で取り組んでいきたいと思います。」

《 PICK UP PLAYERS 》

攻撃に防御に存在感抜群の活躍
CTB 荒井基植(4年生)
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ARAI MOTOKI

1991年1月1日生まれ
文学部教育学科
小倉高校出身
身長172cm/体重82kg

■今日はどういうことを意識して試合に臨んだのでしょうか。
「激しく、冷静にということで、試合の最初から全員で一つになって戦おうと言って臨みました。」

■試合前、アップのときから気持ちが入っていたように見えました。緊張などはなかったのでしょうか。
「国立競技場の舞台を踏むのは自分も初めてでしたし、同じように初めだった選手も多かったのですが、それはあまり意識せず、試合に集中できていたと思います。自分自身、変な緊張もなく、アップからいい集中力だったと思います。」

■試合全体を振り返ってください。
「立ち上がりは風下ということもあって、押される部分がありました。ただ、ゲームプランとしてはうまくコントロールできていたので、焦りはありませんでした。後半は風上になって、自分たちのゲームプランが正確にできたのでよかったと思います。

■タックル、そしてターンオーバー、ラインブレイクと、いつものように非常にいい働きをしていました。
「特別なことをしたわけではなく、これまでやってきたことが出せた結果だと思います。」

■いよいよ決勝戦です。意気込みを聞かせてください。
「泣いても笑っても残り一試合。みんなで一つになって、最後に笑えるように、自分のタックルから勢いづけられるような試合になればと思っています。」

自身も「自分のタックルからチームを勢いづけたい」と語るように、強烈なタックルが魅力のCTB。さらに、攻撃では常に冷静に相手防御の突破口を探して、自身の走り込む角度を微調整している。今日も何度もラインブレイクを見せ、スタンドを沸かせた。この相手の動きを読むスキルは防御でも生かされ、対抗戦での早稲田戦に続いて、得点がほしい場面でのパス・インターセプトを生んだ。状況判断のよさとプレーのスキルの高さで、BKには欠かせない存在となっている。決勝戦でもその激しさと冷静さを存分に発揮してくれることだろう

《 NEXT MATCH! 》

大学選手権ファイナルステージ決勝 対筑波大学(http://club.taiiku.tsukuba.ac.jp/rugby/
1月13日(日)国立競技場 13時キックオフ

過去の対戦成績:関東大学対抗戦19勝13敗(大学選手権2勝0敗)
[筑波大学の直近5戦]
12月  1日 ○24-10 帝京大学(関東大学対抗戦)
12月  9日 ○61-  3  法政大学(大学選手権セカンドステージ)
12月16日 ○55-28 慶應義塾大学(大学選手権セカンドステージ)
12月23日 ○54-  0  関西学院大学(大学選手権セカンドステージ)
 1月   2日 ○28-26 東海大学(大学選手権ファイナルステージ準決勝)


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(文・木村俊太/写真・志賀由佳)

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