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関東大学対抗戦・第3戦

関東大学対抗戦・第3戦

2010/10/17

己を信じ、仲間を信じてつかんだ勝利

10月17日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学 12対10 筑波大学●
〔通算成績3勝〕

関東大学対抗戦・第3戦

《出場メンバー》
①吉田(康)②小幡⇒白③坪井⇒出渕④菅原⑤ボンド⑥ツイ⑦吉田(光)⑧柴田⑨滑川⑩小野⑪富永⑫南橋⑬森田⑭伊藤(拓)⑮竹田(宜)

関東大学対抗戦3戦目は、昨年まさかの敗戦を喫した筑波大学との一戦。今年も明治、早稲田と接戦を演じており、調子を上げてきている強敵だが、帝京としてはこれまで積み上げてきた練習の成果を出し切り、きっちり昨年の借りを返したいところだ。

【前半戦】
試合前々日、キャプテン・吉田光治郎は現在のチーム状況を「方向性が浸透してきて、みんなが自分自身の役割を理解してきています。自分たちの力が今どのくらいなのかがわかる試合になると思うので、とても楽しみです!」と話してくれていた。FWの強さに加えて、BK展開にも磨きがかかってきた帝京。FW、BK一体となった攻撃に注目が集まった。

キックオフ直後は一進一退の攻防。相手の攻撃を組織的防御で防ぐ帝京。だが、攻めに転じるも、筑波大の出足の早い低いタックルに止められてしまう。その後、(ケガの渡辺郷に代わって出場した)SO小野がラインブレイクに成功するなど何度も敵陣深く攻め込むものの、反則やラインアウトミスなどもあり、仕留めるところまで至らない。15分過ぎには敵陣ゴール前5mでマイボールスクラムからFW陣がかたまりとなってなだれ込んだかに見えたが、グラウンディングが認められず、キャリーバックとなってしまう。

関東大学対抗戦・第3戦

ここでの得点機を逸すると、一転、厳しい時間帯が続く。相手のハイパントを果敢にチェイスし続けるWTB富永の奮闘などでチャンスを作るも、自分たちのミスからピンチを招くと、勢いづいた筑波大はBK展開で揺さぶりをかけてくる。ついに23分にはBKでつながれ、タックルを掻い潜られてトライを献上(0対7)。

先制されて目覚めたか、LOボンドのキックチャージなどFW陣に鋭さが戻り、帝京の攻めの時間帯となったが、最後の詰めのところでもう一歩攻めきれない。30分過ぎにはラインアウトモールからFL吉田(光)がインゴールへ飛び込んだが、またしてもグラウンディングできずにキャリーバック。
スクラム、ラック、モールとFWで攻め込むが攻めきれない。ゲーム展開、得点ともに昨年の悪夢をイメージさせるかのような前半40分となった。

【後半戦】
ハーフタイム。チームを率いる岩出監督は「油断とか隙とかもっている者がいるなら、今ここに置いて行こう!」と檄が飛び、吉田キャプテンの「気持ちを切り替えて、自分たちのラグビーを徹底しよう」という声が響くと、帝京フィフティーンの表情は、徐々に輝きを取り戻す。

気持ちのスイッチを入れ直して臨んだ後半戦。だが筑波大も厳しいプレッシャーをかけ続ける。一方帝京も、相手の攻撃をしっかりと防ぐも、攻め切るには到らない。それでも小野、CTB森田らの体を張ったDF、吉田・坪井両PRらの献身的な下働きがチームを勇気づける。SH滑川は「FW頑張ろう!」と声を枯らし、富永は相変わらずの渾身のチェイスでチームを盛り立てる。みな、自分のできる仕事をしっかりとこなしながら、チャンスを待った。

関東大学対抗戦・第3戦

だが…このあたりから“時間”というもう一つの敵との戦いもあり、攻めきれない焦りも見え始める。だが、ここでキャプテンの「イライラせず、ミスを引き摺らないでポジティブに攻めよう!」という冷静な一言がチームを一つにした。
「もうトライを取りに行くしかない」という状況によってチームの進むべき道筋が絞られた。

36分、ゴール前5mでペナルティを得ると、迷わずスクラムを選択。押し込みながら出したボールを滑川がインゴールへキック。走り込んだ富永が押さえてこの試合初めてのトライ!(5対10)

関東大学対抗戦・第3戦

攻める。それしかない。
残り時間が刻一刻と減っていくなか、それでも自分を信じ、仲間を信じて、帝京フィフティーンは攻めた。自陣深く蹴り込まれたボールに相手ディフェンスが猛ラッシュをかけてくる。だが、信念は揺らがない。攻める。つなぐ。つなぎ続ければ必ず結果が出ると信じて、自陣22m内側からFW、BK一体となって前に出る。

ラックサイドではなく、ポイントをずらしながら前へ。この攻めで筑波大ディフェンスも徐々にほころびを見せ始める。最後はラックから出たボールをFB竹田(宜)が拾い上げ、相手ディフェンスを引き摺りながらインゴールへ飛び込んだ。
さらに、難しい角度からのゴールキックを小野が決め、12対10のスコアで劇的な逆転勝利を勝ち取った。

全体を振り返ればややイージーなミスも散見されたが、それも互いに厳しいプレッシャーをかけ続けたからこそ。大学トップレベルのフィジカルを有する両チームのプライドがぶつかり合った死闘であった。
いずれにしろこの一勝はただの一勝ではなく、今後大学選手権に進んだ場合、この経験は間違いなく生きることだろう。
なお、MVPには富永、準MVPのインパクト賞には途中出場ながらセットプレーの安定に貢献したPR出渕、HO白の両名が選ばれた。

《試合後のコメント》
□岩出雅之監督

「厳しいゲームを勝利につなげてくれた選手たちは本当によく頑張ったと思います。同時にそうした厳しいゲームを経験させていただいた筑波大学さんの果敢なプレーぶりには敬意を表したいと思います。昨年度敗れている相手ですから、選手たちに油断があったとは思いませんが、要所要所で力不足なプレーがありました。同時にこれから伸びていくための気づきもたくさんいただきました。そういう意味でも、筑波大学さんに『もっと努力しなければ』と教えていただいたと思っています。
何でもそうだと思いますが、実際にやってみて初めて実感として感じられることというものがあります。練習で『こういうことがあるかもしれないから、こういう練習をしっかりしておいたほうがいいよ』と言ってもなかなか実感がないことが多いのですが、厳しい試合の中でそれを体験すると強い実感として残ります。
こうした体験は今後の練習にたいへん生きてくることでしょう。痛い練習でも、その意味を理解して、本気で取り組めるようになるのではないかと思います。厳しい試合を経験すると、選手たちに自分でやろうという気持ちが芽生えます。
今日の試合で基本的なミスをしてしまった選手やスキル不足を実感した選手は、みんな自主的な練習に積極的に取り組むようになるのではないでしょうか。

もう一つ、今日は私自身が選手たちから「信じる力」というものを改めて教わった気がします。最後は選手たちを信じ切る以外に私にできることはなかったわけですが、その信じる気持ちの大切さをこれからも大事にしていきたいと思います」

□キャプテン・FL 吉田光治郎(4年生)
「今日は、去年のリベンジをするという強い気持ちで臨んだのですが、筑波大学さんの厳しいプレッシャーもあって、自分たちでミスを重ねて、苦しいゲーム展開になってしまいました。
前半、取れる場面で取り切れないなど、自分たちでこういう厳しいゲームにしてしまったと感じています。でもそれ以上に、最後は『攻めるしかない』という気持ちで割り切ってやれて、自分たちの形で逆転にまでつなげられたことは今後の自信になると思います」

□セットプレーの安定に尽力した・PR 吉田康平(3年生)
「試合前は、セットプレーの安定、相手へのプレッシャー、ラック周辺のディフェンスをしっかりやろうと考えて臨みました。厳しい相手だとはわかっていましたが、やはり筑波は強かったです。前半からどんどんプレッシャーをかけていこうと思っていたのですが、かけられませんでした。
ただ、接点で前に出ることができていたので、かたまりで行けていたらもっとゲインできていたと思います。後半、マイボールのセットプレー、特にスクラムを安定させようというプランでチームがまとまることができたのはよかったと思っています」

□途中出場で流れを変える働き・PR 出渕賢史(2年生)
「初めて公式戦に出た立教大戦では緊張してしまったのですが、今日は2度目ということもあって落ち着いて楽しんでプレーができました。途中出場の役割として、疲れている相手に対して元気なプレーを思い切ってやっていくということがありますが、坪井さん(出渕はPR坪井に代わって出場)がだいぶ相手を疲れさせてくれていたようで、思い切ってプレーできました。
セットプレーでプレッシャーをかけて、球際、ラック、モールで体を張って、いい球をBKに供給することがFWの役目なので、これからもそれをしっかりと意識してやっていきたいです」

□キックチェイスにも奔走・LO ボンド(3年生)
関東大学対抗戦・第3戦
「特に前半、筑波のフィジカルの強さ、タックルで自分たちもいくつか判断ミスなどをしてしまいましたが、最後にしっかり立て直せたことは、今後戦っていく上で自分たちのいい経験になりました。とても大きな勝利だと思います。
今のチーム状態や今日のゲーム内容に大きな問題はありません。ビデオをしっかり見直して、さらにブラッシュアップしていきたいと思います。自分自身、今季はフィットネスの向上に特に集中してトレーニングしてきましたので、まずまず試合にフィットできていると思います。これから先ももっともっと頑張りたいです」

□最終学年になり推進力の増す・FL ツイ(4年生)
関東大学対抗戦・第3戦
「今日はタフなゲームでした。ただ勝利できたのは、ラストの10分でしっかり自分たちに流れを持ってこられたからです。キープボールと前に出続けることができました。みんな落ち着いてプレーできたのが良かったです。
ティム(LOボンド)ともよく話していますが、これから先、もっともっと自分たちがどのようなゲームプランで行くべきか、特にアタックの部分での方向性をさらに統一していきたいです」

□サイズもアップした頼れる・WTB 伊藤(3年生)
関東大学対抗戦・第3戦
「今日は自分のDFミスもあって先制トライを許してしまい、それが苦戦の原因になってしまったと思います。でも自分自身ではそのあとのDFで少しずつ修正できたので、今後も前向きにいきたいです。
チームはこの勝利で一皮むけると思います。個人的には、昨シーズンはまぐれのトライが結構あったので、今シーズンはWTBとしてきっちりトライを取り切ることを意識しています。ウェイトトレも一生懸命やってきたので、コンタクトにも少しずつ自身が付いてきました(現在体重86kg)。チームに貢献するプレーをもっとしていきたいです」

□逆転を呼び込むトライを決めた・FB 竹田(宜)(1年生)
関東大学対抗戦・第3戦
「最後の場面はボールを持ったら絶対に取り切ろうと思っていました。トライの場面はよく覚えていないんです。パスをもらう位置にいたのですが、仕掛けていったCTB森田さんが倒れたので寄っていきました。ボールが見えたので拾って、あとは無我夢中でよくわかりません。
試合中、富永さんがよく『思い切ってやれ』と声をかけてくださるので、初めての秩父宮で緊張した中でしたが、思い切ってプレーできました」

《PICK UP PLAYERS》

しびれる局面で、難しい逆転ゴールキックを決めた
SO 小野寛智(2年生)


関東大学対抗戦・第3戦

ONO HIROTOMO
1990年12月18日生まれ
経済学部経済学科
東福岡高校出身
身長175cm/体重75kg/血液型A型
ニックネーム/ヒロ、得意なプレー/ラインブレイク、試合前に聞く音楽/洋楽、郷土自慢/大自然!!(大分県)

■最後は緊張する場面での逆転のゴールキックでしたが、よく決めましたね。
「みんなで自陣からつないで取ったトライでしたから、しっかり決めたいと思っていました。自分の世界に入り切って、キックにだけ集中できました」

■久しぶりのSOでの出場でしたが、今日の試合全体を振り返ってどうでしたか。
「パスの精度とか、ディフェンス面がまだまだ未熟だと実感しました。ゲームメイクの部分でもまだまだなので、これから修正していきたいです」

■でも、学んだこともたくさんあったのではないですか。
「はい。相手のディフェンスに合わせてのアタックをどうするかなど、ずいぶん勉強になりました。それと、試合の入りのメンタルの部分ですね。次もしっかり気持ちを作って試合に臨みたいと思います。」

■どんなところを期待されてSOに起用されたと思いますか。
「積極的に仕掛けていってのラインブレイクが自分の強みなので、そこを期待されたのかなと思っています。もちろん、いろいろなポジションを経験することで、プレーの幅が広がるということがあると思います」

■今日はその強みを発揮できたでしょうか。
「前半1本、ディフェンスラインを突破できたのですが、抜けたあとのつなぎをもっとしっかりしなければいけなかったと反省しています」

■相手にU20で一緒にやっていた選手が何人かいましたが、やりにくくなかったですか。
「やっぱり相手の強みなどもわかっているので、あまりやりやすくはなかったですね。でも、それは相手も同じだったかなと思います」

■最後に今後の意気込みを聞かせてください。
「学年が上がって、ゲームについて考えることの重要性がわかってきました。しっかり考えてプレーすることがいいプレーにつながるので、これからも『考えたプレー』をたくさんお見せできたらと思っています」

春からスケールアップしたプレーを見せる小野。今シーズン初スタメン、久しぶりのSOでの出場ながら、伸び伸びとしたプレーでゲームをコントロールした。
まだまだ荒削りなところはあるが、その素質は誰もが認める逸材だ。最後の決勝ゴールキックを冷静に決めた精神力は、経験の豊富さもうかがわせる。今後の活躍がますます楽しみだ。

関東大学対抗戦・第3戦

ハーフタイムには帝京大学チアリーディング部バッファローズも会場を盛り上げた。

《NEXT MATCH PREVIEW》

【10月24日(日)関東大学対抗戦第4戦 VS成蹊大学 ケーズデンキスタジアム水戸 12時キックオフ】
次戦は場所を水戸に移して成蹊大学との一戦。今シーズンは強豪相手に苦戦を続けている相手だが、帝京としては今日のゲームで学んだことをしっかり出し切って、さらなる成長の糧としたいところだ。

(写真/志賀由佳)

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