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練習試合 天理大学戦

練習試合 天理大学戦

2018/08/23

8月23日(木)・サニアパーク菅平メイン
○帝京大学14-12天理大学●




《帝京大学》
[FW]
(1)岡本(2)呉(3)淺岡(4)野田⇒久保⇒藤田(5)秋山(6)トンガタマ(7)松本(8)マクカラン(ブ)
[BK]
(9)土永⇒末⇒北林(10)北村(11)宮上⇒奥村(12)西川(13)尾﨑(14)木村(15)竹山

《天理大学》※先発のみ
[FW]
(1)加藤(2)島根(3)小鍛治(4)由良(5)モアラ(6)岡山(7)佐藤(8)マキシ
[BK]
(9)藤原(10)松永(11)中野(12)池永(13)フィフィタ(14)久保(15)立見

【前半】【得点経過】
【19分】帝0-7天
ラインアウトからモールを押し込まれ、トライを奪われる。

【29分】帝7-7天
ラインアウトからFWで連続攻撃。ラックからSH土永-FLトンガタマと渡り、トンガタマがトライ。ゴール成功。

【36分】帝7-12天
クイックスローインから展開され、トライを奪われる。


【後半】【得点経過】
【29分】帝14-12天
ゴール前まで連続攻撃で持ち込み、さらにFWで攻める。ラックからPR岡本が持ち出し、押し込んでトライ。ゴール成功。


《BRIEF REVIEW》

夏合宿最後になる練習試合の相手は、昨年度の関西リーグの覇者・天理大学。この日は台風20号の接近で、試合前から強風が吹き、雨雲も近づく中でのキックオフとなった。前半、帝京は風下に立つ。相手のキックは伸び、こちらのキックは大きく戻される。実際、なかなか自陣から抜け出せない時間帯が長くなる。それでもこの日の帝京は、ここ2戦とは動きがまったく違っていた。相手のボールキャリアに鋭いタックルで刺さっていき、ブレイクダウンのポイントに、2人、3人と素早く入っていく。相手を前に出さず、敵陣側に倒す場面も多く見られた。しかし、風の影響もあり、自陣ゴール前でディフェンスする時間も長く、19分にはラインアウトからモールを押し込まれ、先制点を許してしまう。それでも、タックル、ブレイクダウンでのやるべきことができている分、過去2戦のような重苦しい雰囲気にはならない。引き続き、鋭いタックルとブレイクダウンへの素早い仕掛けを続け、相手の激しい攻撃を止め続ける。帝京にチャンスが来たのは、29分。ラインアウトからモールを押すが、押し切れずにラックに。FWで連続攻撃を続け、最後はFLトンガタマがトライ。同点に追いつく。しかし、36分、相手のクイックスローインからの展開にディフェンスが崩され、トライを奪われてしまう。7-12で前半を終えた。後半は風上からの攻撃となったが、ここから時折、激しい雨に見舞われる。風上のアドバンテージがやや削がれる悪天候となったが、帝京は、前半と同じように激しいタックルとブレイクダウンで相手の攻撃を止める。アタックではややミスも出るが、それでもやるべきことを続けていく。試合が動いたのは、29分。帝京がゴール前まで攻め込んで、FWで徹底して連続攻撃を仕掛ける。相手の粘り強いディフェンスとの我慢比べとなったが、最後はPR岡本がねじ込んでトライ。FB竹山のキックも決まり逆転。その後も帝京は、相手の攻撃を止め続け、14-12でノーサイド。Aチームとしての夏合宿最終戦を勝利で終えるとともに、失いかけていた自信をもう一度、その手に取り戻した。






《POST MATCH INTERVIEW》

■岩出雅之監督
「今日のゲームはここ2試合とは違い、気持ちの部分がしっかりと出せていたと思います。そこはとてもよかったと思いますが、スキルの部分ではまだまだ改善していかなければいけないところがたくさんありました。今日の激しい気持ちを忘れず、ここからシーズンに向けてプレースキルやゲームの理解などを高め、シーズンが深まる中でさらに完成度を高めていってほしいと思います。最後になりましたが、対戦してくださった天理大学さんに感謝申し上げます。冬にまた再戦させていただけるように精進してまいります。また、悪天候の中、観戦してくださった皆さまにも感謝申し上げます。ありがとうございました。」

■キャプテン・LO秋山大地(4年)
「今日はここ2試合出すことができなかった『帝京らしさ』、タックルやブレイクダウンといった土台となる部分を、80分間、ハードワークしてやっていこうとみんなで言い合って臨みました。試合では、80分間、誰一人、下を向くことなく、ハードワークし続けられたことはよかったと思いますし、それが勝利につながったのだと思います。気持ちの部分で『危機感』をもって、一人一人が『自分がやらなければ』という意識でできたと思います。『誰かがやってくれる』という甘い気持ちはなかったと僕には感じられました。ただ、2つ負けて危機感をもつのではなく、危機感を自分たちでつくって戦いに臨まないといけなかったと思います。そこはいい勉強をさせていただいたと捉えています。今日、勝てたことはうれしいですが、ここが最高点ではないので、今日を一つの基準として、対抗戦では一戦一戦、成長できる試合をしていかなければと思っています。そうするために、今日のような原点の気持ちというものを全員がもって戦っていきたいと思います。」



■試合中のリーダーシップを意識した・No8ブロディ・マクカラン(4年)
「僕たちは明治大学さん、早稲田大学さんに負けて、天理大学さんは明治大学さんに勝っていたので、そのとても強い天理大学さんに気持ちで負けないように、そして、僕たち4年生にとっては夏合宿最後の試合だったので、いままでやってきたことを出すしかないと思っていました。前の試合では、あまりいいリーダーシップを発揮できなかったので、今日はリーダーシップも意識しました。秋山はプレーで体を張っていたので、僕はみんなに言葉でいろいろ伝えようと思いました。天気が悪く、難しいところもありましたが、これもラグビー。いい経験ができたと思っています。今日、部員150人がワンチームになれた気がしました。それがうれしいです。今日の試合で満足せず、ここを帝京のスタンダードにして絶対に下げないで、対抗戦に臨んでいきたいです。」



■自身初のFBのことよりも若いCTB陣を気遣う・FB竹山晃暉(4年)
「まずは勝てたことが素直にうれしいです。この夏合宿、明治大学さん、早稲田大学さんと2連敗して、自分のリーダーシップの甘さを痛感しました。今日はCTBに入った若いメンバー(尾﨑、西川)をどうリードしていこうかと考えていたのですが、自分がFBという初めてのポジションに回ったこともあって、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまいました。それでも、周りに助けられて、特にFW陣が帝京らしさを見せてくれて、僕自身も前に出ていく力をもらいましたし、同時にCTBの2人も成長できた試合だったのではと思います。この夏合宿では、自分たちの現状を思い知らされました。ですが、敗戦から得たものをしっかりと成長につなげていきたいです。」



■9人目のFWのつもりでディフェンスにフォーカスした・SH北林賢悟(4年)
「今日は僅差のゲームを自分自身も、チームも楽しめたかなと思います。後半に自分が入った場面はマイボールの局面でしたが、自分はディフェンスを買われて出させていただいていると思っていて、いつも9人目のFWという気持ちでやろうと思っているので、今日もそういう気持ちでやりました。SHとしては、タックルでチームに勢いを与えることができたかなと思っています。この合宿では、最初はC、Dチームにリーダー陣がいない中で、自分が先頭に立ってやっていくこともありましたし、学生コーチとして練習を取り仕切るなど、プレーとマネジメントの両方で尽力することができました。ここからシーズンに向け、自分の強みであるディフェンスを活かしてチームに貢献できるように、そして最後にみんなで笑顔になれるように、努力していきたいと思います。」



《PICK UP PLAYERS》

激しいタックルの連発でチームを鼓舞

CTB 西川虎哲(1年・ゲームMVP)
NISHIKAWA KOTETSU



医療技術学部スポーツ医療学科
京都成章高校出身
身長168cm/体重72kg


■まずは試合の感想からお願いします。
「今日は自分としてはこの夏合宿で初めてのAチームでの試合でしたが、『タフさ』を意識して臨みました。がつがつタックルに行くなど、芯となるプレーを意識してやろうと決めていました。何度かはずされたところもあったのですが、がつがつ行けて、チームに貢献できたかなと思っています。」

■タックルについては岩出監督の評価もかなり高かったようですね。
「ありがとうございます。尾﨑(泰雅)さんとも『CTBとしてディフェンス、タックルをばちばち行こう』と言っていたのですが、2人でそれができてよかったです。」

■アタック面ではどう評価していますか。
「アタック面では、指示とかコミュニケーションの部分が全然できていませんでした。」

■この天候、強風は気になりませんでしたか。
「やはり、前半は風がきつくて『我慢、我慢』と言っていました。そして『後半、風上になったら取り返そう』と言ってやっていましたが、その後半で僕自身、ミスしてしまい(相手のキックが風に流されノックオン)、チームに迷惑をかけてしまいました。その分、ディフェンスで取り返そうと思ってやりました。」

■この夏合宿全体を振り返って、どう捉えていますか。
「基本的に僕はディフェンスが持ち味だと思っているのですが、この夏合宿を通して、さらにレベルアップできたかなと思っています。」

■間もなく、対抗戦も始まります。そこへ向けての意気込みをお願いします。
「まずはケガをしないで、このままAチームに定着できるように頑張りたいと思います。」


春はWTBでの出場が多かったが、この日はCTBで先発。CTB初挑戦の尾﨑泰雅選手とともに、体を張ったタックルを連発した。ハーフタイムに岩出監督から「前半、一番タックルに行ったのは誰だ」と質問が飛ぶと、選手たちから口々に「(西川)虎哲です」との答えが返ってきた。まさにチームの気持ちの火付け役となっていた。本人はアタック面での反省点を口にするが、そこはこれからの課題・伸びしろとして、この日はそこを補って余りあるほどのディフェンスを見せてくれた。1年生であり、吸収力も高い。今後のさらなる成長が楽しみだ。


《COLUMN》

―― 危機感とモチベーション ――


試合後、岩出監督と、なぜか「明治維新」の話になりました。

岩出監督は「あれだけのことを成し遂げるには、相当なエネルギーが必要だったはず。そこに興味を感じる」とおっしゃっていました。

維新志士たちのエネルギーの源は何だったのか。徳川幕府を倒して、新しい政府をつくるというとてつもない難事業をやってのけた人たちの、驚くほど高いモチベーションはどこから来ていたのか。

それは、この日の秋山キャプテンのコメントにもある「危機感」だったに違いありません。

「このままでは、日本はアジア、アフリカ諸国のように、欧米の植民地になってしまう」という強烈な危機感です。

当時、ある程度の武士階級の人たちであれば、欧米の植民地政策についてよく知っていたはずです。植民地にされてしまった国々の人たちがいかに過酷な目に遭っているかについて、少なくともアヘン戦争後の中国の様子くらいは、リアルにわかっていたに違いありません。

日本がそんなことになったら大変だという危機感、そして、自分たちがそうなってしまうかもしれないという強い当事者意識が、「自分がやらなければ」という意識を生み、「誰かがやってくれる」という人任せではいけないという強い使命感につながっていったのでしょう。

危機感は強烈なモチベーションを生み出します。その危機が自分に降りかかってくるとなれば、なおさらです。

この日の帝京のプレーにも、「明治維新」を起こすほどのエネルギーとは言わないまでも、危機感が生み出す強いモチベーションを随所に感じました。

あとは、秋山キャプテンが述べていたように「危機感を自分たちでつくって」戦いに臨めるかどうか。簡単ではないかもしれませんが、試合のたびにこの日の気持ち、あるいは2連敗を喫したときの気持ちを思い出せば、けっして不可能ではないでしょう。

悔しさを経て、再び自信と手応えをつかんだ夏合宿。この経験は必ずチームに大きな成長をもたらしてくれるはずです。







《THE NEW FACE》


ニューフェースたちの声を紹介します。

PR 細木康太郎(1年)
桐蔭学園高校出身
身長177cm/体重106kg

「自分の強みはフィールドプレーでのボールキャリーとタックルです。特にボールキャリーについては、アタックはボールキャッチから始まると思っているので、まずはきちんとキャッチして、ボールをしっかり持つことを意識しています。課題はスクラムです。大学のスクラムは高校とは全然レベルが違ったので、もっと強くなりたいです。入部前からテレビ等で『3人トーク』など考える力を重視していることは知っていましたが、入ってみて実際にやってみると、先輩方の話の上手さ、考えの深さが想像以上でした。いまはケガがあり、プレーではチームに貢献できていないのですが、早く治して、試合に出られるようにチャレンジしていきたいです。」


PR 奥野翔太(1年)
常翔学園高校出身
身長176cm/体重103kg

「自分の強みはコンタクトプレーだと思っているので、そこをどんどん伸ばしていきたいと思っています。課題はスクラムとフィールドプレー。ここはもっともっと練習していかないと、先輩方にはとても追いつけないと感じているので、さらに努力していきたいです。帝京大学ラグビー部は、先輩方の自分たちへの関わり方がすごく温かいです。やさしいだけじゃなくて、とても丁寧に教えてくださいます。でも、ただ教えてくれるのではなく、僕たち自身が考えて答えが出せるように導いてくださるので、より詳しく理解することができます。今後は、課題であるスクラムとフィールドプレーを改善して、上のチームでプレーして、チームに貢献できるように頑張っていきたいと思います。」


《NEXT MATCH》
関東大学対抗戦A
対成蹊大学(http://www.seikeiruggerclub.com/)
9月16日(日) 秩父宮ラグビー場
15時キックオフ

過去の対戦成績:関東大学対抗戦26勝2敗(大学選手権での対戦なし)
[成蹊大学の直近5戦]
6月3日 ○59-31青山学院大学(関東大学春季大会C)
6月9日 ●24-52関東学院大学(関東大学春季大会C)
6月16日 ●21-57専修大学(関東大学春季大会C)
8月19日 ●21-59大東文化大学(夏季練習試合)
8月22日 ●35-50國學院大学(夏季練習試合)

(文/木村俊太・写真/志賀由佳)

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