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関東大学春季大会Aグループ 早稲田大学戦

関東大学春季大会Aグループ 早稲田大学戦

2019/06/16

6月16日(日)・百草グラウンド
○帝京大学(勝点26)61-24早稲田大学(勝点21)●



《帝京大学》
[FW]
(1)北⇒泓(2)李(承爀)⇒奥野(3)細木⇒長谷川(耀)(4)マクロビー(5)久保⇒佐藤(6)安田(7)亀井⇒トンガタマ(8)山添
[BK]
(9)土永⇒平坂(10)北村⇒押川(11)李(承信)(12)本郷(13)小村⇒マクカラン(14)木村(15)奥村

《早稲田大学》※先発のみ
[FW]
(1)久保(2)中野(3)小林(4)三浦(5)星谷(6)柴田(7)幸重(8)沖野
[BK]
(9)河村(10)吉村(11)加藤(12)平井(13)高木(14)安部(15)梅津

【前半】【得点経過】
【2分】帝0-5早
キックカウンターから攻められ、トライを奪われる。

【10分】帝5-5早
ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH土永-SO北村と渡り、北村がキック。WTB木村がうまく拾って、そのまま走り切ってトライ。

【18分】帝12-5早
ラインアウトから連続攻撃。ラックから、PR北が持ち出し、走り切ってトライ。ゴール成功。

【30分】帝19-5早
ラインアウトから連続攻撃。ラックから、PR細木が持ち出してトライ。ゴール成功。

【38分】帝26-5早
ターンオーバーから連続攻撃。CTB小村が前方にキック。WTB木村が拾って前進し、小村にパス。小村が抜け出してトライ。ゴール成功。


【後半】【得点経過】
【3分】帝33-5早
フリーキックでのクイック・リスタートから連続攻撃。ラックから、SH土永-FLトンガタマと渡り、トンガタマが抜け出してトライ。ゴール成功。

【12分】帝40-5早
スクラムから連続攻撃。ラックから、PR北が持ち出してトライ。ゴール成功。

【14分】帝47-5早
キックカウンターから攻撃。FB奥村が仕掛け、WTB木村にパス。木村が自陣から走り切って、そのままトライ。ゴール成功。

【20分】帝47-10早
スクラムから攻められ、トライを奪われる。

【35分】帝54-10早
ターンオーバーから連続攻撃。WTB木村が自陣から走り切ってトライ。ゴール成功。

【38分】帝54-17早
ターンオーバーからつながれて、トライを奪われる。

【42分】帝54-24早
スクラムからつながれて、トライを奪われる。

【48分】帝61-24早
WTB李がパス・インターセプト。そのまま走り切ってトライ。ゴール成功。


《BRIEF REVIEW》

春季大会最終戦の相手は早稲田大学。キックオフ直後、やや硬さがあったか、早々に先制点を献上してしまう。だが、これでスイッチが入った帝京。前に出る圧力が増し、チャンスも増えてくる。10分、SO北村のキックにWTB木村が反応し、同点のトライを奪うと、18分には、ラックからPR北が持ち出して逆転のトライ。さらに、PR細木、CTB小村のトライで26-5として前半を折り返した。ハーフタイムには、監督・コーチから「倒れてもすぐに起き上がるといった、早稲田大学の一生懸命さを見習って、それを自分たちのいい部分に加えていこう」と声がかかる。その後半も帝京ペース。3分に、SH土永の仕掛けから、FLトンガタマがフォローしてトライを奪うと、12分にはPR北が、前半のときと同様、ラックから持ち出してトライを奪う。さらに、WTB木村が自陣から走り切るトライを2つも見せる。終了間際に失点もあるが、最後はWTB李、CTB平坂、SO押川らの好タックルもあり、李がうまくインターセプトし、そのまま走り切ってトライ。61-24で帝京が勝利した。この結果、勝点26で東海大学と並んだが、大会規定により、総得失点差で帝京が東海大学を上回り(直接対決の結果は順位に影響を与えない規定になっている)、2年ぶり7回目の春季大会優勝を決めた。



《POST MATCH INTERVIEW》

■岩出雅之監督
「今日の試合は、とても暑いなか、多くの選手が前に出る姿勢を見せてくれました。チームはまだまだ成長途上ですが、この前に出る姿勢に関してはとてもよかったと思います。新たなポジションにチャレンジし、大きな可能性を見せてくれた選手もいました。こうした選手は、他の選手たちにもいい刺激を与えてくれると思います。こうした選手に引っ張られて、他の選手たちも自分のポテンシャルを引き出すといった、好循環を期待したいと思っています。今日の勝利で、春季大会優勝という結果をいただきました。この結果はとてもありがたいものですが、その春季大会で東海大学さんに、そして招待試合で明治大学さんに敗れているという現実もしっかりと直視して、今後の成長につなげていかなければなりません。この春シーズンは、文字通り、一つ一つの積み重ねをしてきました。一足飛びにうまくなるというわけにはいきませんが、一歩ずつ成長していることもまた事実です。これからも一つ一つの積み重ねを続けていってくれることを期待しています。最後になりましたが、対戦してくださった早稲田大学の選手、スタッフ、関係者の皆様に感謝を申し上げます。また、暑い中、観戦してくださったファンの皆様にもお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。」



■キャプテン・CTB本郷泰司(4年)
「今日の試合は、前半の最初の部分で自分たちが受けてしまい、簡単にトライを取られてしまったのですが、そこでしっかり修正してディフェンスで前に出られるようになって、ディフェンスから自分たちの流れに持っていけて、いい試合運びができたのではないかと思います。春シーズン、東海大学さんと明治大学さんに負けたという結果については、自分たちがうまくいかないときにそのままずるずると行ってしまって、流れを自分たちの方へ持って来られないという課題が見えて、そこで誰かがエナジーを持ったプレー、チームが乗っていけるようなプレーをしなければいけないのにできていなかったと思います。ただ、今日は最初に1つトライを取られたあと、落ち込むことなく修正できたので、少し変われたのではないかと思っています。春季大会の優勝については、4トライ以上取って勝てば、あとは得失点差で有利ということは試合前からわかっていましたが、得失点差は東海大学さんの試合の結果次第なところもありましたので、そこはあまり意識せず、今日の試合で自分たちがやるべきことに集中して臨みました。結果として優勝できたことはうれしいです。この春、課題として上がったディフェンスとセットプレーについてはまだまだなので、夏に向けてさらにいい準備をしていくことが大切です。春シーズンのAチームの試合は今日で終わりましたが、試合がないからと言って、日々の練習をただ坦々とやるのではなく、常にチャレンジャーとして、今年のテーマである「挑越」、つまり「挑戦し切って越えていく」毎日を繰り返していって、より成長したチームになった帝京をファンの皆様に見せられるように頑張っていきたいと思います。」



■タフでハードワークできるチームを作っていきたい・FL佐藤羅雲(4年)
「今日はリザーブとして少ない出場時間でしたが、『ハードワークする』ことをテーマにして臨みました。ただ、僕たちリザーブ陣が入ってから、ディフェンスがよくなくて、スコアされてしまったので、そこは次への修正ポイントだと思います。自分はバイス・キャプテンとしてチームをまとめる役を任せていただいていますが、まだまだ自分自身の力量が足りなくて、チームの雰囲気が下がっているようなときに、チームを奮い立たせる発言やプレーができていませんでした。こうした点で自分がもっと成長していかなければいけないと感じさせられた春シーズンでした。この春は、自分も本郷もずっと試合に出られなくて、末や長谷川(耀)や(李)承爀、あるいは3年生の北村にリーダーを託す形になってしまいましたが、やはり彼らだけでなく、一人一人が積極的にリーダーシップを発揮していかないといけないと感じました。今後、まず自分自身はバイス・キャプテンとして、周りを乗せていけるような発言とプレーをセットにして、チームの先頭に立って、力を100%出し切っていきたいです。本郷と力を合わせて、タフでハードワークできるチームを作っていきたいと思っています。



■SHとしてもプレーし、ユーティリティぶりを発揮・CTB・SHニコラス・マクカラン(3年)
「今日は久しぶりの試合でした。ラスト10分ほどでしたが、テンポも速く感じました。最初、CTBで入って、途中からSHをやりましたが、SHは高校生のとき以来で、とても久しぶり。疲れました。CTBもやっていきますが、両方できればユーティリティ・プレーヤーとして、プレーの幅も広がるので、頑張りたいです。春シーズンは腰のケガがあって、今日が復帰戦。チームを外から見ていて、早くプレーしたい気持ちでいっぱいでした。でも、外からチームを見られたのは、いい勉強になったと思っています。ここからもっとフィットネスを高めて、80分間プレーできる体力を取り戻したいと思います。」



《PICK UP PLAYERS》

自分の役割を明確にしてFWを引っ張っていきたい


FL 亀井康平(4年)
Kamei Kohei



医療技術学部スポーツ医療学科
摂津高校出身
身長176cm/体重75kg


■Aチームとしては、初めてFLとして出場した試合でしたが、まずはどんな意識で試合に臨んだのでしょうか。
「まずは自分ができること、タックルの部分でチームの先頭に立ってやっていこうと思って試合に臨みました。」

■やってみての手応えはどうでしたか。
「慣れない部分も多く、周りとの連携が取れていない部分も多くありましたが、自分の中ではしっかりとコンタクトできて、いいタックルも生まれていたかなと思います。」

■FLとしての練習を始めたのはいつ頃ですか。
「先週の木曜日から始めて、日曜日の山梨学院大学さんとの練習試合でFLとして出て、自分としてもいいタックルが何本もできたと思うのですが、それを認めていただいて、今日、Aチームで出ることになったのだと思います。」

■最初にFLとしてやると聞いたときには、どう思いましたか。
「びっくりしましたけど、FLは運動量とタックルが求められるポジションで、そこは自分の持ち味でもありましたので、やってみる価値はあると思いました。」

■体もそう大きくはない中、大きな相手を倒さなければならないポジションですよね。
「そうなんですが、自分としては大きな相手を倒すのは『楽しい』と言いますか……楽しいです(笑)」

■あとは、周囲との連携の部分だけ?
「いえいえ、連携はもちろんですが、タックルの精度を高めなければいけませんし、やっぱりフィジカルアップはしたいので、それらは特にしっかりやっていきたいですね。それらの課題を克服した上で、自分の持ち味であるフィットネスでハードワークしていきたいです。」

■4年生としては、チームを引っ張っていく役割を担っていると思いますが、その部分ではどうですか。
「4年生として自分がチームを引っ張る立場だという意識はあります。姿で見せるという部分では、それを体現できるのはやはりタックルだと思っているので、自分ががつがつとタックルに行くことで、チームを鼓舞できたらと思っています。」

■Aチームとしては春シーズンが終了しますが、春シーズンを振り返って、いまどう捉えていますか。
「個人的には、長崎での最初の試合(4/21の長崎ドリームチーム戦)でWTBとして使っていただいたのに、そのときはコンタクトプレーが消極的でBチームに落ちてしまいました。そのとき、『もっとコンタクトプレーで激しく行かないと、Aチームには上がれない』と感じたので、コンタクトプレーの激しさ、数多くタックルに行くことを意識するようになりました。そこは、この春シーズンに改善、成長できたところだと思っています。チームとしては、この春はFWの強化に力を入れてきましたが、自分がFWとしてどういう役割を担っていくのかを自分の中ではっきりさせて、その上でFWを引っ張っていくことがチームをよくすることにつながると思っています。」


これまでWTBとしての出場がほとんどだったが、FLに転向。ほんの10日ほど前から練習を始めたという不慣れなポジションながら、持ち前の激しいタックルで好プレーを連発した。この激しいタックルに引っ張られるように、他の選手たちも激しく前に出るようになり、チームに勢いがついた。ハーフタイムにはコーチ陣から、「亀井が一番いいプレーをしている。本職のFW陣も頑張れ」との声が掛かるほど、いいプレーをしていた。その激しさのあまり、後半早々に交替となってしまったが、目の周りにできた青あざが勲章のように輝いていた。ポジション・コンバートの達人・岩出監督が、また新たな才能を引き出し、それに応えた亀井選手がチームに新たな風を吹き込んだ。




《COLUMN》

―― ラグビーとクラウゼヴィッツ ――


関東大学春季大会Aにおいて、帝京は2年ぶり7回目の優勝を成し遂げました。もちろん、この春2敗しているという現実はしっかりと受け止めなければなりませんが、さまざまな部分でチームとしての成長が見られたのも事実です。

大事なのはここからどこまで成長できるか。すべてはそこにかかってくると思います。

さて、手元に、一見ラグビーとは関係なさそうな一冊の(正確には上中下三冊の)本があります。これをラグビーと絡めて読むとおもしろかったので、ご紹介したいと思います。クラウゼヴィッツという人が19世紀の前半に書いた『戦争論』という本です。

なんとも物騒なタイトルですが、これが日本でも意外なほど多く読まれているといいます。もちろん、戦争のためではありません。ビジネス書として、企業戦略、企画戦略、マーケティング戦略のテキストとして多くの人に読まれているのだそうです。

著者のクラウゼヴィッツは、プロイセン(ドイツ)の人で、ナポレオン戦争に将校として従軍して、戦後、ベルリンの陸軍大学校の校長を務めている間にこの本を書いたそうです。ただし、未完成のまま亡くなってしまい、死後、奥さんが遺稿をまとめて編集して、出版されました。

その中身ですが、やはり「戦争」の話、特に著者がリアルに体験したナポレオン戦争を想起しながら読むと、とても物騒な感じがします。ところが、多くの人が「ビジネス書」「企業戦略の書」として読むように、「ラグビーの書」として読むとけっこうおもしろく読むことができました。

例えば、「戦争の自然的経緯は、防御をもって始まり攻勢をもって終わるのが通例である」と書かれています。これは、帝京の選手たちが試合前によく言っている「まずはディフェンスで、リズムを作っていこう」という考え方に相通じるものを感じます。まずはディフェンスで始まって、そこでリズムを作って、攻勢をかけていこう」というわけです。

また、「防御は、待ち受けと積極的行動という二つの異質的な部分からなる」と言います。「待ち受け」と「積極的行動」というのは、よく言われる「相手の攻撃を受けてしまうディフェンス」と「積極的に前に出るディフェンス」という読み方もできますし、あるいは「前に出ずサイドに追い込んでいくディフェンス」と「前に出るシャローディフェンス」という読み方もできそうです。

あるいは「防御者が迅速かつ強力に攻撃へ移行すること、即ち敵の打ち込みを受け止めるや否や、即座に刃を返して敵に酬いることこそ防御の真諦(注:物事の本質のこと)なのである」という話などは、もはや説明不要でしょう。「ディフェンスからリズムを作る」というのは、まさにこういう状況を指すのだと思います。

ところで、元日本代表監督の大西鐵之祐氏は、自身の従軍体験をもとに「戦争をしないためにラグビーをやるのだ」という信念を持っていたそうです。『闘争の倫理』などを読んでも、ラグビーという競技には、戦争を阻止する力があると本気で思われていたように感じます。ラグビーは戦う際の倫理観を養ってくれるスポーツだと考えていたようです。

そういう意味でも、ラグビーとクラウゼヴィッツの理論を比較しながら「戦争をしないために『戦争論』を読む」というのも、アリなのだろうと思っています。


《THE NEW FACE》

ニューフェースたちの声を紹介します。


SO・FB・WTB 長谷川毅(1年)
筑紫丘高校出身
身長175cm/体重82kg

「自分の強みはランです。スピードを活かして、相手をずらして前に出るプレー、そして裏に出ることができたら、つかまってもオフロード・パスでつなぐプレーが得意です。課題はラグビーの知識です。強豪校の戦い方やラグビーに対する考え方がまだまだわかっていないところがあるので、先輩方の戦い方を見て、もっとラグビーについての理解を深めていきたいです。帝京大学ラグビー部は、ラグビーだけでなく、生活面を含めたあらゆることについて、監督やコーチから言われたからやるのではなく、選手一人一人が能動的に動いています。学年問わず、みんながいろいろな声を出し合って、よりよいものにしようとしているところがすごいと感じています。大きな目標としては、自分がAチームの試合に出場して、大学日本一になりたいというものですが、まず達成したい近い目標としては、より多くの試合に出て、経験を積んでいくこと、ラグビーの知識を増やしていくこと、そして、自分の持ち味を出していきたいと思っています。」


FL・No8 山添圭祐(1年)
長崎北陽台高校出身
身長177cm/体重98kg

「自分の強みはコンタクトプレーです。アタック時の『Go Forward』を見てほしいです。課題はタックルのスキルです。今日の試合(関東大学春季大会Aグループ早稲田大学戦に先発出場)でも、ディフェンスで課題が出たので、スキルと同時にヒットで負けない体づくりも課題だと思います。帝京大学ラグビー部は、環境がすばらしいと感じています。施設の環境ももちろんですが、先輩方の話す力や下級生へのアプローチなど人間関係という環境もとてもすばらしいと思います。今後は、強い相手にヒットしても負けない体づくりをしていって、タックルのスキルを高め、バックローとしての動き方をもっと勉強して、試合に出続けられるように頑張りたいです。」


SH 柴垣幸之介(1年)
岱志高校出身
身長166cm/体重72kg

「自分の強みは、左利きを活かしたハイパントキックです。高さも距離も正確に蹴れるキックを見てほしいです。課題は、高いレベルでのゲーム経験が少ないことだと感じています。すでに高いレベルの経験値を持っている先輩方や同期たちとたくさん接することで、早く自分もそのレベルに達せられるようにしたいです。帝京大学ラグビー部は、施設面など大学によるサポートがすばらしいのに加えて、先輩方が自分たち1年生の『伴走』をしてくださるなど、先輩方によるサポートがすばらしいです。自分たちは『伴走』されていることにきちんと気付いて行動して、早く先輩方に追いつけるようにしたいです。今後は、Aチームに上がって、大学選手権優勝に自分も貢献できるようになりたいです。」


左から長谷川毅・山添圭祐・柴垣幸之介

《NEXT MATCH》

Aチームの春シーズンのゲームは終了いたしました。
今後の日程は、正式に決まり次第、ホームページ等でお知らせいたします。

(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
 

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