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関東大学対抗戦A・最終戦 筑波大学

関東大学対抗戦A・最終戦 筑波大学

2012/12/03

『この一戦がスタートライン!』


12月1日(土)・秩父宮ラグビー場
●帝京大学(6勝1敗)10-24筑波大学○(6勝1敗)




《帝京大学》
[FW]①森川 ②泉 ③出渕 ④李 ⑤マニング ⑥大和田⇒坂手 ⑦松永(浩) ⑧イラウア⇒小瀧
[BK]⑨流 ⑩森谷⇒荒井(基) ⑪磯田 ⑫中村 ⑬権 ⑭小野(寛) ⑮竹田

《筑波大学》※先発のみ
[FW]①古賀 ②彦坂(圭) ③大川 ④園中 ⑤鶴谷 ⑥水上 ⑦粕谷 ⑧山本
[BK]⑨内田(啓介) ⑩松下(真) ⑪山下(一) ⑫中靍 ⑬山下(昂) ⑭彦坂(匡)⑮内田(啓太)


  【前半】  
すでに対抗戦の優勝(同率優勝を含む)を決めている帝京。相手は、創部以来初の対抗戦優勝(同率)を目指す筑波大学。決定力のある選手が揃う相手に対して、帝京は組織的なディフェンスで防ぎたい。相手はディフェンス力にも定評があるが、帝京のFW、BK一体となった攻撃で打ち破りたい。
また、同時に岩出監督は大学選手権、そしてその先も見据え、伸び盛りのSO森谷、FLでリザーブに入ったFL坂手ら、将来の帝京を担う1年生を敢えて起用。
『今』の一瞬に集中するとともに、長いスパンでの先行投資も視野に入れこの試合に臨むこととなった。

キックオフ。試合開始から、激しい攻防が展開される。帝京がラックから出したボールに対して、ラック内の筑波の選手から手が伸びてくる。これまでの対戦相手にはなかったプレッシャーの掛け方だ。

筑波はタックルも人数を掛けてくる。2人目の寄りが速く、しかも徹底してボールに絡んでくるため、帝京はボールキャリアが倒れていないのに、ボールをもぎ取られる。

しかし、帝京も集中力を切らさない。自陣深く蹴り込まれたボールも、FB竹田の好タッチキックで大きくエリアを挽回する。CTB権、No8イラウア、FL松永らの気持ちのこもったタックルでターンオーバーする。

試合が動いたのは13分。SO森谷のキックで敵陣深く攻め込んでのラインアウト。FWで当たっておいてBKへ展開。権、中村の両CTBで前進し、ゴール前はFWで勝負。最後はLOマニングがインゴールを陥れ、帝京が先制トライを奪う。

その後、同点とされるが、帝京はFW、BK一体の攻撃で前進。ゴール正面で相手が反則を犯し、中村がPGをきっちりと決める。

前半残り20分。互いにプライドをぶつけ合い、攻守に渡ってハイレベルな攻防を繰り広げる。No8からLOに上がりより献身的な動きが増した李、WTB小野らも広範囲に動き回り、チームを脇から固める。
あっという間の40分が経過し、前半を10-17で折り返すこととなった。

帝京はやや攻められる時間帯が長かったにもかかわらず、数多くはないチャンスできっちりスコア。後半はさらに仕掛けていくことで、決定機を拡大したいところだ。

 

  【得点経過】  
【13分】帝7-0筑
SO森谷が22mライン奥へキック。筑波の選手はタッチに出すのが精一杯。帝京ボールのラインアウトはやや乱れるも、HO泉がセービングしてキープ。LOマニング、FL大和田、CTB権、CTB中村、FK松永、HO泉、PR森川で前進。さらに、マニング、LO李、大和田で前進して、最後はマニングがトライ。ゴール成功。

【16分】帝7-7筑
帝京が展開して攻めるが、ボールに絡まれてターンオーバーされる。持ち出され、展開されて、防ぎ切れずにトライを奪われる。

【25分】帝10-7筑
筑波がゴール正面でノットリリースザボールの反則を犯す。CTB中村がPGを決める。

【29分】帝10-12筑
筑波ボールのラインアウトからつながれ、前進される。ラックのブラインドサイドのディフェンスが手薄になったところに、筑波のSHに向け出されてトライを奪われる。

【34分】帝10-17筑
筑波のキックに対して帝京がレイトチャージ。ラインアウトからつながれ、相手LOの個人技でタックルをはずされてトライを奪われる。


  【後半】  
7点差ビハインドで迎える後半。激戦を戦い抜いてきた対抗戦も残り40分。帝京としては勝敗ももちろんのことながら、次週より開幕する大学選手権に向け、礎となる試合を展開したいところだ。

後半が再開される。序盤はやや筑波ペースが続くが、徐々に帝京が反撃開始。
相手のペナルティから敵陣深く攻め込む。ラインアウトからモールで攻めると、相手はコラプシングの反則を犯す。ここで帝京はスクラムを選択する。再度、モールを作って攻めるという選択肢もあったが、FW陣はスクラムに手応えを得ていた。
キャプテン泉は「スクラムトライを狙いました」と語る。相手ゴール前。再三に渡りスクラムを組み直す、両チーム。これには筑波もたまらず何度もコラプシングの反則を犯す。

一旦チャンスは潰えたかに見えたが、それでも帝京の攻撃は緩まない。FL松永が抜け出しゴール前へ。FWで前進を図るものの、筑波のディフェンスも堅い。

ゴール前の攻防にスタンドも沸く。帝京はディフェンスでも魅せる。途中出場のFL坂手、CTB荒井(基)らが好タックル。さらに攻撃に転じる。

しかし、筑波のプレッシャーも激しく、結局、このままノーサイド。学生相手にはおよそ2年ぶりの公式戦での敗戦となった。

だが、帝京にはスタンドの控え部員も含めて、誰ひとりとして下を向いているものはいなかった。
新たな挑戦へ向けて悔しさを噛みしめながら、次を見据える目をしていた。
もちろんスタンドの帝京ファンも、気持ちは同じだ。
ノーサイド直後、バックスタンドに挨拶に訪れた選手には、温かい声がかけられる。
ファンも、これでさらにスイッチが入り、選手たちと一体になって大学選手権で『戦う』こととなる。

共同記者会見が行われる。途中、廊下で何度も歓喜の雄叫びをあげる筑波の選手たち。
「今の一瞬をしっかりと心に刻んで、次はわれわれが笑顔で選手権を乗り切れるようにしたいと思います」
どこか柔和な表情でそう話す岩出監督の隣で、必死に涙をこらえるような表情で聞く泉キャプテン。スキッパーの人一倍の責任感と負けじ魂に、火が灯った瞬間であった。

敗戦には勝利よりも学ぶことが多く詰まっている。悔しさは喜びよりもモチベーションを高める。
ピッチで完全燃焼できる時間は、最大でもあと400分。
いうまでもないが、百草での今後の取り組みとさらなるチームの結束が、最高のパフォーマンスを約束する。
「あの負けがあったからチームが変われた。そして、勝利をつかむことができた。」
今、2012年度帝京ラグビー部のストーリーは始まったばかりだ。

 

  【得点経過】  
【6分】帝10-24筑
帝京のノットリリースザボールの反則に、筑波がクイックスタート。つながれてトライを奪われる。


《AFTER MATCH SAY》

■岩出雅之監督
「負けました。我々としては、よくもなく、悪くもなくというゲームだったと思いますが、今日は筑波大学さんのすばらしいブレイクダウンとタックル、そしていいアタックが出たゲームだったと思います。後半、14点差なら追いつけると思って見ていたのですが、そこで取り切れなかったのは我々の詰めの甘さであり、筑波大学さんのよさが出たところだったと思います。この筑波大学さんのよさを超えていけるように、今日のゲームを細かく分析して、しっかりと反省して、学生の奮起を促しながら、次は我々がいいところを出せるように頑張りたいと思います。
学生は久々に悔しい思いをしたと思います。そんな中でみな、きりっとした姿でいてくれたことは、監督として選手を誇りに思います。勝ったゲームよりも負けたゲームの方が学ぶことは多いので、今日の敗戦を今後にしっかりと生かしていきたいと思います。」


■キャプテン・HO泉敬(4年)
「今日の試合は負けてしまいましたが、内容としてはいいところもたくさんありました。もちろん、悪いところもあって負けてしまったわけですが、絶対に、次につなげます。自分たちは泥臭く、ひたむきにプレーしなければという思いを改めて感じさせてもらえた試合だったと思います。14点リードされている場面は、あせりはありませんでした。とにかくこの負けを次に生かし、大学選手権で爆発させます。」

■スクラムでの進化を実感した・PR森川由起乙(2年)


「前半は風下なこともあって厳しいゲームになるだろうと思っていたのですが、そこでも受け身にならないようにと思って臨みました。前半、想定内で折り返せたと思うのですが、後半は、いいところもありながら、取り切る場面で取り切れませんでした。全体的にはそんなに悪かったわけではないと思うのですが、取り切るまでのあともう少しのところの力強さの部分でまだまだ成長できる点が見つかったので、そこを修正していきたいです。スクラムに関しては、個人的には対抗戦を通じて一番いいスクラムが組めていたと思います。ただ、前3人の組み方という部分では、相手のスクラムの押す方向に対してこちらの押す方向がうまく噛み合っていなかったように思います。組んだ瞬間の8人での圧力という点では勝っていただけに、ここも修正したいと思います。大学選手権は初めての経験で未知の世界なのですが、今年一年積み上げてきたプレーができるように、まずは体のコンディションを整えるところから準備して臨みたいです」。

■献身的に体を張り続けた・LO李聖彰(3年)


「今日は自分たちの形でラグビーをすることができませんでした。なぜかというと、ブレイクダウンでの2人目の寄りの部分で相手の方が少し速かったため、そして自分たちが2人目の仕事があまりできなかったためです。想定外というよりは、自分たちの形がうまく出せずに、そこにつけ込まれた感じです。そこはもう一度、きちんと確認して、みんなで意思統一してやっていけば大丈夫です。自分たちがやってきたことは正しいので、一人一人がやるべきことをやり切ること、どんな状況でも自分の力を100%出し切ること、チームを信じて全員で戦うこと。特にメンタルの部分をしっかり締め直し、ブレずに去年のチームを超えていくだけです。」

■攻守にわたって前に出た・FL松永浩平(4年)


「今日は素直に筑波大学さんの良さが出たということで、自分たちは来週から始まる選手権に向けてもう一度やるべきことをやっていくだけです。特に大切なのはコミュニケーション。今日もインサイドの選手が外の選手にしっかりと伝えるといったような連携が、もっと必要だったと思います。また、タックルももっともっと前に出て、ドライブするということを考えてやらないといけないと思いました。大学選手権に向けて今日のゲームをプラスに捉えて、しっかり反省して、そして一戦一戦成長していって、最後に全員で笑います。今日のゲームを謙虚に受け止め、前向きに努力していきます。」

■再三のチャンスメイクを演出した・CTB中村亮土(3年)


「結果的には点差が離れて負けてしまいましたが、こういう厳しいゲームを経験できたことは、これからさらに厳しい戦いに向かっていく上でいい収穫になったと思います。厳しさという部分をさらに自分たちが磨いていかなければという気持ちになりましたし、この結果を真摯に受け止めつつもプラスに捉えて、今まで同様、そしてそれ以上に努力していきたいと思います。」

■途中出場も好タックル連発でピンチを防いだ・CTB荒井基植(4年)


「今日はリザーブとして、短い時間で自分の力を出し切ろうと思って臨みました。この厳しいゲームを経験して、自分たちの思ったプレーができないときでも、より気持ちを高くして戦わなくてはいけないことをより実感できたのは、今後に向けてとてもプラスになります。気持ちの面も含めて、常に全力でプレーし続けるいいきっかけにして、これからの大学選手権に向けて、頑張っていきます」



《PICK UP PLAYERS!》

敗戦の中にも、常に集中力を維持した
WTB 小野寛智(4年生)
ONO HIROTOMO


1990年12月18日生まれ
経済学部経済学科
東福岡高校出身
身長175㎝/体重82㎏

■今日のゲームにはどのような気持ちで臨んだのでしょうか。
「自分たちのラグビーをしようということと、結果だけにこだわるのではなく、しっかりと中身、プロセスを大事にしようと言って臨みました。」

■ゲーム全体を総括して、いかがですか。
「最後まで集中を切らさないところや激しさの部分、自分たちにそういうところが一歩足りずに、このような結果になってしまったと思います。けっして油断したわけではありませんが、厳しいゲームを通して、自分たちに心の甘さがあったことがわかりました。自分たちはまだまだ成長途中なので、いい準備をして、いい集中力を発揮していきたいです。」

■リードされている場面、バイスキャプテンとしてみんなにどんな声を掛けたのでしょうか。
「前半は風下でしたから、ここをしっかり我慢できれば、風上になった後半には自分たちのラグビーができると思っていたので、『しっかり我慢してゲームを運んでいこう』と声を掛けました。トライを取られたシーンでは、基本プレーのコミュニケーションの部分や、『しっかりと前を見ることを徹底しよう』と言っていました。やはり、自分はバイスキャプテンとして、苦しい場面でどれだけみんなを鼓舞できるかを考えてプレーしています。」

■スタンドの応援の声はどう感じましたか。
「劣勢が続く中でもあきらめずに最後まで応援してくださったファンの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。今日もみなさんの応援が最後まで僕たちに力をくれました。僕たちも、どんな試合でも最後まであきらめないで戦っています。これからも最後まであきらめない姿勢を貫いて戦っていきますので、今後も変わらぬ応援をお願いいします。」

■では、大学選手権に向けて意気込みを聞かせてください。
「必ず、大学日本一になります!。4連覇ということよりも、とにかく自分たちの代で日本一になるために、これからの時間を大切にして、いい反省、いい準備をして、大学選手権に臨みたいと思います。うちはたった1回の敗戦でブレるチームでないことは、自分たちが一番よくわかっています。一段一段、全員で謙虚に階段を上っていくだけです」

ディフェンスに、攻撃に、キックチェイスに、そしてバイスキャプテンとしてチームの士気を高める役割も常に意識し、プレーに没頭している。プレーの激しさとは違い、普段は淡々としたしゃべりで冷静に試合を振り返る。がむしゃらに行く激しさと、状況判断をする冷静さを併せ持つ貴重な存在だ。大学選手権でもいいバランスを保って、自身のプレー、そしてチームの鼓舞にと活躍してくれるはずだ。

 

《NEXT MATCH!》

大学選手権セカンドステージ第1戦 対拓殖大学(http://www.takushoku-rugby.com
12月9日(日)秩父宮ラグビー場 12時キックオフ

[拓殖大学の直近5戦]
10月7日 ●12-28 東海大学(関東大学リーグ戦)
10月23日 ●37-38 日本大学(関東大学リーグ戦)
10月28日 ●14-23 流通経済大学(関東大学リーグ戦)
11月17日 ○21-3 法政大学(関東大学リーグ戦)
11月25日 ○19-12 中央大学(関東大学リーグ戦)




(文・木村俊太/写真・川本聖哉)

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