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関東大学対抗戦・第6戦

関東大学対抗戦・第6戦

2010/11/21

原点回帰。新たな明日に向かって…

11月21日(日)・秩父宮ラグビー場
●帝京大学14対20明治大学○
〔通算成績4勝2敗〕

《出場メンバー》
① 吉田(康)⇒小幡 ②森(太) ③坪井⇒西村 ④マニング⇒李 ⑤ボンド ⑥菅原⇒木下 ⑦吉田(光) ⑧柴田 ⑨滑川 ⑩中村(亮)⇒橋口 ⑪富永 ⑫南橋 ⑬森田 ⑭菅谷 ⑮竹田(宜)

帝京の対抗戦・第6戦の相手はここまで全勝で息揚がる明治大学。強力FWで鳴らす相手だが、帝京としてはまずは自分たちのラグビーをまっとうしたいところ。前回・早稲田戦の敗戦をどこまで糧にできるかにも注目が集まった。

【前半戦】
FWの主力・FLツイに代わってLOマニング、またWTBには菅谷の2年生2人が今季初先発とありチームを活気づける新風を吹き込めるか。時折小雨のぱらつくコンディションながら数多くの観客が詰めかける中、いよいよキックオフとなった。

帝京はキックオフ直後、キックミスからピンチを招くが堅い守りでしのぐと、その後はお互い力と力のぶつかり合いが続く。7分にはWTB富永の突破からチャンスをつくり、敵陣深く攻め込む。だが、ハンドリングミスもあって、得点には結びつかない。

関東大学対抗戦・第6戦

その後も帝京は敵陣深く攻め込むものの、相手の鋭い出足に思うように前に出られず、我慢くらべの連続となる。押し気味の試合展開も、あと一歩攻め切れずじりじりとした時間帯が続く。スクラム・モール・ラインアウト、すべての局面でほぼ互角の展開を見せる両チーム。
帝京はこの日はFLに入った菅原、1年生SO中村(亮)の突破などもあり、攻める時間帯を増やし始める。しかし、流れを自分たちのものにしきれない。
結局、前半は0-10で折り返すこととなった。

関東大学対抗戦・第6戦

【後半戦】
前半はゲームの流れを掴みきれなかった帝京だが、相手FWに一歩も引けを取らない帝京としては、落ち着いて少しずつでも自分たちのペースに持ち込みたいところ。当然のことながら、自分たちのやってきたことを出し切れるかどうかがカギになる。

後半も動き始めた5分。帝京は敵陣深く攻め込みマイボールのスクラムとなる。相手SHのプレッシャーにあいながらも、NO8柴田がSH滑川につなぐと、スクラムサイドに相手ディフェンスの穴ができる。滑川はそれを見逃さず、自ら持ち込んでこの試合初めてのトライを奪う(ゴールも成功で7-10)。

関東大学対抗戦・第6戦

これで流れを取り戻せる。そう思った直後にゲームの行方を左右するプレーが起こる。キックのボールを切り返され、展開されるが、ディフェンスラインの鋭い出足で防ぐ帝京。相手のパスミスを誘い、ボールがこぼれた。ノックオン……に見えたその瞬間、帝京フィフティーンの足が止まった。しかし、ノーホイッスル。ボールは明治の選手が拾い、そのままつながれてインゴールまで持ち込まれてしまう(7-17)。

だが、ここで気持ちを切らすわけにはいかない。FWでの勝負を挑み、じりじりと前へ。ただ、モールを押せたことでかえって判断を乱したか。ゴール前、絶好の位置で反則を得るが、ゴールを狙わずにタッチからのラインアウト・モールで勝負に出る。が、しかし押し切れない。

相手ペナルティで再度チャンスを得るが、FWが孤立してしまい、インターセプト。大きなチャンスを取り切れずに地域を戻されてしまう。しかし、FWの誇りはまだまだ生きていた。
PGを決められた直後の33分、しっかりと着実にラインアウト・モールを押し切り、FL吉田(光)がトライ。途中からSOに移った森田が難しい角度からのゴールを決め、14-20まで詰め寄る。その後、CTB南橋の突破などで攻め込むものの、あと一歩及ばず14-20でノーサイド。

関東大学対抗戦・第6戦

死力を尽くして戦った帝京フィフティーン。しかしながら、明治の重く強いプレッシャーの中とはいえ、自分たちの準備したプレーがやや消化不良に終わった感も否めない。
だが、まだ航海は半ばに差し掛かったばかり。明日に向かってさらなるチャレンジをし続ける選手たちから目を逸らさずに、“共に戦って”いきたい。

《試合後のコメント》
□岩出雅之監督

「まずは明治大学さんのすばらしいプレーに敬意を表したいと思います。よく走り、鋭いタックルをする、そういうひたむきなプレーをわれわれも勉強させてもらいました。最後までわからないクロスゲームができただけに、われわれとしてはもう少し“積み上げる”ということがしっかりできていればという思いがあります。
今日はあえて厳しいことを言いますが、試合運びの判断・選択を読む力が必要なのではと感じました。また、FW陣もちょっと熱くなっていたのか、ゴール前のモールの作り直しなど、練習でやった形ができていませんでした。モールから出したボールを一人で持ち込むと
いう練習もしていませんから、必然的に孤立してしまいました。そういう意味では、自分たちのやろうとしていたことができずに終わってしまいました。
この経験をいい経験にできるかどうかはこれからの練習にかかっています。学生は落ち込むと思いますが、まずは大いに落ち込んで、そのあと、心に火が着くぐらいの厳しさをもって、もう一度気を引き締めて、これからの練習、そして試合に臨んでほしいと思います」

□キャプテン・FL 吉田光治郎(4年生)

関東大学対抗戦・第6戦

「今日は練習でやってきたことを出し切ろうと臨んだのですが、出せずに終わってしまったことが残念です。ゴール前でPGを狙わず、ラインアウト・モールにこだわったのは取り切れる自信があったからなのですが、あそこは3点ずつ返していくことで相手にプレッシャーをかけたほうがよかったと反省しています。
ただ、接点では負けていませんでしたし、ターンオーバーも何度かあったり、前に出られていた点は今後の自信になると思います。次の試合では自分たちの形をしっかり出して勝ちたいと思います」

□身を粉にしてタックルに奔走した・PR 坪井秀龍(4年生)
「明治のFWは思った以上に重かったです。スクラムのヒットの仕方も後半の途中からは修正できたのですが、“低く速く”の部分がもっと早く修正できていればよかったです。熱くなりすぎて、モールなど練習でやってきたことがやりきれなかったのですが、ブレイクダウンの部分はよかったところも多かったので、次もここをしっかりとやっていきたいです」

□プレッシャーの中FWを引っ張った・HO 森太志(4年生)

関東大学対抗戦・第6戦

「悔しいです。FWがゴール前で取り切れませんでした。意識の統一が不十分で、練習したことがうまく出せずに終わったのは、まだまだプレーが体に染み込んでいなかったからだと思います。次戦はFWでプレッシャーをかけて、ラック、ブレイクダウンのところでしっかり勝ちたいです」

□今季初先発で存在感をアピール・LO マニング(2年生)
「タフなゲームで強いプレッシャーを受けましたが、自分としてはそんなタフなゲームを楽しんでプレーすることを心掛け、それができたと思います。今日はミスが多かったので、次に出るときはミスを減らし、フィジカルコンタクトをもっと強化して臨みたいと思います」

□慣れないポジションもしっかりとこなした・FL 菅原貴広(4年生)

関東大学対抗戦・第6戦

「明治のプレッシャーはたしかに強かったですが、FWとしては負けていたとは思いません。こだわるところで逃げてしまったり、取り切れなかった部分があったのは残念です。モールを組めているのにボールを出してしまったりしていたので、もっとこだわって点を取っていければ、勝てていた試合だと思います。次の慶応戦に向けて、2週間、きちんと修正していきたいです」

□広い視野でトライを奪取した・SH 滑川剛人(3年生)

関東大学対抗戦・第6戦

「トライのシーンは相手のディフェンスがあいていたのが見えたので、そこへ走りました。ただ、今日は自分のプレーにミスが多くて、みんなに迷惑をかけてしまい申し訳ないです。ディフェンス面は気持ちの問題が大きいと思います。
次戦は、FWは接点で気持ちで負けないこと、BKは冷静にゲームを作っていくこと、自分はその間に立ってしっかりとした判断でつないでいくことが大事になると思います」

□SOとしても冷静にコントロール・CTB 森田佳寿(3年生)
「ミスも多く、練習してきた自分たちの形が出せませんでした。自分がSOに入ったときは、まだまだ時間があったので、あせらずエリアを取って敵陣に行くことと、ラインをうまくコントロールして南橋へいいパスを出すことを心掛けました。
接点では負けていませんでしたから、バインドの甘さなどを修正していけば今後へ向けてもっともっと成長していけると思います」

□相手FWにしっかり対応した・PR 西村尚記(3年生)

関東大学対抗戦・第6戦

「途中出場で、すでに盛り上がっている雰囲気の中にいきなり入っていくのが難しかったのですが、なんとか気持ちを高めて入ることができました。明治のスクラムは重かったですが、負けているとは思いませんでした。ゴール前でしっかり取り切るべきところで取れていれば、もっと違った展開になっていたと思います」

□途中出場で流れを変えた・CTB 橋口功(3年生)
「途中出場でしたが、出るときにはチームに勢いをつけようと思って出て行きました。試合の雰囲気は気にせず、やってきたことを思いっ切り出し切ろうと思っていました。チームを盛り上げることが自分が出たときの役割だと思っています。ある程度できたと思いますがミスもあったので、次戦では今日の課題を修正して、チーム力で勝ちたいと思います」


《PICK UP PLAYERS》

快足と果敢なキックチェイスでBKに新風を巻き起こす
WTB 菅谷優


関東大学対抗戦・第6戦

SUGAYA MASARU
1990年5月21日生まれ
経済学部経済学科
柏日体高校出身
身長172cm/体重73㎏/血液型O型
ニックネーム/まさる、得意なプレー/ラン、試合前に聴く音楽/EXILE、郷土自慢/西新井大師がある(東京都)

■今日の試合の感想から聞かせてください。
「チャンスがあったのに取り切れなくて悔しいです。また自分がいいパスを出してつながっていればトライが取れていたと思います」

■ディフェンス面はどうでしたか。
「抜かれたシーンもなかったですし、思っていた以上にできたと思います」

■キックチェイスも何度も行っていました。
「自分の持ち味は足なので、とにかく思い切り走ろうと思っていました」

■足の速さはチームでもトップクラスですね。
「50mのタイムは伊藤拓巳さんに次いで2番でした。中学時代は陸上部で200m走では区で3位に入ったことがあります」

■ラックにも積極的に飛び込んでいました。
「人数が足りなそうだったので必死で入りました」

■帝京大学に入ろうと思ったきっかけは?
「岩出監督に声をかけていただいて。練習を見に行ったら雰囲気がよくて、ここなら自分もうまくなれるのではないかと思いました。実際、体重も増えて体も大きくなって、スキルも身についたと思います。1対1で取り切る力も増してきたと思います。最初は知っている人が一人もいなかったのでちょっと怖かったのですが、いい先輩方ばかりですぐに溶け込むことができました」

■オフのときはどんな過ごし方をしているのでしょうか。
「実家が都内なので、実家でリフレッシュすることが多いです。車が好きで、雑誌とかカタログを見ながら、『こんな車がほしいなあ』なんて空想することも多いです」

■最後に自分のこんなプレーをみてほしいというところを教えてください。
「足の速さが武器なので、そこを見てほしいと思います。WTBとしてはボールをもらったからにはトライを取り切るという意識でやっていますが、取り切れる強さをもっと高めて、いいプレーができるように頑張ります」

岩出監督も惚れ込んだ、チーム1、2を争う俊足の持ち主。チームの得点力強化を担う期待のスプリンターだ。体も大きくなり、ディフェンス力もアップ。今後の成長次第では、帝京ラグビーのイメージを変えるほどの存在にもなりうる頼もしい逸材だ。


《NEXT MATCH PREVIEW》

【12月4日(土) 関東大学対抗戦第7戦 VS慶應義塾大学 秩父宮ラグビー場14時キックオフ】
次戦は対抗戦最終戦、慶應義塾大学との対戦。連敗を喫してしまった今、絶対に負けられない試合ではあるが、昨年度もそうだったようにこの慶應戦からチームの上昇カーブを描く起点としたい。自らの原点に立ち返り、タックルで相手の気勢を削ぐプレーを期待したい。

(写真/志賀由佳)

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