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2013関東大学対抗戦A・第2戦 青山学院大学戦

2013関東大学対抗戦A・第2戦 青山学院大学戦

2013/09/25

「2013関東大学対抗戦A・第2戦 対青山学院大学戦」
 
9月23日(月・祝)・新潟市陸上競技場
○帝京大学(2勝0敗)59-7青山学院大学●(0勝2敗)

《帝京大学》
[FW]
(1)竹井⇒川満(2)森川⇒上田(3)東恩納⇒深村(4)飯野⇒大和田(5)町野⇒金(嶺)(6)イラウア(7)杉永(8)李
[BK]
(9)流⇒荒井(10)中村(11)磯田(12)野田⇒牧田(13)権(14)森谷⇒前原(15)竹田
 
《青山学院大学》※先発のみ
[FW]
(1)在原(2)林(3)梅田(4)濱(5)佐竹(6)吉川(7)坪内(8)永岡
[BK]
(9)高橋(10)岩満(11)宮城(12)谷山(13)足立(14)越智(15)高野

【前半】【得点経過】
【9分】帝7-0青
ラインアウトからのこぼれ球をキックで前方へ。No8李が追いかけ、インゴールで押 さえてトライ。ゴール成功。
 
【10分】帝14-0青
キックオフのボールをBKへ展開。WTB磯田へと渡り、磯田が抜け出してトライ。
ゴール成功。
 
【23分】帝21-0青
相手ボール・スクラムを押し込んでFLイラウアがターンオーバー。そのまま前進 し、トライ。ゴール成功。
 
【37分】帝28-0青
ゴール前5mスクラム。押し込んで、No8李が押さえてトライ。ゴール成功。
 

 【後半】【得点経過】
【5分】帝35-0青
FLイラウアが前進。その後もFWでつないで、最後はLO飯野が飛び込んでトライ。ゴール成功。
 
【18分】帝35-7青
帝京のBK展開のボールを相手がパス・インターセプト。そのまま走られ、トライを奪われる。
 
【24分】帝40-7青
スクラムからのボールを継続。HO森川が相手ディフェンスをかわしながら、30m以上走り切ってトライ。
 
【27分】帝47-7青
センター・スクラムからBKへ。CTB野田が相手ディフェンスとのギャップをついて抜け出し、走り切ってトライ。ゴール成功。
 
【29分】帝52-7青
No8大和田が前進。ラックになるも、BKへ展開。CTB野田が前進し、WTB森谷へとつなぐ。森谷が相手ディフェンスをかわし、抜け出してトライ。
 
【33分】帝59-7青
ラインアウトからFW、BKで連続攻撃。最後はLOに回った李が前進して、飛び込んでトライ。ゴール成功。
 
 

《  BRIEF REVIEW  》

対抗戦第2戦は、強風吹き荒れる新潟の地で行われた。相手はここ数年、力を付けてきている青山学院大学。開始直後から帝京が攻め続けるが、強風に加え、相手の徹底して前に出るシャロー・ディフェンスと接点に人数を掛けてくる守りで、なかなか自分たちのペースに持ち込めない。しかしながら、帝京はすべての局面で冷静に対応。
結局前半は、28-0で折り返す。
後半18分には、パス・インターセプトからトライを奪われるが、ここからようやくエンジンがかかる。HO森川、CTB野田の突破など、FW、BKとも、倒れずに前に出る意識が戻り、得点を重ねる。1年生LO金ら、途中出場の選手たちも激しさを見せ、59-7で開幕2連勝を飾った。

      
《  AFTER MATCH SAY  》
 
■岩出雅之監督
「まずは、観戦に来てくださった新潟のラグビーファンの皆様、また遠方から新潟へと足を運んでくださった皆様、新潟県ラグビーフットボール協会ならびに運営に携わられた関係者の皆様、そして最後まで気迫あふれるプレーで戦ってくださった青山学院大学の選手、関係者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。
今日は、青山学院大学さんが一生懸命にディフェンスされていたこともあって、我々が意図していたことがうまく機能しない時間帯がありました。学生たちにとっては、ストレスの溜まるゲームだったようです。しかし、この時期にこのようなゲームを経験できたことは、今後の成長に向けて非常に意味のあることだったと捉えています。チームはここまで比較的順調に来ていますが、それは同時に、我慢強さとか、タフさを高めるための経験が少なかったことも意味します。それは順調さの怖さとも言えますが、ここである意味ストレスの溜まるゲームを経験し、我慢強さ、タフさを学ばせていただいたことで、また一歩、チームは大きく成長できたのではないかと思います。
学生たちは、成功しても、うまくいかなくても成長します。大事なのは、経験したことをどう捉えるかです。今日はあえて、自分たちが甘かった部分を軽く見ず、『甘かった』としっかりと反省して、今後に生かしていってほしいと思います。」

 
■キャプテン・SO中村亮土(4年)
「今日は『意思と意図』、そしてそれを実行するというテーマで、狙いをしっかり明確にしてプレーすることを意識してやりました。また、多くの新潟の人たちにラグビーを好きになってもらえるような、そして帝京大学ラグビー部を好きになってもらえるようなゲームをしようと言って臨みました。ですが、近年、ラグビーにたいへん力を入れておられる青山学院大学さんのすばやいアタックと厳しいシャロー・ディフェンスもあり、自分たちの思うようなラグビーができず、最後まで修正することができませんでした。自分たちのミスでテンポが作れず、ずるずると行ってしまいました。 この経験は財産にして、今後は全員が、簡単なミスをしないような集中力を発揮すること、ここが大事というゲームの中のポイントを押さえてやること、そして80分間の中ではいろいろなことが起こるので、そこをリーダー陣がしっかり明確にして、他の選手たちがのびのびプレーできるような判断をしていくことが大事だと思っています。」
 
■急遽決まった遠征にも動じず、存在感をアピール・PR川満大二朗(4年)
「自分が出たらその流れを変えられるようなプレーをしようと思っていました。後半の中頃から、みんなガツガツ行けるようになったのですが、これを前半の入りからできるようにするというのが、これからの課題だと感じました。相手の出足が速かったこともあって、相手を見過ぎて、自分たちのやるべきことに集中できなかっ たのだと思います。新潟行きは、昨日、急遽決まったのですが、いつでも行ける心の準備はしていたので、特に緊張もせず臨めました。スクラムに関しては、8人のかたまりという部分がまだまだ足りないので、そこはこれから練習に取り組んで、まとまりと低い姿勢という意識を高めていきたいと思います。」
 
■再三の突破でBK陣を牽引・CTB野田滉貴(4年)
「今日は、春、夏と自分たちがやってきたことを出して行こうと言って臨みました。いいところも悪いところも出ましたが、今後に生かしていけるという意味では良かったと思います。今後はプレー面の前に、そのゲームに対する自分たちの気持ちの作り方だったり、普段からの練習にどういった気持ちで取り組んでいくかといったところを考えるいい機会になったと思います。」
 
《  PICK UP PLAYERS  》
 
自他ともに認める勝気な性格でチームに激しさを呼び込む
LO 金嶺志(1年)
Kim Ryong Ji
1994年8月24日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
東京朝鮮高級学校出身
身長190㎝/体重99㎏
 
■公式戦初出場でしたが、今の気持ちを教えてください。
「素直に、『うれしい』の一言です。」
 
■今日のゲームの感想を聞かせてください。
「自分が出たときには『1年生だから』といったような受け身の姿勢ではダメなので、積極的に行こうと思っていました。出場時間は短かったのですが、その中で自分としてやるべきことはしっかり頑張れたのではないかと思っています。Aチームはスピードも、パワーも違いましたが、こういういい経験をさせていただいて、その中で積極的にできたのはよかったと思います。」
 
■今日はどんなところを認められてメンバーに選ばれたと考えていますか。
「自分では、どんな相手でも恐れず、前に出るところ、激しさの部分じゃないかと思っています。」
 
■自身の一番の強みはどこでしょうか。
「負けず嫌いなところだと思います。」
 
■プレーでここを注目してほしいというところはどこでしょうか。
「空中戦とブレイクダウンです。」
 
■高校時代と大学に入ってからとで、どこか変わったところはありますか。
「一番変わったのは、試合に積極的に臨めるようになったことだと思います。」
 
■今後への意気込みをお願いします。
「いま、Aチームとしてやらせていただいていますが、シーズンはまだまだ続くので、しっかり練習して、自分の弱みを克服し、強みを強化して、チームに貢献できるように活躍したいです。」
 
1年生離れした「激しさ」が特徴のLO。この日の試合は、短時間の出場ながら、自身の強みをアピールし、手応えをつかんだ。本人も「負けず嫌いなところが一番の強み」と語るように、気持ちの部分を前面に出して戦う姿勢はチーム全体を鼓舞し、ゲームの流れを変えうる力を持っている。岩出監督も「まだまだ未知数ながら、可能性は十分。一見、おとなしそうに見えて、実はものすごく『勝気』なところがいいですね。今後の成長に期待しています。」と語る。また、激しさだけではなく、質問に対してじっくり考えてから丁寧に答えるあたりは、クレバーさも感じさせてくれる。今後の成長次第では、チームになくてはならない存在となるかもしれない。

《  COLUMN  》
 
――本当のポジティブ思考とは――
 
今日のゲームは、相手の青山学院大学が、浅いディフェンスラインから捨て身で前に出てくるディフェンス、そして接点に人数をかけて止めるという徹底した守りを見せました。帝京としては、パスのボールが揺れるほどの強風もあり、圧倒的な攻撃機会を得ながらも、思うように加点することができない時間帯が続きました。
 
選手たちは「こんなはずではないのに」というストレスをずっと感じながらのゲームだったと言います。ですが、同時に「この時期にこうした試合を経験できてよかった」という声も聞かれました。チームにとっては、これもまた成長の糧となるはずです。この「うまくいかなかった」という経験も、捉え方次第でいい方向に向けることができるからです。
 
「捉え方次第」というと、いわゆる「ポジティブ思考」を思い浮かべる方も多いことでしょう。どんな現象も、見方、捉え方によってプラスに思えたり、マイナスに思えたりするのだから、できる限りプラスの面を見るようにした方がいいという考え方です。
 
有名なたとえ話があります。
 
のどが渇いた2人の人がそれぞれ自分の水筒を覗き込むと、どちらの水筒にも水が半分入っていました。1人は「ああ、もう半分しか残っていない」とがっかりしました。もう1人は「よかった。まだ半分も残っている」と喜びました。前者はネガティブ思考の持ち主で、後者はポジティブ思考の持ち主というわけです。
 
また、ポジティブ思考には、「失敗を引きずらない」「よくないことを重く考えてくよくよするよりも、未来に起こるであろういい出来事のことを考えた方がうまくいく」といった考え方があります。
 
帝京大学ラグビー部も、基本的にはこのポジティブ思考を大切にしています。同じ物事でも、見方、捉え方によって変わってくるのだから、より成長できる捉え方で捉えようというものです。
 
ただし、何でもかんでもプラスの方向に考えればいいというわけではありません。失敗をさっさと忘れて、未来に向けて切り変えていくことも、必ずしも常にいいことだとは言えません。一つ間違えると、せっかくのいい反省材料を活用できずに先へ進んでしまいかねないからです。
 
結果が最優先される決勝戦のゲーム中のような場面では、「ミスを引きずらないで、切り替えていこう」という発想は非常に有意義です。しかし、成長途上の段階で「ミスを引きずらないで、切り替えていこう」と言ってしまうと、かえってマイナスに作用してしまうことになります。
 
試合後、岩出監督はこうおっしゃいました。
 
「この試合は、前向きに考えないこと自体が、より前向きに考えることにつながると思います。今日のゲームを軽く考えず、うまくいかなかったことに対してちょっとぐらいイライラした方がいいのではないでしょうか。その方が、むしろ成長できると思います。」
 
あえて前向きに考えず、むしろ深刻に捉えることによって、本当の反省点が見えて、今後、同じ失敗を繰り返さないようになる。岩出監督はそう考えているわけです。
 
現象に対する表面的なポジティブさをあえて捨てて、思い切り反省して、改善点とその対策を明確にし、実行する。いまの帝京大学ラグビー部は、同じ「ポジティブ思考」でも、より深い領域にまで達することができています。彼らにとってはすべての経験が血となり肉となります。
 
《  NEXT MATCH  》
 
関東大学対抗戦A・第3戦
対日本体育大学戦(http://nittairfc.d2.r-cms.jp/
10月6日(日) 上柚木公園陸上競技場
14時キックオフ
過去の対戦成績:関東大学対抗戦35試合17勝18敗(全国大学選手権での対戦はなし)
[日本体育大学の直近5戦]
6月16日 ●13-53慶應義塾大学(関東大学春季大会B)
6月23日 ●26-103法政大学(関東大学春季大会B)
8月18日 ○67-17名城大学(練習試合)
8月22日 ●7-142拓殖大学(練習試合)
9月15日 ●0-69早稲田大学(関東大学対抗戦A)

(文・写真/木村俊太)

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