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2013関東大学対抗戦A・第7戦 慶應義塾大学戦

2013関東大学対抗戦A・第7戦 慶應義塾大学戦

2013/12/02

「2013関東大学対抗戦A・第7戦 対慶應義塾大学戦」
 
12月1日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学(7勝0敗)75-0慶應義塾大学●(4勝3敗)

《帝京大学》
[FW]
(1)森川⇒竹井(勝)(2)坂手⇒竹井(勇)(3)東恩納⇒浅堀(4)小瀧⇒金(5)町野(6)イラウア(7)杉永⇒大和田(8)李
[BK]
(9)流⇒塚本(10)中村⇒朴(11)磯田⇒大橋(12)牧田(13)野田(14)松田(15)森谷
 
《慶應義塾大学》※先発のみ
[FW]
(1)青木(2)中尾(3)秋田(4)小山田(5)川原(6)濱田(7)古岡(8)森川
[BK]
(9)渡辺(10)慶田(11)中村(12)石橋(13)大石(14)関東(15)下川

【前半】【得点経過】
【5分】帝7-0慶
マイボール・ラインアウトからFWで前進し、BKへ。ラックからSH流-CTB牧田-WTB松田と渡り、松田がトライ。ゴール成功。
 
【15分】帝10-0慶
ゴール前でペナルティをもらい、SO中村がPGを決める。
 
【17分】帝15-0慶
FL杉永が縦に前進。つかまるも、FWでさらに前進。ラックからSH流-SO中村-CTB牧田-WTB松田と渡り、走り切ってトライ。
 
【21分】帝22-0慶
マイボール・ラインアウトから展開。SH流-CTB牧田-SO中村-WTB松田-FB森谷と渡り、森谷が前方へゴロキック。WTB磯田がキャッチし、走り切ってトライ。ゴール成功。
 
【25分】帝25-0慶
相手のペナルティから、SO中村がPGを決める。
 
【29分】帝32-0慶
ラックからのボールをSH流が、後ろから走り込んできたFL杉永へとパス。杉永が抜け出し、そのまま走り切ってトライ。ゴール成功。
 

 【後半】【得点経過】
【1分】帝39-0慶
ラックからSH流-SO中村と渡り、中村が仕掛けて抜け出す。サポートしていたFLイラウアへとパスが渡り、イラウアが走り切ってトライ。ゴール成功。
 
【4分】帝46-0慶
マイボール・スクラムから展開。SH流-SO中村-CTB牧田-WTB磯田と渡り、磯田が走り切ってトライ。ゴール成功。
 
【9分】帝51-0慶
FWで前進。ラックからSH流-SO中村へ。ディフェンスが近かったため、中村からWTB磯田へとタップパス。磯田が抜け出してトライ。
 
【17分】帝58-0慶
相手のペナルティからSH塚本がクイック・リスタート。前進し、塚本-PR森川-LO小瀧と渡って、小瀧がトライ。ゴール成功。
 
【24分】帝63-0慶
ラックからSH塚本-SO中村-CTB牧田と渡り、牧田が前進。WTB磯田へとパスが渡り、磯田が抜け出し、トライ。
 
【29分】帝70-0慶
HO竹井(勇)のタックルでこぼれたボールをFL杉永が拾って、大きく前進。ラックになるも、SH塚本-SO中村-CTB牧田と渡り、牧田が抜け出してトライ。ゴール成功。
 
【42分】帝75-0慶
マイボール・スクラムからNo8李-SH塚本-SO朴と渡り、朴が前進。ラックからPR竹井(勝)がさらに前進。再びラックになるも、HO竹井(勇)からPR浅堀へとパス。浅堀がディフェンスを引きずりながらトライ。
 

《  BRIEF REVIEW  》

対抗戦の最終戦の相手は慶應義塾大学。「試合開始から80分間、集中して、厳しさを出し続けよう」と言って臨んだ一戦は、その言葉どおり、終始帝京がゲームを支配。FW、BKをバランスよく使い、攻守ともに圧倒した。FW陣はアタックの意識を強く持ち、特にFL杉永は何度も縦への突破を試み、前進。また、そのFW陣は重なるフェイズにもしっかりとポイントへと走り、組織で攻めていく。BKではFB森谷はハイパント処理で、相手の猛チャージにもひるまず、好キャッチを連発。タッチ際のキックを冷静にダイレクトタッチにするなど、激しさと冷静さの両面を発揮した。CTB牧田も、常に相手と当たる起点になり、体を張って前に出た。途中出場の選手たちも活躍。対抗戦初出場のSH塚本も、相手のペナルティからクイック・リスタートを見せ、トライにつなげるなど冷静にプレー。HO竹井(勇)、LO 金ら1年生も激しいタックルを見せた。結局75-0でノーサイドとなり、帝京は対抗戦の全勝優勝を決めた。
      
《  AFTER MATCH SAY  》
 
■岩出雅之監督
「今日は『気持ちを入れて、激しくいこう』『前後半とも集中を切らさないゲームをしよう』と言って送り出しました。細かいミスはあったと思いますが、これまでに比べ ると少し進歩の見られたゲームだったのではないかと思います。欲張りのようですが、ここを新たなスタートラインとして、大 学選手権ではさらにぐっと伸びていけるように頑張ってほしいと思います。これからは、セットプレーの安定とともに、激しさ、力強さの部分が重要になってきます。大学選手権では『安 定性』と『すごみ』の両方を出せるように努力していきます。対 抗戦で全勝優勝することができましたが、いつも考えていることは、学生たちが成長してくれることが一番だということです。昨年は最後のゲームで敗れ、負 けた悔しさからエネルギーをもらって成長することがで きました。今年は、全勝優勝できたという喜びからエネルギーをもらって、さらなる成長をしてほしいと思っています。対 抗戦一試合一試合を経て成長させてもらい、その結果として全勝優勝することができたことはとてもうれしく思いますが、ここで終わりではないので、この先にあるさらなる目標に向かって、学 生たちが成長し、もっと大きな喜びに向かって行けるように、このエネルギーを次に向けていくための指導をしていきます。最後になりましたが、ご 観戦くださったみなさま、ありがとうございました。大学選手権でも引き続き、ご支援、ご声援をお願いいたします。」
 
■キャプテン・中村亮土(4年)
「これまではよくない時間帯、反省すべき時間帯があったので、今日のゲームはスタートから80分間、集中力を保ってやっていこうと言って臨みました。それを選手たち全員が理解した上でプレーした結果、こういうスコアになったのだと思います。これをスタートにして、いいエネルギーに変えて、今後の大学選手権に向かっていきたいと思います。ゲームの組み立てとしては、FW、BKのバランスということを意識しました。ゲインできそうな場面でもあえてキックを使ったところもあったのですが、80分間全体を考えて、エリアを取るべきところは取るという選択をしました。対抗戦は全勝優勝することができましたが、自分たちの今後の行動、今後の成長が、その価値をさらに高めてくれると思うので、油断せず、この先の目標に向かって努力していきたいと思います。」
 
■高い意識と豊富な運動量で献身的に走り続けた・HO坂手淳史(2 年)
「今日は最後まで甘さを出さず、厳しいところで勝負し続けることができてよかったと思います。個人としては、自分としてやりたいプレーを出し切れなかったところもあったのですが、チーム全体が勢いに乗っていたので、自分も一緒に乗っていくことができました。ただ、セッ トプレーの部分はもっとしっかりやっていかないといけないと実感しています。もちろん、成長できている部分もあり、全 体としてよくなっているところもあるのですが、安 定感というところでまだまだなので、そこは自分がしっかりやっていかないと行けないと思っています。大 学選手権は全部戦ってもあと5戦。最後に国立競技場の決勝戦で全員が笑顔になれるように、もっともっと成長していきたいと思います。」
 
■全力で走り、渾身のタックルでピンチを防いだ・CTB 野田滉貴(4年)
「ここまでの試合では自分のイメージどおりのプレーがなかなかできていなかったので、今日は自分らしく、アグレッシブに、集中力を持って激しさを出していこうと思って臨みました。激しさの部分はけっこう出せたと思いますし、細かい修正点はありますが、収穫も多いゲームだったと思います。トライを防いだタックルのシーンは、こちらの人数がまったく足りない状況でしたが、振り返ると、心理的にはそこまでの不安はなく、隣とのコミュニケーションも取れていましたし、自信を持ってタックルまで行けました。その心理的な余裕のおかげでトライを阻止できたのだろうと思います。これから残り試合、まず4年生がどれだけまとまれるかでチームの雰囲気も変わると思うので、自分は試合に出ているものとしてしっかりリーダーシップを発揮して、チームがよりよい方向に向かっていけるように、日々、努力していきたいと思います。」
 
■対抗戦初出場ながら落ち着いたプレーで勝利に貢献・SH 塚本奨平(3年・ゲームMVP)
「対抗戦初出場という緊張や不安もかなりあったのですが、仲間にサポートしてもらって緊張もほぐれ、自分らしいプレーができました。特にボールを動かす、球さばきの部分で自分らしさを出せたとは思うのですが、緊張から前が見えていなかったところがあり、仕掛けの部分が出し切れなかったのは反省です。そこは修正して、しっかり前が見られるようにしたいです。大学選手権に向けての自分としての課題はディフェ ンスです。ボールを持っていないところで走れていないことが多いので、ラインの後ろでしっかりカバーしていけるように、日 頃の練習からディフェンス力を強化していきたいです。これからプレーしていく上で、自分が入ったときにチーム15人の力が落ちてしまわないように、自分が入ったらチーム力が上がるくらいになれるように努力していきたいと思います。」
 
《  PICK UP PLAYERS  》
 
フィールドプレーで活躍するも、スクラムのさらなる強化を誓う
PR  浅堀 航平(2年)
Asabori Kohei
1994年2月3日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
身長185cm/体重118kg
京都成章高校出身
 
■今日のゲームについての感想を聞かせてください。
「自分が求められているスクラムの部分で安定はできたのですが、相手ボールのスクラムを押し切れなかったところは自分としてはまだまだだと感じました。」
 
■スクラムでは、相手も警戒して素早い球出しをしていたことも、押し切るのが難しかった要因ではないでしょうか。
「たしかにそうかもしれませんが、それでも押し切れたと思いますし、押し切らなければ行けなかったと思っています。今まで練習してきたことが、自分としてはできていなかったということなので、そこはもっと成長していかなければいけないところだと思っています。」
 
■後半の最後にナイストライがありました。あそこは狙っていたのでしょうか。
「今日、初めて両親が観戦に来てくれて、なんとかいいところを見せたかったので、終了間際だったこともあり、ボールをもらいに行って思い切って前に出ました。ここでもらえれば行けると思いましたが、そのとおりになってよかったです。」
 
■今、自身が積極的に取り組んでいることはどんなことでしょうか。
「やはりスクラムですね。今日は安定ということではよかったのですが、チーム内で組んでいるときなどなかなか安定できないので、スクラムを安定させることを一番に考えてやっています。」
 
■今日、見せてくれたようなフィールドプレーはどうですか。
「アタックは今日のようにやっていきたいですが、ディフェンス面でタックルがまだまだなので、もっと回数を増やせるように頑張りたいです。」
 
■リザーブからの途中出場する際、気持ちの作り方で心掛けていることはありますか。
「それまで出ていた選手と替わったことでチームの雰囲気を落としてしまってはダメなので、自分が出たらチームを盛り上げようと思ってやっています。」
 
■大学選手権に向けて意気込みをお願いします。
「大学選手権は初めてなので、最後まで出続けて、チー ムに貢献したいです。どの大学が相手でも、スクラムを押し切れるように意識してやっていたいです。」
 
本人は期待されたスクラムを押し切れなかったと反省するが、それでも安定感は十分。フィールドプレーではパスを受けて前進し、トライを奪う活躍を見せた。相手ディフェンスを引きずりながら、体の強さでもぎ取ったトライ。今後はこうしたがむしゃらなプレーが、ゲー ムを左右する大きなポイントになってくるはず。加えて、自身が取り組んでいるスクラムにさらに磨きがかかったとき、大学選手権での大きな戦力となっていることだろう。


《  COLUMN  》
 
――本当の4年力――
 
この時期になると毎年のように「4年力」という話題が出てきます。この特集記事でも、5月に「4年力」というタイトルでコラムを書きました(「第42回京都ラグビー祭対同志社大学戦」)。
 
実際、大学選手権に向けて4年生が一つにまとまって、これまで以上にチームを引っ張っていこうという空気が高まっています。
 
もちろん、これまでも4年生の力はけっして小さくありませんでした。
 
この日、いい動きを見せたFB森谷が「FB の動きは4年生の竹田さんから練習中にも『ここはこうした方がいい』とアドバイスをしてもらっています。そのおかげで、今日のようないいプレーができました」と語るなど、練習での役割も大きなものがあります。どちらかというと言葉数の多い方ではない竹田ですが、4年生としてやるべきことをきちんと自覚しているので、少ない言葉でも的確なアドバイスができるのです。
 
4年生の口からよく出てくる言葉に「中村や李といったリーダー陣にだけ頼るのではなく、4年生として自分もリーダーシップを発揮して、チームを引っ張りたい」というものがあります。この日、出場した牧田、野田、竹井(勝)、大和田、大橋らはみなそう語ります。
 
ただし、本当の4年力とは試合に出ている4年生たちだけでは発揮できません。 試合に出ない4年生の力こそが、チームを、下級生たちを奮い立たせるのです。
 
Aチームの練習相手となるのは、Bチーム以下の選手たちです。この練習相手となる選手たちが練習でいかに体を張るかで、Aチームの練習の質も違ってきます。ここで、Bチーム以下の4年生たちが率先して体を張る姿を見て、下級生たちは毎年、心を奮い立たされると言います。
 
練習だけではありません。練習メニューを考えて、実践する学生コーチたち、伊藤(哲)ら試合で給水を担当する人たち、上野、山下、藤田ら主務、副務といった細かな仕事をする人たち……本当は全員の名前を挙げたいところです。
 
4年力は普段の生活にも表れます。この日、CTB野田はこう言いました。
 
「グラウンドに行くと、高田と桐明が毎日必ず、駐車場など、周辺の掃除をしているんです。役割を決めているわけではないので、彼らが率先してやっているんです。」
 
もちろん、この2人だけではありませんが、そうした姿を見た下級生が何かを感じないわけがありません。
 
「これから4年会があるんです。」
 
試合後、ある4年生が笑顔で教えてくれました。この時期の4年会は帝京にとって恒例ともなっています。4年生全員が集まり、腹を割って話をし、今後の方向性についての意思統一を図ります。
 
今となっては伝説とも言うべき4年会があります。2連覇を目指した、当時の吉田光治郎キャプテン(現・トヨタ自動車)が、対抗戦終盤で3連敗を喫した後に招集した4年会です。
 
和やかに進んだ会も終わろうとする頃、吉田キャプテンが突然立ち上がり、普段は見せないような神妙な面持ちで「みんなの力を俺に貸してくれ」と叫び、チームが一つにまとまったのです。
 
今シーズンはこの当時のような悲壮感はないでしょうが、岩出監督や中村キャプテンが言うように「(対抗戦全勝優勝できたという)喜びをどうやって今後のエネルギーに変えていくか」が大事になりそうです。
 
ここから、本当の意味での4年力が試される時期になってきます。その力を私たちファンも信じて、見守っていきましょう。
 
 
 
《  NEXT MATCH  》
 
第50回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・セカンドステージ第1戦
対朝日大学戦(http://scw.asahi-u.ac.jp/~rise/。 過去の対戦成績なし)
12月8日(日)秩父宮ラグビー場
14時15分キックオフ
[朝日大学の直近5戦]
10月27日○12-10中京大学(東海リーグ・決勝リーグ)
11月 3日●35-40愛知工業大学(東海リーグ・決勝リーグ)
11月10日○28-25環太平洋大学(大学選手権ファーストステージ進出代表決定戦)
11月17日○29-24福岡工業大学(大学選手権ファーストステージ)
11月24日○43-21東北学院大学(大学選手権ファーストステージ)

(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

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