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全国大学選手権セカンドステージ第3戦・大東文化大学戦

全国大学選手権セカンドステージ第3戦・大東文化大学戦

2013/12/24

「全国大学選手権セカンドステージ第3戦・対大東文化大学戦」
 
12月22日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学(勝ち点21)76-19大東文化大学(勝ち点13)●

《帝京大学》
[FW]
(1)森川(2)竹井(勇)⇒竹井(勝)(3)深村⇒東恩納(4)小瀧(5)町野⇒飯野(6)イラウア(7)杉永(8)大和田⇒河口
[BK]
(9)流⇒塚本(10)松田(11)磯田⇒前原(12)中村(13)牧田⇒野田(14)森谷(15)竹田
 
《大東文化大学》※先発のみ
[FW]
(1)高橋(2)柴田(3)江口(4)ハフォカ(5)種市(6)鈴 木(7)篠原(8)長谷川
[BK]
(9)小山(10)川向(11)淺井(12)梶(13)太田(14)サウマキ(15)戸室

【前半】【得点経過】
【1分】帝7-0大
ラックからSH流-SO松田-CTB中村-FB竹田-WTB磯田と渡り、磯田がトライ。ゴール成功。
 
【6分】帝14-0大
ラックからSH流-FLイラウアと渡り、イラウアが前進。相手ディフェンスを弾き飛ばしてトライ。ゴール成功。
 
【9分】帝14-7大
攻めていた場面でのノックオンからターンオーバーされ、相手に走り切られてトライを奪われる。
 
【21分】帝17-7大
スクラムで相手がコラプシングの反則。CTB中村がPGを決める。
 
【22分】帝17-14大
パスをインターセプトされ、そのまま走り切られて、トライを奪われる。
 
【26分】帝24-14大
CTB牧田が前進。ラックからSH流-CTB中村と渡り、中村が仕掛けて前進し、サポートしていたHO竹井(勇)へパス。竹井がそのままトライ。ゴール成功。
 
【32分】帝31-14大
ラックからSH流-No8大和田と渡り、大和田がディフェンスの間をついて前進。タックルを受けるも、引き摺りながらそのままトライ。ゴール成功。
 

 【後半】【得点経過】
【6分】帝36-14大
カウンターアタックでWTB磯田が前進。つないで、ラックからSH流-SO松田と渡る。松田が仕掛けて前進し、WTB森谷へとパス。森谷が抜け出してトライ。
 
【14分】帝36-19大
展開され、走られてトライを奪われる。
 
【19分】帝43-19大
スクラムから連続攻撃。ラックからSH流-FL イラウアへとパス。イラウアが前進して、そのままトライ。ゴール成功。
 
【26分】帝50-19大
スクラムからSH流-CTB中村-WTB磯田と渡り、磯田が前進。ラックから流-中村を渡り、中村がトライ。ゴール成功。
 
【31分】帝57-19大
スクラムからNo8大和田が持ち出して、前進し、そのままトライ。ゴール成功。
 
【34分】帝62-19大
相手のキックをWTB森谷がキャッチ。森谷からFB竹田-CTB 中村-WTB磯田と渡り、磯田が走り切って、トライ。
 
【37分】帝69-19大
ラックからSH塚本-CTB中村-SO松田-WTB前原と渡り、前原がトライ。ゴール成功。
 
【39分】帝76-19大
ラックからSH塚本-CTB中村と渡り、中村が仕掛けて前進。FB 竹田へとパスが渡り、竹田がトライ。ゴール成功。
 

《  BRIEF REVIEW  》

大学選手権セカンドステージ第3戦は、大東文化大学との対戦。帝京は、この日のテーマとしていた「スタートダッシュ」を見せる。開始直後からエンジン全開で、1分にはWTB磯田、6分にはFLイラウアがトライを奪う。しかし、その直後、ミスから失点すると、相 手の前に出てくるディフェンスを勢いづけてしまったか、攻め込みながらも取り切れない時間帯が続く。相手ディフェンスの裏に転がすキックを蹴るも、トライにまでは至らない。それでも、HO竹井(勇)、No8大和田のトライなどで加点し、前半は31-14で折り返す。後半も開始直後は一進一退の攻防を見せるが、徐々に相手が疲れを見せ始めた20分前後からは完全に帝京のペースとなる。後半19分から連続6トライをあげ、試合を決めた。76-19でノーサイド。この結果、帝京はセカンドステージ1位で、1月2日のファイナルステージ準決勝へと駒を進めた。同時に、2月16日から始まる日本選手権への出場権を獲得した。
      
《  AFTER MATCH SAY  》
 
■岩出雅之監督
「今日の試合は、とてもいい経験をさせていただいたと思っています。選手たちの心理を想像しますと、しっかりと目標に向けて気持ちを高めているのと同時に、どこかに反対の誘惑との戦いがあったように思います。厳しさの欠ける部分、少し楽観視してしまっていたところがなかったとは言えないゲームだったと思いま す。一生懸命やっていながらも、どこかでフラストレーションを溜めてしまうような原因を自分たちが持って、相手にぶつかっていたように思います。ハーフタイム、そしてゲーム終了後、そうした面と前向きになっている面と両方を感じました。この時期のゲームというのは、チー ムの成長を担った戦略の幅も広げているところなので、微妙なものが噛み合わせとして出てきます。そういう意味でも、いい成長の兆しを感じるようなゲームになったと思っています。
大東文化大学さんは、足の速い選手が多いと感じました。若い選手も多いので、今後、より魅力ある、いいチームになっていくだろうと思いますし、一方、厳しいゲームをさせていただいたということを私自身が監督として記憶に残して、また立ち向かうことになったときには、学生たちを奮い立たせるような指導をすることで、より一層大東文化大学さんへの敬意を表したいと思っています。 次はファイナルステージ。ベスト4からの対戦になります。慶應義塾大学さんには、対抗戦では大勝できましたが、ここまで上がってくるプロセスで厳しさを乗り越えて来られた力をリスペクトして、我々としては、最大の厳しさをぶつけていけるように、チームで心を合わせながら、1月2日の試合をいい形で迎えたいと思います。」

 
■キャプテン・SO中村亮土(4年)
「今日の試合は満足できるゲームではありませんでしたが、かといって、悲観するゲームでもなく、次につながる、勉強をさせていただいたいいゲームだったと思います。大東文化大学さんは、試合前からすごく勢いのあるチームだなと感じていて、実際、そういう思いで臨んだところ、やはり自分たちが受けてしまう部分がありました。特にアタックの際の勢いを感じました。しかし、試合中、思い切って自分たちのやるべきことをやっていこうということで、徐々に自分たちのペースになっていったと思います。修正点、ミス、あるいはメンタルの部分でも反省点がたくさん出ましたので、これからファイナルステージに向けて、もう一度、修正して、一歩一歩、階段を上がっていきたいと思います。」
 
■スクラムに手応えを感じた・PR森川由起乙(3年)
「自分もそうですし、みんなもそうだったと思うのですが、今日はやりたいことが絞れていなかったというか、シンプルさが欠けていたように思いました。シンプルに帝京の強みを出していれば、もっといいスタートが切れたのではないかと思っています。 今、スクラムに関して、一 人一人の役割というものを明確にしているので、FWのメンバーはみな、自信を持って、ファイナルステージに向かっていいスクラムが組んでいけると思っています。気持ちに隙を作ってしまったり、メンタルの部分で相手に合わせてしまったりするのではなく、まずは自分たちが帝京のラグビーをやり切って、メンバー以外の人たちにも何かを感じてもらえるような、そしてファンのみなさんにも何かを感じてもらえるようなラグビーをしたいです。まずは次の試合で帝京らしいラグビーをやって、勢いをつけて、決勝戦に進めるように頑張りたいと思います。」
 
■落ち着いたプレーでたびたび好機を演出した・FB竹田宜純(4年)
「今日はスタートから全力を出し切ろうということを目標にして臨みま した。立ち上がりはすごくよかったので、そこは評価していいと思います。ただ、ミスも起こってしまったので、そこは修正していかないといけないところだと思います。また、ミスから相手に一発で簡単に取られてしまうシーンがあったり、相手の、前に出るすばらしいディフェンスがあったりして、うまくいかない時間帯もありました。前に出るディフェンスの裏があいているのが目に入り、そこへキックを蹴る場面が何本もありましたが、結果として相手にボールを与えてしまうことになったので、ボー ルを継続すべき場面で簡単にキックを蹴ってしまったのは、今後、修正していかなければいけないと思いました。先のことは意識せず、まずは次の試合に焦点を合わせて、そこに向けてやっていきたいと思います。」
 
■最後の5分のみの出場ながら、いい集中力でトライを奪取・WTB前原巧(3年)
「リザーブとして、いつ出ることになってもいいプレーができるように準備をしていました。試合は、相手のアタック、ディフェンスに自分たちのテンポをくずされるところもあったので、自分が出たときには、その流れをどう変えられるかと常に考えていました。そして、一つ一つの細かいプレーや体を張ったプレーを逃げずにやろうと思っていました。出場は5分間だけでしたが、その5分で何ができるかを考えたとき、元気を出して、思いっきりプレーして、何とかチームに貢献しようと意識してフィールドに向かいました。トライを取れてよかったです。次戦以降も、いつ出ても、どんなときに出ても、チームを元気づけ、勢いづけられるプレーができるように心掛けて、取り組んでいきたいと思います。」
 
《  PICK UP PLAYERS  》
 
体を張ったフィールドプレーで活躍
HO 竹井 勇二(1年)
Takei yuji
1994年10月14日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
身長183cm/105kg
御所実業高校出身
 
■先発出場でしたが、試合前はどんなことを考えて臨んだのでしょうか。
「一年生でこうした大切な試合に出場させてもらえるということで、自分がいまできることを精一杯頑張ろうと思って臨みました。」
 
■実際にプレーしてみて、どうだったでしょうか。
「まだまだ、自分の理解力だったり、プレーの質という部分で足りないところがたくさん出てしまったので、課題が多く見つかった試合になりました。」
 
■体を張ったプレー、前に出るプレーも多々ありましたが、今日のゲームでよかったところはどんなところでしたか。
「大事なところでしっかりボールをもらうことができたので、そこはよかったです。いつも以上にボールキャリアになることが多かったので、その部分では少しは体を張れたかなと思います。」
 
■いいトライも取りました。
「はい。ありがとうございます。サポートすることを中心に考えていたので、うまくトライにつながってよかったです。」
 
■今日はセットプレーはどう評価していますか。
「ラインアウトでミスが多かったり、スクラムでも受けに回ってしまう場面があったので、そこは改善していって、自分の武器になるようにしていきたいです。」
 
■今日は、前後半でお兄さん(竹井勝彦)との入替になりましたが、兄弟で一緒にプレーできていることについてはどう思っていますか。
「こうした大きな舞台で兄弟で立たせていただいているのは、とても感謝していますし、僕のできていないところを兄がフォローしてくれたりするので、そこはとても心強く感じています。ただ、ゲーム中は兄というよりも、いい仲間という感じです。」
 
■高校時代と比べて、帝京に入ってから変わったことはありますか。
「高校時代と比べると、帝京大学では頭を使った練習が多いです。それと、FWでもパスがうまくできないとダメだったり、細かいスキルが求められます。FWも強さだけでなく、うまさも求められるので、その部分では自分も考え方がだいぶ変わってきたと思います。」
 
■次戦のファイナルステージ準決勝までの間に、特に取り組んでいきたいことは何でしょうか。
「セットプレーですね。今日は、セットプレーを安定させられなかったシーンがたくさんあったので、HOとしてしっかり安定させられるようにしたいです。」
 
■最後に、次戦以降への意気込みをお願いします。
「国立の舞台に立てるかどうかはわかりませんが、今日出た課題を修正して、いま以上にしっかりとチームに貢献できるように頑張りたいと思います。」
 
先発出場は、大学選手権第一戦の朝日大学戦以来。兄・竹 井勝彦と同様、激しさ、力強さを持っている。この日、フィー ルドプレーでも活躍したように、運動量も多い。しっかり走って、BK陣の前進をフォローし、トライを奪った。本人はセットプレーの安定を課題としてあげているが、まだ1年生ということを考慮すれば、今後の成長次第で大きな戦力となるだろう。


《  COLUMN  》
 
――水を満たすことと器を大きくすること――
 
いよいよ大学選手権はファイナルステージへと進みます。
 
昨年度の大学選手権準決勝では、それまで一部に不安視する声すらあったスクラムで圧倒して勝利をつかんだように、この時期の成長はチームにとってとても大きな意味を持ってきます。
 
FB竹田に「ここからファイナルステージに向けて大きく成長するために必要なことは何か」と尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。
 
「まずは今までやってきたことの精度を上げるということ。そして、新しい戦術に取り組むこともあるかもしれないので、その戦術をチームとして信じてやり切ることが大事になると思います。」
 
「今までやってきたことの精度を上げること」と「新しい戦術をチームとして信じてやり切ること」の2つが大事だというわけです。
 
実は、この2つはまったく違ったものです。
 
これを「器に水を入れる」ことにたとえて考えてみましょう。「器の水の量が増える」=「ラグビーの実力が増す」と考えてみます。
 
どのチームも、どの選手も、毎日の練習によって少しずつ器の中に水を入れ、水の量を増やしています。
 
普通は「この器にたくさん水を入れるにはどうすればいいだろうか」と考えて、日々の練習に取り組んでいるはずです。「どのバケツで水を汲んで来ようか」とか「ホースを使って水を引けないだろうか」とか、たいていは水のことばかり考えるのが普通です。
 
これは「今までやってきたことの精度を上げること」にあたります。今ある器をどうやって水で一杯にするかということです。
 
しかし、実はそれだけでは足りません。本当は「水をどうやってたくさん入れるか」ということと同時に、「この器をどうやって大きくしようか」ということも考えるべきなのです。そうでないと、器が一杯になった時点で、それ以上は水を増やせなくなってしまうからです。
 
ただし、「器を大きくする」のは簡単ではありません。それまでとはまったく違ったチャレンジが必要になります。「器に水を入れること」とは、まったく違ったことをしなければならないのです。
 
帝京は日々、こうしたチャレンジを続けています。「打倒トップリーグ」という目標を達成するためには、これまでの器よりも大きな器に水を満たす必要があるからです。
 
器を大きくしたあとで、その器にも水を入れていくことになるのですが、新しい器はまだまだ脆弱なところもあるので、どこかで水漏れを起こすこともあります。でも、どこが水漏れするのかは、水を入れてみないことにはわかりません。
 
水を入れて、水漏れ箇所を発見して、そこを修正して、また水を入れていきます。
 
この修正作業だけを見た人の中には、水漏れという現象だけを見て、「なんだ。今年の帝京は水漏れが多いなあ(=ミスが多いなあ)」と 感じるかもしれません。
 
あるいは、器自体が大きくなっていることに気付かないため、一見すると、水位が下がっているようにも見えるかもしれません。
 
でも、実際の水の量は、以前と比べて、はるかに増えているのです。
 
この試合、起こった現象だけを見ると、帝京のミスから失点するシーンがいくつかありました。また、攻め込む場面でのミスで得点チャンスを逃してしまうシーンもありました。こうした現象だけを見ると、「こんなにミスをするなんて、帝京らしくない」「今年の帝京は大丈夫なのか」と心配するかたもいるかもしれません。
 
もちろん、ミスがないのが理想です。あったほうがいいミスなどというものはありません。
 
ですが、「成長の途上で出てしまう仕方のないミス」というものがあるというのもまた事実です。ミスを恐れてチャレンジ自体をやめて(=器を大きくすることをやめて)、やれることだけに集中する(=水を汲むことだけに集中する)という選択肢もあるでしょう。しかし、それでは大きな成長は望めません。
 
同じようなミスに見えても、小さな器に水を汲もうとするときのミスと、器自体を大きくしようとしたときに出るミスとでは、意味合いがまったく違ってくるのです。
 
竹田が「新たな戦術をチームとして信じてやり切ることが大事」と語ったことを紹介しましたが、これは私たちファンの立場でも同じかもしれません。新たな戦術に挑戦しているチームをファンとして信じ切ること。多くのファンが信じ切れたとき、その力がグラウンドの選手たちを本当の意味で勇気づけることになるはずです。
 
 
 
《  NEXT MATCH  》
 
第50回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・ファイナルステージ準決勝
対慶應義塾大学戦(http://www.kurfc.com/
1月2日(木)・国立競技場
14時キックオフ
過去の対戦成績:関東大学対抗戦7勝8敗1分(大学選手権3勝0敗)
[慶應義塾大学の直近5戦]
11月23日 ●7-69早稲田大学(関東大学対抗戦)
12月 1日 ●0-75帝京大学(関東大学対抗戦)
12月 8日 ○26-22立命館大学(大学選手権セカンドステージ)
12月15日 ●19-20明治大学(大学選手権セカンドステージ)
12月22日 ○10-7東海大学(大学選手権セカンドステージ)

(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

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