REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
春季オープン戦・第3戦 慶応義塾大学戦

春季オープン戦・第3戦 慶応義塾大学戦

2011/05/27

FW戦で圧力をかけ、慶應に勝利!


5月22日(日)・小瀬スポーツ公園・山梨中銀スタジアム
○帝京大学 12-5 慶應義塾大学●



《出場メンバー》
(1)吉田
(2)白
(3)猿渡→出渕
(4)小瀧
(5)今村→マニング
(6)木下
(7)伊藤(哲)
(8)杉永→河口
(9)滑川
(10)小野→朴
(11)南藤
(12)南橋
(13)権→太田
(14)菅谷
(15)竹田

春シーズンの第3戦は、対抗戦グループの強敵・慶應義塾大学。ライバル校との対戦から得られるものは大きいはず。いまの力を存分にぶつけて、成長の糧にしたいところ。なお、試合前には東日本大震災の被災者のため、部員らによる募金活動が行われた。



【前半戦】
午前の好天が嘘のように、キックオフ直前から雨が降り出し、雨足が強くなる。持ち前のFW力に加え、人とボールを相手の弱いところへ動かすスタイルへの進 化を目指す帝京だが、この天候とあってはそれもなかなか難しいところ。試合は案の定、我慢の戦いを余儀なくされた。序盤から互いに闘志をぶつけ合う両チー ム。互いに悪コンディションながらも、集中力を切らさずに激しいコンタクトを繰り返す。そんななか、最初にチャンスを得たのは帝京であった。FWが徐々に プレッシャーをかけ始めると、相手ボールのラインアウトからこぼれたボールを拾い、ラックからSH滑川がライン際にゴロキック。前週で自慢の快足を見せ付 けたWTB菅谷がこれを追走するが、ボールが惜しくもタッチラインを割る。



一転、直後には逆に陣地を戻され、さらにキックチャージを受けピンチの局面を迎える。しかし、簡単には突破させない。春シーズン、徐々に精度の上がってき たDFで防ぎ、またブレイクダウンの攻防でも優ると、慶應はたまらずノットリリースザボールの反則。見事なディフェンスでの集中でピンチを未然に防ぐ。そ の後も一進一退の攻防が続く中、雨足がさらに強くなる。20分過ぎには前方がほとんど見えないほどの豪雨に。滑るボールに、さしものお互いノックオンが増 える。足場も緩くなるが、FWはスクラムをしっかりと組み、押し込む。試合が動いたのは、やや雨足が弱まってきた28分。帝京は安定したスクラムから、 No8の位置に入っていたFL伊藤(哲)が巧みに滑川にパスをつなぐ。すると嗅覚鋭く滑川が右隅に飛び込んで先制トライ!。SO小野も右隅からの難しい角 度のゴールを決め、帝京が7-0と先制。



その後も、小瀧・今村のツインタワーや、今季からFLにチャレンジ中の木下らも献身的なプレーで終始押し気味に帝京がゲームを進める。がしかし、36分、 一瞬の隙を突かれてゲインを許すと、ゴール前のラックを処理した相手SHの前進をとめ切れずに失点。結局、前半を7-5で折り返すこととなった。

【後半戦】
勝負の後半戦も開始直前には、雨はほぼ上がった状態に。だが、ボールは相変わらず水分を含んで滑るため、両チームともなかなかボールが手につかない状態が 続く。前半に続いて木下が再三にわたる縦突進でチャンスを作るが、仕留め切るまでには至らない。両チーム天候をにらみFW戦を多用するが、局面を見てBK にも積極的に展開。菅谷の突破、今季初出場、逞しさを増したFB竹田のライン参加による突破などでゴール前までボールを運ぶ。



そして次はFWの出番。13分には、ラックからのボールをHO白が拾い、LOマニングが後ろから押すような形でインゴールに飛び込む(12-5)。このあ ともほぼ帝京ペースが続く。しかし、攻め込むたびにボールが滑ってあと一歩のところで取り切るまでは至らない。この日も安定感抜群のボール運びを見せた CTB南橋らが大きくゲインするも、どうしても攻めきれない。それでも集中の切らさない帝京フィフティーン。しっかりとしたディフェンスで、相手の前進を 許さない。白のボールごと絡むターンオーバーなど、光るプレーが随所に見られる。



結局、試合はこのままノーサイド。相手云々よりも雨に苦しめられながら12-5で勝利し、春のオープン戦3連勝となった。

《試合後のインタビュー》

□岩出雅之監督
「今日は雨の中、また遠くから駆けつけてくださった方も多かったようで、ありがとうございます。今は学生自身もチーム全体も、目の前のことよりも先の目標 を見据えて練習に励んでいます。しかし、お招きいただいた試合に少しでもお答えできるよう、一つ々のプレーを疎かにせず、今どれだけできるかを挑戦するつ もりで今日の試合に臨みました。雨天ということもあり、当初予定していたことがうまくいかなかったこともあるのですが、こうした招待ラグビーを通して、学 生たちがいい意味の緊張感を持ちながらゲームの厳しさを体験できるよい機会をいただけたと思っています。学生たちは自分たちの練習の中でやっている厳しさ と、対戦相手とともにお互いが出し合う厳しさとの違いを、ゲームを通して感じられたと思います。いいプレーもありましたし、噛み合わないプレーもありまし たが、どちらもいい収穫です。春シーズンの本当の意味でのいいスタートになったのではないでしょうか。学生たちには、まず気持ちの部分で受け身にならない でほしいと思っています。技術的なこと、アイデア的なこともありますが、まずは気持ちの部分があって、その上に技術やアイデアが乗っかってくるものです。 激しさ、挑戦する心がしっかりあることで、体力が加わり、技術が加わります。まだ少し時間がかかるかもしれませんが、時間はありますから、学生たちにはそ うした意気込みを見せてくれるような成長を期待しています。最後になりましたが、本日、ご招待いただいたUTYテレビ山梨、山梨県の関係者各位、山梨県ラ グビーフットボール協会の皆さまには厚く御礼申し上げます。また、慶應義塾大学さんには、いいゲームができたことを感謝いたします。私どもとしましてはさ らなる精進を積み重ね、さらにいい試合をすることで感謝の気持ちを表したいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします」

□ゲームキャプテン・SH滑川剛人(4年)



「今日は春シーズン3戦目ということでやや緊張感が欠けたのか、ゲームの入りがあまりよくありませんでした。いい試合をするためには、まず心の部分の準備 が重要になってくるので、試合の入り方、気持ちの持っていき方などを試合前にしっかりと考えて、逆算して自分自身は今何をしなければいけないのかを常に考 えながら行動しなければいけないと感じました。雨が降って、自分たちのやりたいラグビーを少し変えた部分もありましたが、それとは別に慶應大学さんの気迫 がすごく、自分たちが受けに回ってしまった部分があるので、そこは今後改善していかなければいけないと思いました。今後は絶対にこういう試合をしてはいけ ないと全員で自覚できた試合だったと思います」

□好タックルでチームを鼓舞・PR猿渡康雄(3年)
「テーマとしていたスクラムでしっかりとコントロールができず、安定した球出しができなかったところが課題として残った試合でした。相手の組み方に付き あってしまったというか、相手が低く組んできたことで自分が高くなってしまったのがよくなかったです。ただ一ついいタックルができたので、それを普段から もっともっと出せるようにしていきたいです。これからも前向きに練習を積んでいきたいと思います。もっと厳しい場面で厳しいタックルをしていきたいと思っ ています。プロップだから走れないではなく、どんどん走って、積極的にみんなを引っ張って、存在感を出していけるように頑張りたいです」

□安定したラインアウトキャッチを見せた・今村哲央(2年)
「自分の持ち味はラインアウトだと思っているのですが、今日はマイボールはキープできてよかったです。しかしながら、相手ボールのときに相手のジャンパー のところにジャンプできていなかったところがあり、そこは反省です。ワークレートももっと上げないといけませんしが、ブレイクダウンで積極的にがんがん行 けなかったのは反省点です。気持ちの部分から盛り上げていきたいです。春からAチームとして出場させてもらってすごくいい経験が積めているので、さらに自 覚と誇りをもって、自分自身の目指す目標をしっかり達成できるように、日々の練習に励んでいきたいと思います」

□広い視野と安定したプレーでトライを演出・FL伊藤哲章(2年)



「先週の試合でアタック面では少し手応えを感じたので、チームとしてアタック面でさらなる進化ができるように、ボールを持ったら少しでも前に出るという気 持ちでプレーしました。自分には去年のバックローのように飛び抜けたスピードやパワーがないので、そこを伸ばしていくと同時に、気の利いたプレーと言いま すか、周りがこうしてほしいというときに、そこにいるような選手になりたいと思っています。バックローとして、体を張って、ピンチのときにもチャンスのと きにも絡めるようなプレーをしたいと思っていたのですが、今日はそこが少し足りなかったと思います」

□キレのあるランで見せ場を作った・WTB南藤辰馬(3年)
「前週までのFBから今日はWTBで出させていただきましたが、ポジションに関しては、以前から監督に『WTBもやれるようにしておいた方がいい』と言わ れていましたし、『FBのような感じでWTBをやっていい』とも言われていましたので、違和感はそれほどなかったです。 自分の長所はカウンターアタック だと思っているのですが、今日FBに入った竹田とは違う強みをアピールできるように努力していきたいです。試合を振り返って、気持ちの甘い部分がプレーに 出て、反省の多いゲームだったと思います。ディフェンスでも反省です。雨は関係ありません。まだ春シーズンがはじまったばかりですが、FBでもWTBでも アピールして、自分のいいところを出せるように頑張っていきたいです」

《PICK UP PLAYERS》

帝京強力FLの伝統を受け継ぐ
FL 木下修一(3年)




KINOSHITA SHUICHI
1990年7月9日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
佐賀工業高校出身
身長185cm/体重101㎏/
血液型A型

■今日のゲームを振り返ってください。
「自分としてはあまりよくありませんでした。タックルにも行けていませんでしたし、もっと気持ちを入れてプレーしなければいけないと思いました」

■それでも、縦へのいい突破が何度もあったように見えましたが。
「ありがとうございます。ボールを持ったときの動きは、自分としてもよかったと思います」

■去年の対抗戦ではずっとスコッドに名を列ねて、試合にも出場していましたが、その経験は今季にいかに生かされていますか。
「去年、対抗戦に出た経験のおかげで、試合で緊張するということはなくなりました。対抗戦でトライを取れたことも自信になっています」

■去年は主にLOやエイトとして出場していましたが、今季はFLとして出ています。
「まだまだ不慣れなところがあるのですが、楽しくできていますし早くFLの動きに慣れていきたいです」

■自分の一番の持ち味はどこでしょうか。
「やはり、縦への突破力を見てほしいです」

■今後の抱負を聞かせてください。
「去年の(吉田)光治郎さんやヘンディ(ツイ)さんのような、しっかりとしたプレーのできるFLになりたいと思っています。そうなるためにも、私生活でもゲームでも、しっかり考えて行動できるようになりたいです」

昨年の対抗戦ではLOやエイトとしてAチームに常駐。今年は185cm101kgの大型FLとして抜擢されており、逞しさも増してきている。スピードと力 強い縦への突破力は大いに魅力。今後、さらにパワーや切れが増し、経験を積むことによる判断力も加われば、強力バックスリーの伝統を受け継ぐにふさわしい 男となるだろう。

《NEXT MATCH PREVIEW》

【5月29日(日)VS豊田自動織機 瑞穂公園ラグビー場 14時キックオフ】
春季オープン戦の第4戦は、社会人チーム、豊田自動織機戦。去年のオープン戦では、あと一歩のところまで追いつめながら惜敗した相手。今年も好ゲームが期 待できる。さらには卒業生の浪岡、安岡、河合らも出場することが予想されが。去年のトップリーグ・チームであっても、まずは気持ちの面で上回りたい。すべ てはこの土台の上に積み重ねられるはずだ。


(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

特集一覧