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関東大学対抗戦A 筑波大学戦

関東大学対抗戦A 筑波大学戦

2014/10/20

10月18日(土)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学(4勝0敗)31-10筑波大学(0勝4敗)●


《帝京大学》
[FW]
(1)森川⇒徳永(2)前田⇒町野(3)深村⇒東恩納(4)金(嶺)(5)小瀧⇒亀井
(6)イラウア(7)杉永(8)河口⇒飯野
[BK]
(9)流⇒荒井(10)松田(11)磯田(12)山崎⇒金田(13)前原⇒朴(14)石垣
(15)尾崎

《筑波大学》※先発のみ
[FW]
(1)橋本(2)村川(3)崔(4)藤井(5)中村(6)水上(7)占部(8)目崎
[BK]
(9)木村(10)亀山(宏)(11)亀山(雄)(12)竹田(13)鈴木(14)久内
(15)本村


【前半】【得点経過】
【17分】帝7-0筑
ラインアウトからFWで連続攻撃。ラックからSH流-SO松田と渡り、松田が左前方へゴ
ロキック。WTB磯田が追い付いて、押さえてトライ。ゴール成功。

【36分】帝7-5筑
パスをインターセプトされてつながれ、トライを奪われる。


【後半】【得点経過】
【5分】帝12-5筑
自陣でのマイボール・スクラム。No8の位置に入った杉永からSH流-SO朴-WTB尾崎へ
とつなぐ。尾崎が前進し、さらにFBに回った松田からWTB磯田へと渡り、磯田が抜け
出してトライ。

【12分】帝19-5筑
ターンオーバーして連続攻撃。ラックからSH流-PR森川-SO朴と渡り、朴が仕掛けて
前進。そのまま抜け出してトライ。ゴール成功。

【16分】帝19-10筑
ドロップアウトから切り返されて、トライを奪われる。

【32分】帝26-10筑
ラインアウトからの連続攻撃。SO朴が前進。つかまってラックになるも、SH流-No8
杉永と渡り、杉永が抜け出してトライ。ゴール成功。

【38分】帝31-10筑
ターンオーバーから連続攻撃。ラックからSH流-SO朴-FB松田-CTB石垣-WTB尾崎と
つなぎ、さらに外へとフォローに回った松田にパス。松田が抜け出してトライ。


《BRIEF REVIEW》
関東大学対抗戦第4戦の相手は筑波大学。前半はアタックの局面でややリズムに乗り切れない部分が散見するも、
全員で守り、ゴールラインを割らせず粘り強く対応。17分にはSO松田が絶妙なゴロキックを蹴り、WTB
磯田のトライで先制。しかし、直後ペナルティを連続して取られ、ゴールを背負うピ
ンチとなる。ここは守り切るが、36分、パスをインターセプトされて連続攻撃され失
点。7-5でハーフタイムを迎えた。
後半は5分に自陣でのスクラムからBKでつなぎ
切ってトライを奪うと、その後も帝京ペースとなる。PR森川は攻守にわたって前に出
るプレーを見せ、FBに回った松田はアタックラインに積極的に参加し、チャンスを広
げる。CTBに回った石垣は強い体を活かして攻撃の起点となったり、強烈なタックル
で相手を止めたりと奮闘。結局、31-10で対抗戦4連勝を飾った。なお、この試合で
WTB磯田は2トライをあげ、対抗戦通算41トライとなり、吉田義人(元明治大)氏の記
録を抜き、対抗戦でのトライ数最多記録を更新した。


《AFTER MATCH SAY》
■岩出雅之監督
「選 手たちはここまで100点ゲームが続いたり、ゲーム間隔が開くなどして、ゲーム・フィットネスの部分で不安なところが出てしまった試合になりました。ま た、ブレイクダウン周りのプレーのレフリーとの解釈の違いに、ルールに則ってプレーしているつもりだけでなく、今日の基準に対して我々がアジャストしてい かなければならないということを学べた試合だったと思います。後半は、ゲームのポイントとして、ブレイクダウンとシンプルに走ることをテーマに、奮起して きっちりかつ出し切ろうと言って送り出しました。そこは前半よりはできていたように思います。筑波大学さんは前節までの印象とはまた違ったすばらしいファ イトでした。ゲーム・フィットネスがきちっと上がってきたところで、我々との対戦を迎えられたのでしょう。そのすばらしいファイトに敬意を表したいと思い ます。
例年この時期に、ここまでに得られなかった良い課題を見つけることができます。その課題を修正して11月の試合に向けた良い準備、ギアーチェンジに繋げたいと思います。
誰もがスカッと勝てる
のが一番気持ちがいい思いますが、スカッと勝てないときにこそ良い課題を得られる良い試合でした。」

■キャプテン・SH流大(4年)
「今日は相手にプレッシャーを与え、80分間を通して、今までやってきたことをしっ
かりと出し切ることをテーマに試合に臨みました。しかし、特に前半、相手の筑波大
学さんの方が必死にタックル、ブレイクダウンに来ていたこともあり、自分たちのや
りたいことができない時間帯がありました。ただ、そのうまくいかない時間帯
もこれからのいい成長材料としていけたらと思っています。また、試合の中でいいプ
レーも多く出ましたので、そこは次に活かしていきたいです。今日出た課題を、今後
に向けてしっかり修正して、また成長していきたいと思います。」


■スクラムに自信、試合中に修正もできた・HO前田篤志(4年)

「今日はFW陣の中ではセットプレー、ブレイクダウンのところで圧倒しようと言って
試合に臨みました。ブレイクダウンでは、ボールキャリアのボールダウンの仕方で
あったり、サポートの遅さが反則につながってしまいました。セットプレーに関して
はよいところもあったのですが、それが継続できず、波がありました。ただ、そこを
反省して、次につなげられるゲームになったと思います。自分としてはここ最近、特
にスクラムに手応えを感じています。練習でやっていることが試合でも相手に対して
発揮できていると思います。今日は最初は個人個人がバラバラに押している感じでし
たが、試合中に話し合って、修正して、一体感、重みのあるスクラムが組めるように
なりました。自分は一戦一戦、全力でプレーすることを心掛けているので、次に向け
てももう一度、練習から本気で取り組んで、それを試合で発揮したいと思います。」


■体の強さを見せ続けた・WTB石垣航平(3年)
今日は自分の役割を一つ一つ大切にプレーしようと思って試合に臨みました。自分
の強みを出せたところもありましたが、アタックならハンドリングだったり、ディ
フェンスならコミュニケーションの部分だったりと、細かいところでまだまだ足りて
いないと感じましたし、チームとしても今日は満足のできる内容ではなかったので、
今後、シーズンが深まっていく中で、一つ一つのことを忠実に完成させていきたいで
す。自分は速さもスキルもあるわけではないので、体の強さという自分の強みを活か
しながら、スキルやスピードももっと意識してやっていきたいです。今日出た課題を
修正して、次はもっといい形で勝利できるように、今日よりももっと成長したゲーム
をしたいと思います。」


■FBとして初先発し、プレーの幅が広がった・FB尾崎晟也(1年)
「今日は初めて15番をつけてFBで先発したのですが、立ち上がり、自分の中でも少し
緊張もあって、いつも通りのプレーができず、カウンターなどでも正しい判断ができ
ませんでした。また、もっともっとサイズアップしないといけないと感じたので、長
期の取り組みになると思いますが、改善していかなければと思いました。後半はWTB
に入ったこともあって、チェイスしてタックルするなど、いつも通りの思い切ったプ
レー、自分のプレーが出せたと思います。次の試合も緊張があるかもしれませんが、
それをプレッシャーとせず、それに打ち勝って、自分のいつも通りのプレーができる
ように、練習からもっともっと試合をイメージして取り組んで、自分を高めていきた
いと思います。」


《PICK UP PLAYERS》

「4年力」でAチーム定着を狙う
SO 朴 成基(4年)
PAKU SONG GI


1993年2月25日生まれ
経済学部経済学科
大阪朝鮮高級学校出身
身長179cm/体重91kg

■対抗戦は久しぶりの出場でしたが、まずは試合の感想から聞かせてください。
「前半の最後からの出場でしたが。個人的には今年初めての対抗戦出場というチャン
スをいただき、しっかり頑張ろうと思って臨みました。プレーとしては、自分の強み
であるキックでエリアを取るという部分があまりできなくて、いいムーブ、いいトラ
イもありましたが、まだまだ課題が多く出た試合になりました。いい経験ができまし
たので、もっと研究して、いいプレーができるように、さらに成長していけるように
頑張りたいです。」

■今日の出場はどのようなところを期待されたと捉えていますか。
「今シーズンは2試合、ジュニア(Bチーム)戦での出場だったのですが、初戦は課題
が多く出て、個人的にアドバイスいただいたところもありました。修正期間もあり、次の試合では自
分のプレーができたので、そこを評価していただいたと思っています。あとは、4年
生としてのリーダーシップの部分を期待されたと思っています。ただ、今日はあまり
発揮できなかったので、もっと4年生として、みんなから信頼されるプレーヤーに
なっていきたいです。」

■試合に入るときはどんなことを考えて入ったのでしょうか。
「前半ずっと自陣でプレーする展開が続いていたので、キックをうまく使って敵陣で
プレーすることを考えて入りました。ただ、そこが後半もあまりうまくできなかった
ので、その反省を次戦以降に活かしたいです。」

■前に出るシーンやトライシーンもあり、そのあたりは納得できるプレーだったので
はないでしょうか。

今日はキックでエリアを取ることと積極的に仕掛けることをテーマとしていたので
すが、トライシーンはいい仕掛けができてトライにつながったと思います。逆に仕掛
けを意識しすぎて、ポジションが浅くなって、相手に詰められ、パスが放れなかった
りしたところもあったので、相手のディフェンスに合わせたラインの調整、ためを作
るところなどをこれからもっとしっかり意識してやっていきたいです。」

■先ほど「リーダーシップ」という話がありましたが、4年生としての自覚も高まっ
ているのではないでしょうか。

「今日は4年生がちょっと甘かったので、もう一度、4年生全員で見直して、4年生と
しての見えない力がもっとプレーに出てくるように、ラグビーだけでなく、私生活の
部分でももう一度、見直していきたいです。」

■今後へ向けての意気込みをお願いします。
「今、自分はAチームのリザーブに入れるかどうかというところにいますが、個人と
しては、まずはジュニア戦で優勝することを目標にしています。ジュニア戦を通して
成長していって、Aチームに入って、チームに貢献できるように頑張りたいと思って
います。」


今季、対抗戦初出場ながら、SOとして落ち着いたプレーでゲームをコントロールし
た。もともと、仕掛けて前に出る力とキック力には定評があるが、4年生になり、
ゲームコントロールの部分でも大きな成長が見られる。リーダーシップへの意識も芽
生え、今後の成長次第で帝京の「4年力」を支える柱となり得る存在だ。ジュニア戦
のキーSOがAチームへも大きな刺激を与えている。今後の活躍が楽しみだ。


《COLUMN》

――変幻自在の帝京BK――

この日、帝京は5本のトライをあげましたが、そのうちの4本はBKでのトライでした。
もちろん、FWが前で頑張っていいボールをBKへと供給できたことがトライに繋がって
いるわけですが、帝京にとってBKが大きな得点源であることもまた事実です。

さらにこの試合で興味深かったのは、BK陣のポジションです。具体的には「多様性」
とでも表現できるでしょうか。

その多様性にもいくつかあるのですが、ここで注目したいのは二つ。一人の選手が複
数のポジションをこなす点と、ポジションの既成概念にこだわらず、強みを前面に押
し出していく戦い方です。

一人の選手が複数のポジションをこなせると、それだけでチームの戦い方や選手起用
に幅が生まれます。仮に想定外のケガなどが起こった場合でも、すぐに対応すること
ができます。

例えば、この試合、これまでWTBで活躍してきた尾崎がFBとして先発しています。WTB
石垣はもともとCTBの選手です。さらにCTBとして出場した山崎、金田は両者とももと
もとはSOの選手ですし、SOで先発した松田はゲームの途中からFBに回りました。
(複数ポジションをこなすのはBKに限りません。FWの選手たちもその多くが複数のポ
ジションをこなしますが、ここではBK陣の話に絞っています。)

以前、SO、CTB、WTB、FBとBKのほぼすべてをこなす森谷がこんな話をしてくれたこと
があります。

「他のポジションを実際に自分でやってみると、別のポジションに入ったときでも、
そのポジションの人がどんなことを考えているのか、どういうことをしてほしいのか
がわかるんです。」

つまり、複数のポジションができるという表面的なメリット以上のものがあるので
す。

さて、もう一つの「ポジションの既成概念にこだわらず、強みを前面に押し出してい
く戦い方」というのは、少しわかりづらいかもしれません。特徴的なのは、この試合
での石垣の動きでしょう。

途中からCTBの位置に回りましたが、WTBで入っていたときから、一次攻撃で相手と最
初に接触する役割を担う場面が多々ありました。通常はCTBが担う役割をWTBが担った
わけです。「このポジションはこうあるべき」という既成概念にとらわれていてはで
きない戦い方でしょう。100kg超のWTBという石垣ならではの作戦です。

石垣はこう語ってくれました。

「BKでは、そのプレーで誰が一番強いのかとか、誰が一番適しているのかを考えなが
らプレーしているので、そこが自分の強みでもあったためにたまたま自分がファース
トキャリアになりましたが、他のプレーでも、誰がそのプレーで一番の強みを持って
いるのかを考えてやっています。監督からのアドバイスもありますし、自分たちで考
えることもあります。」

もちろん、すべてを石垣の前進に頼るわけではなく、後半5分のトライのように、自
陣でのスクラムから、SO-WTB-FB-WTBとつないで一次攻撃で取り切る場面もありま
した。まさしく、変幻自在のBK陣です。

今日出た選手以外にも、変幻自在ぶりを見せてくれる選手たちが帝京にはまだまだた
くさんいます。そんなところに注目するのも、帝京ラグビーを楽しく観戦する一つの
見方ではないでしょうか。


《THE NEW FACE》

ニューフェースたちの声を紹介します。

PR 李 城鏞(1年)
大阪朝鮮高級学校出身
身長172cm/体重108kg
「自分の得意なプレーはスクラムです。とにかくしっかり組むことを心掛けてやって
います。今は体力作りを意識して、ウエイトトレーニングに励んでいます。また、食
事の面でも人より多く食べることを意識しています。大学生相手でも当たり負けしな
い体を作りたいです。今後はラグビーの技術や体の面だけでなく、人としてしっかり
生きていけるように、そして卒業後も帝京大学の卒業生として恥じない人間に心も体
も成長していきたいです。」

FB 野口修平(1年)
長崎南山高校出身
身長181cm/体重88kg
「僕の強みはアタックです。ボールをもらう前のコース取りであったり、前があいた
ときにギャップを突くプレーが強みです。今は腰のケガでリハビリ中ですが、上半身
のウエイトトレーニングに力を入れていて、復帰したときに当たり負けしない体作り
をしています。もうすぐ復帰できそうなので、すぐにその成果を活かせるようにした
いです。将来は、自分はラグビーだけでなく、人間的にも成長して、就職後は仕事面
でも多くの人に尊敬される人物になりたいと思っています。」


《NEXT MATCH》
関東大学対抗戦A・第5戦
対早稲田大学戦(http://www.wasedarugby.com/
11月2日(日) 秩父宮ラグビー場
14時キックオフ

過去の対戦成績:関東大学対抗戦8勝27敗(大学選手権4勝2敗)
[早稲田大学の直近5戦]
8月24日 ●12-49帝京大学(夏期練習試合)
8月28日 ○26-24法政大学(夏期練習試合)
9月21日 ○104-0明治学院大学(関東大学対抗戦A)
9月28日 ○19-15筑波大学(関東大学対抗戦A)
10月12日 ○97-0 立教大学(関東大学対抗戦A)

(文/木村俊太・写真/志賀由佳)

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