REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
第52回全国大学ラグビー選手権大会・ファイナルステージ準決勝 大東文化大学戦

第52回全国大学ラグビー選手権大会・ファイナルステージ準決勝 大東文化大学戦

2016/01/03

1月2日(土)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学68-33大東文化大学●

《帝京大学》
[FW]
(1)徳永⇒浅堀(2)堀越⇒小川(一)(3)深村⇒垣本(4)飯野⇒姫野(5)金
(嶺)(6)イラウア(7)亀井(8)マクカラン⇒小野
[BK]
(9)小畑⇒荒井(10)松田⇒重(11)竹山(12)金田(13)石垣(14)尾崎⇒濱野
(15)森谷

《大東文化大学》※先発のみ
[FW]
(1)本間(2)栗原(3)蛯名(4)長谷川(5)ファカタヴァ(タ)(6)湯川(7)
河野(8)ファカタヴァ(ア)
[BK]
(9)小山(10)川向(11)ラトゥ(12)竹原(13)戸室(14)中川(15)大道

【前半】【得点経過】
【0分】帝7-0大
SO松田の好タックルでこぼれたボールをCTB金田が拾って連続攻撃。ラックからHO堀
越が持ち出してトライ。ゴール成功。

【6分】帝14-0大
スクラムを押し込み、No8マクカランが押さえてトライ。ゴール成功。

【9分】19-0大
キックオフから連続攻撃。LO金が前進。ラックからWTB尾崎-SO松田-FB森谷-CTB石
垣-WTB竹山と渡り、さらに石垣がもらい直して、抜け出し、トライ。

【14分】帝19-7大
ラインアウトから攻められ、BKに抜け出されてトライを奪われる。

【21分】帝26-7大
スクラムからFW、BKで連続攻撃。ラックからSH小畑-SO松田-CTB金田-CTB石垣と渡
り、石垣が抜け出し、走り切ってトライ。ゴール成功。

【26分】帝26-14大
スクラムから展開され、抜け出されて、トライを奪われる。

【29分】帝33-14大
SO松田の好タックルでターンオーバーして連続攻撃。FLイラウアが前進。ラックから
SH小畑-FB森谷-CTB石垣と渡り、石垣が抜け出してトライ。ゴール成功。

【32分】帝33-21大
ラインアウトから攻められ、展開されてトライを奪われる。

【39分】帝40-21大
相手ボールのラックをCTB金田、FL亀井が押し込み、LO金がセービングしてターン
オーバー。SH小畑-FLイラウア-HO堀越-SO松田-LO飯野-FB森谷-WTB竹山と渡
り、竹山が走り切ってトライ。ゴール成功。


【後半】【得点経過】
【5分】帝40-26大
ラインアウトから攻められ、トライを奪われる。

【16分】帝47-26大
相手ボールのラインアウトを奪って連続攻撃。ラックからSH小畑-WTB竹山と渡り、
竹山が相手ディフェンスを弾いてトライ。ゴール成功。

【21分】帝54-16大
WTB尾崎のクイックスローインから、SO松田-FL亀井-WTB竹山と渡り、竹山が走り
切ってトライ。ゴール成功。

【31分】帝61-26
スクラムを押し込み、No8小野が押さえてトライ。ゴール成功。

【33分】帝68-26大
キックオフからモールで前進。ボールを出し、CTB石垣が前進。ラックからSH荒井-
CTB金田-FB森谷-WTB竹山と渡り、竹山がディフェンスをかわしてトライ。ゴール成
功。

【40分】帝68-33大
ラインアウトをターンオーバーされ、走られ、トライを奪われる。



《BRIEF REVIEW》
大学選手権ファイナルステージ準決勝の相手は、リーグ戦4位からプールCを勝ち上
がってきた大東文化大学。油断できない相手に対して、帝京は開始直後からエンジン
全開。キックオフから展開する相手に、SO松田が強烈なタックルを浴びせてボールを
奪うと、FW陣で前進。ゴール前のラックから、この日、坂手キャプテンに代わって先
発出場したHO堀越がインゴールに飛び込みトライ。開始から50秒足らずで先制点を挙
げた。さらに攻撃は続く。9分間でスクラムトライを含む3トライを奪う。しかし、こ
こから攻められる時間も増える。相手の決定力のあるランナーたちが襲いかかるが、
No8マクカランらの好タックルで止める。攻めてはCTB石垣が前半だけで3トライ。40
-21で前半を折り返した。後半は、開始4分にトライを奪われるものの、その後は帝
京のペースで進む。WTB竹山の連続トライ、さらにはこの日2本目のスクラムトライを
奪うなど、FW、BKともに激しさを見せる。接点では、ボールに絡もうとする相手をFL
亀井、LO飯野、LO金らが体を張って弾き飛ばす。80分間、厳しさを出し続けた帝京が
68-33で勝利し、ファイナルステージ決勝へと勝ち進んだ。



《POST MATCH INTERVIEW》

■岩出雅之監督
「あけましておめでとうございます。今日、大東文化大学さんと戦うに際して、リー
グ戦の時と大学選手権に入ってからの戦い方でどこに違いがあるのかという観点で研
究させていただきました。特にディフェンスで大きな違いがあり、かつ青柳監督のお
人柄が出ているのか、とても誠実で、一生懸命にプレーされる印象を持ちました。丁
寧に指導されていることがよくわかりましたので、油断できないと思って臨みまし
た。実際、試合内容もいいプレーをたくさんされましたが、我々は今日の試合を決勝
戦に向けてしっかり反省し、我々のいいところもより磨きながら、今日の内容をさら
に濃いものにして、次に活かしていきたいと思います。8年連続で決勝戦に出場でき
ることは、選手はもちろん、部員一同、そして私たちスタッフもとてもうれしく思い
ます。1年間、この決勝戦に向けて、学生とともにさまざまなものを積み上げてきま
した。対抗戦の最終戦で喫した敗戦、キャプテンのケガなど、いろいろな試練もあり
ました。それらすべてが決勝戦へ向けてのいい材料となって、次へのチャンスを作っ
てくれたと思っています。これから1週間、短い間ですが、学生の力を信じて、いい
準備をして、決勝戦は爆発したいと思います。」

■ゲームキャプテン・CTB金田瑛司(4年)
「このチームが始動してからさまざまな経験をし、さまざまな積み重ねをしてきまし
たが、いつも先頭に立ってチームを引っ張ってくれていた坂手キャプテンが、今日、
このグラウンドに立つことができませんでした。坂手の思いをしっかりと背負って、
この試合に挑みました。これは僕だけの思いではなく、チーム全員がそう思ってい
て、その思いが一つになった結果がこの試合に出たように思います。決勝戦では、1
年間積み上げてきたものをすべて出し切れるように、この1週間、しっかり準備をし
て、ベストな状態でベストパフォーマンスが出せるようにしたいと思います。」


■3トライはみんながつないでくれたおかげ・CTB石垣航平(4年・ゲームMVP)
「この試合、そして次も勝って、坂手に優勝戦に立たせたいというのがチーム全
員の気持ちでしたし、僕たち4年生もこの1年間、それをイメージしながらやってきた
ので、その思いで戦いました。今日は坂手はいませんでしたが、同じ気持ちでスタン
ドで戦ってくれていたと思います。ですが、前半、自分のミスでスコアされたり、
ディフェンスのコネクションでミスがありました。後半はそこを修正していこうと
思ってやったところ、横ともコミュニケーションできたので、もっと精度を上げて
やっていきたいです。3トライはありましたが、トライはみんながつないでくれて、
最後に自分がいいところにいたというだけなので、今日はそこよりもディフェンス面
でのミスが悔しいです。ただ、練習でやっていることをいつもどおりに出せたところ
はよかったです。次はこれまでやってきたことを出すだけなので、1週間、しっかり
コンディションを整え、今までの確認をして、1月10日をこの1年間の集大成にしたい
と思います。」


■次に向けても最高の準備をしていきたい・HO小川一真(4年)
「今週の月曜日に4年生試合があり、そこで一緒に戦った4年生、そしてケガなどで出
られなかった4年生、さらにはサポートしてくれた下級生やスタッフの方々すべての
ために戦うつもりで試合に臨みました。Aチームでの公式戦は久しぶりだったので、
緊張する場面もありましたが、みんなのために体を張り続けようという気持ちで戦う
ことで、しっかり走り続けることができたと思います。正直、4年生試合に出場した
ところでは、自分が公式戦に出ることはもうないかもしれないと思ったのですが、そ
れでも常に準備をしておこうと思い、気持ちを張って練習していてよかったです。坂
手不在の中、しっかりやらなくてはいけないという気持ちはありましたが、僕は坂手
ではないので、とにかく自分らしさを出して体を張り続けようと思っていました。次
に向けては、自分がやれることをすべて最後までやり切ろうという気持ちです。自分
たちが積み上げてきたことをすべて出し切れるように、この1週間、また最高の準備
をしていきたいと思います。」





《PICK UP PLAYERS》
セットプレーを安定させ、大きな自信になった
HO 堀越康介(2年)
HORIKOSHI KOSUKE

1995年6月2日生まれ
教育学部教育文化学科
桐蔭学園高校出身
身長174cm/体重105kg


■今日のゲームを振り返って、感想を聞かせてください。
「今日はいつもと違って緊張感があって、不安もあったのですが、グラウンドに入っ
たら周りの先輩たちがサポートしてくださって、思い切りプレーできたのでよかった
と思います。」

■緊張というのは、普段はリザーブが多い中、今日は坂手キャプテン不在で先発メン
バーに入ったということでしょうか。
「そうですね。坂手さんはキャプテンですし、プレーの面でも自分がそのまま代わり
ができるわけではないのですが、その中でも自分は自分らしさを出して戦うことを意
識しました。自分らしく思い切りできてよかったです。」

■今日、特に自身でよかったプレーはどこだと捉えていますか。
「セットプレーですね。スクラム、ラインアウトはともに、自分としてはよかったと
思います。坂手さん不在で注目されるところはセットプレーだと思いますし、それを
安定させることができたのは、自分としても自信になりましたし、今後につながって
いくと思います。」

■では、決勝戦に向けて意気込みをお願いします。
「次の試合、自分がどういう形で出るかはまだわかりませんが、出るときにはいつも
どおり体を張って、厳しく、激しくということを意識して頑張りたいと思います。」


ケガで欠場した坂手キャプテンに代わりHOとして先発。本人は緊張したと語るが、開
始早々に先制トライを決めるなど、いつも以上に気持ちの入ったプレーを見せた。
セットプレーも安定。二度のスクラムトライを生む原動力となった。後半31分まで激
しいプレーを続け、そのスタミナも証明。インタビューでの言葉数は多くはないが、
U20日本代表のキャプテンを務めた経験から、2年生ながらキャプテンシーも身に付け
ている。決勝戦でも厳しさ、激しさを発揮してくれるに違いない。



《COLUMN》

――不在の存在感――

この日の試合、セカンドステージ最終戦で負傷した坂手キャプテンの名前はメンバー
表にありませんでした。

対抗戦から大学選手権セカンドステージまで全試合出場し、常にチームを牽引してき
たキャプテンの不在は、おそらく誰に聞いても「マイナス要素」と答えることでしょ
う。当然、大きなマイナス要素はありますが、実はそのマイナスを補って余りあるプ
ラス要素もありました。

それは「不在の存在感」です。

「いなくなって初めて、その人の存在感の大きさを実感する」とか「その人の穴を埋
めきれないことで、いたときの存在感が増す」とか、そういう意味ではありません。

「いないことで、かえって他のメンバーたちの心にその存在を強く意識させ、他のメ
ンバーたちの力を引き出せる存在となる」といった意味です。

試合前日、バイスキャプテンの金田はチームのみんなにこう言いました。

「みんなで坂手を決勝戦に連れていこう。そして、決勝戦にも勝って、坂手に優勝イ
ンタビューをさせてあげよう。」

この思いをチーム全員が共有し、それが試合の結果として現れたと言います。

試合に出場すれば、声や行動、プレーでチームを牽引する。それはキャプテンの仕事
としては当然でしょう。しかし、試合に出ないことでかえってチームを鼓舞できる存
在になるのは、簡単ではありません。

準決勝というステージの効果も小さくなかったでしょうが、それ以上に、坂手自身が
チームのみんなに対して「不在の存在感」を示せる信頼を得ている証拠と言えるで
しょう。

大きなピンチも一転チャンスにできるチーム力、ピンチゆえに一層強められる結束
力。試練をパワーに換え、帝京はまた大きな成長を遂げたようです。

さあ、決勝戦。あとはその力を発揮するだけです。1月10日はファンもその結束力の
一翼を担い、心を一つにして戦いましょう。
 
 


《NEXT MATCH》
第52回全国大学ラグビー選手権大会・ファイナルステージ決勝
対東海大学戦(http://seagales.com/)
1月10日(日) 秩父宮ラグビー場
14時キックオフ

過去の対戦成績:大学選手権3勝0敗
[東海大学の直近5戦]
11月22日 ○38-31流通経済大学(関東大学リーグ戦1部)
12月13日 ○66-7朝日大学(大学選手権セカンドステージ)
12月20日 ○61-5天理大学(大学選手権セカンドステージ)
12月27日 ○48-15早稲田大学(大学選手権セカンドステージ)
1月2日 ○28-19明治大学(大学選手権ファイナルステージ準決勝)

(文/木村俊太・写真/志賀由佳)

特集一覧