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関東大学春季大会Aグループ・第4戦 筑波大学戦

関東大学春季大会Aグループ・第4戦 筑波大学戦

2016/05/29

5月29日(日)・百草グラウンド
○帝京大学(勝ち点24)80-7筑波大学(勝ち点8)●

《帝京大学》
[FW]
(1)西⇒李(城)(2)堀越⇒大西(3)呉(味)⇒垣本(4)飯野(5)金(廉)⇒マクカラン(6)菅原(7)亀井(8)吉田⇒古田
[BK]
(9)小畑⇒吉川(10)松田(11)竹山(12)金村(13)岡田⇒矢澤(14)津岡⇒重(15)尾崎

《筑波大学》※先発のみ
[FW]
(1)河村(2)大西(3)西川(4)渡邉(5)堀込(6)中村(7)占部(8)土谷
[BK]
(9)米村(10)亀山(11)島田(12)野中(13)忽那(14)長(15)河野

【前半】【得点経過】
【0分】帝7-0筑
キックオフから、FL菅原が大きく前進。ラックになるも、SH小畑-SO松田-CTB金村-FB尾崎と渡り、尾崎が抜け出し大きく前進。WTB津岡にパスし、津岡が抜け出してトライ。ゴール成功。

【3分】帝14-0筑
ラックでのターンオーバーから連続攻撃。ラックからSH小畑-CTB金村-FB尾崎-WTB津岡と渡って津岡がトライ。ゴール成功。

【17分】帝21-0筑
ラインアウトからモールを押し込み、HO大西が押さえてトライ。ゴール成功。

【20分】帝28-0筑
ラインアウトからモールを形成。崩れるも、FWでさらに攻撃。PR呉、No8吉田が前進。最後はHO大西が持ち出してトライ。ゴール成功。

【33分】帝35-0筑
相手がこぼしたボールをLO飯野が拾う。SH小畑-FB尾崎と渡り、尾崎が抜け出し、大きく前進。WTB津岡にパスし、津岡がトライ。ゴール成功。


【後半】【得点経過】
【1分】帝42-0筑
ターンオーバーから連続攻撃。ラックからSH小畑-FB尾崎-WTB竹山と渡り、竹山が走り切ってトライ。ゴール成功。

【5分】帝49-0筑
ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH小畑-SO松田-CTB金村と渡り、金村が抜け出し、トライ。ゴール成功。

【15分】帝56-0筑
ターンオーバーから連続攻撃。ラックからSH小畑-LO飯野-LO金-LO飯野と渡り、飯野が大きく前進。さらにFL菅原にパスし、菅原が抜け出してトライ。ゴール成功。

【20分】帝61-0筑
スクラムからBK展開。No8マクカラン-SH]小畑-SO松田-WTB津岡-FB尾崎-WTB竹山と渡り、竹山が抜け出してトライ。

【24分】帝66-0筑
スクラムから連続攻撃。WTB津岡が大きく前進。つかまるもさらに連続攻撃。ラックからSH吉川-SO松田と渡り、松田が前方へキック。WTB竹山が追いかけ、キャッチしてトライ。

【26分】帝73-0筑
キックオフから連続攻撃。CTB矢澤が大きく前進。つかまるもSH吉川-WTB竹山と渡り、竹山が抜け出してトライ。ゴール成功。

【35分】帝73-7筑
ラインアウトからモールを押し込まれ、トライを奪われる。

【37分】帝80-7筑
スクラムから連続攻撃。ラックからSH吉川-FL菅原と渡り、菅原が抜け出してトライ。ゴール成功。



《BRIEF REVIEW》

春季大会第4戦の相手は、昨年度の対抗戦で敗れている筑波大学。各選手たちは自分たちの成長にベクトルを向けつつも、「リベンジ」の気持ちを忘れずに試合に臨んだ。その気持ちが、試合開始直後から表れる。キックオフのボールをうまくキャッチすると、まずはFL菅原が大きく前進してチャンスを作る。さらにFB尾崎も大きく前進してチャンスを広げ、WTB津岡へパスし、開始30秒ほどでのノーホイッスルトライで先制した。3分に津岡が連続トライを決め、帝京がペースをつかむ。その後、相手に攻められる時間帯もあるが、厚い守りで前進を許さない。急遽、入ったHO大西がラインアウトからのモールで2トライ、さらに津岡が3トライ目を奪い、前半を35-0で折り返した。後半も、開始早々からエンジン全開。1分に久しぶりの先発となったWTB竹山がトライを奪うと、5分にはCTB金村がトライを奪う。竹山はこのあと、3連続トライを見せ、計4トライと量産。FW陣では、この日のゲームMVPに選ばれた菅原が2トライをあげる。相手の攻めにも、一人一人がしっかりとタックルで止め続け、チャンスと見れば人が集まり、ターンオーバー。ペナルティから1トライ返されるものの、最後まで気持ちを切らさず、80-7で勝利した。



《POST MATCH INTERVIEW》

■岩出雅之監督
「全体的に気持ちの入ったいいゲームになったと思います。ここまで、個々がそれぞれいい形で成長できていると思います。この時期ですので、まずは個々の成長を第一に考え、チームとしての成長は第二と考えています。もちろん、個々が成長しているチーム、あるいは成長しようとしている人たちが集まるチームは、確実に成長していきますので、チームとしてもいい状態になっていると思います。個人個人の成長にターゲットを置いて、一人一人がインテリジェンス・アップ、メンタル・アップ、フィジカル・アップ、スキル・アップを自分自身でやっていけるように、どうなりたいかを各自がイメージするところから取り組んでいってほしいと思います。」


■キャプテン・FL亀井亮依(4年)
「今日は、去年の対抗戦で敗れた筑波大学さんとの試合でしたが、まずはブレイクダウンの痛いところ、厳しいところで圧倒していこうと言って試合に臨みました。点数は開きましたが、後半、帝京ペースの中でも少し雑になってしまったところがあったので、ダイナミックな中にも繊細なプレーをやっていかなければと思いました。練習でやっているアタックのつなぎの部分やディフェンスでの個々のタックルなどでは、それぞれよかったところも多かったのですが、さらに上を目指して各自が足りない部分を確認して、また次の練習で修正していこうと思います。みんな確実にレベルアップしているので、そこは継続してやっていきます。ここから毎週、遠征が続きますが、いつもと違った環境で自分自身のコンディションを整えるのは、去年から出ているメンバーは経験もありますが、初めてのメンバーも少なくないので、シーズンに向けていい経験になると思います。ここからもやるべきことは同じで、プレー面では個々のディフェンス力を上げていくことを掲げてやっていますし、練習からみんなの意識もスキルも向上しているので、これからもそこをどんどん追求していって、いいプレーはみんなでイメージを共有していこうと思います。個人の成長を周りにもいい影響として与えて、それによってチーム全体が成長していけたらと思っています。」


■前半の反省を活かし、後半4トライの猛攻・WTB竹山晃暉(2年)
「久しぶりにAチームでの先発出場でしたが、前半の最初は自分がイメージしていたことが出せなかったところがありました。WTBというフィニッシャーとしての仕事を前半は果たせなかったのは、まだまだ僕の力が足りないからだと感じ、帝京のWTBとしての仕事ができていない点が課題として残りました。『後半はうまく修正していこう』と前向きに考えて後半に臨んだので、その切り替えができたのはよかったと思います。今、体作りに取り組んでいて、体重が増えたこともありますが、それを言い訳にせず、もっとしっかり体作りをして、その上でトライを取り切れる走りができるようにしたいです。秋シーズンには去年と違った自分をお見せできるように頑張ります。口で言うだけでなく、見ていただいて『変わったな』と思っていただけるように努力します。春シーズン前半は、脳震盪などもあって、試合に出る機会が少なく、チームに迷惑をかけてしまったので、ここからしっかりチームに貢献できるように頑張ります。」


■前半、急遽出場も、最後までバテることなく激しいプレーを見せた・HO大西将史(4年)
「相手が筑波大学さんでしたので、去年の対抗戦のリベンジをしようと、まずはFWから縦に縦に切っていこうと言って、臨みました。そこは自分の強みでもあったので、思い切りよくできたと思います。これまでは後半から10分、20分の出場で、70分、80分出場する機会は少なかったのですが、『もっとチャレンジしよう』『楽しんでやろう』と思ってプレーしました。そのおかげで、スタミナ面でもそれほどきつくありませんでした。自分はフィールドプレーのアタックが強みだと思っていますが、そこは今日、ある程度出せたので、今後もシーズンを通じて、どんどん出していこうと思います。セットプレーも自信になりましたが、ラインアウトでのミスが多かったので、そこは修正して、次に活かしたいと思います。自分は言葉でチームを引っ張っていくよりも、体で示すタイプだと思っているので、もっともっと体を張ってチームを鼓舞していきたいです。スタートから赤のファーストジャージの2番をつけて、80分間プレーできる選手になりたいと思います。」


■パスさばきには納得も、タックル面でのさらなる成長を誓う・SH吉川浩貴(2年)
「久しぶりにAチームでチャンスをいただき、今日は自分の2つの課題、パスとタックルをしっかり意識してやろうと思って、試合に臨みました。パスの部分では、日頃、練習でやっていることは出せたかなと思えるところがいくつかありましたが、タックルの部分ではまだうまくいかずに不安なところもあったので、そこをもう一度改善していきたいです。これからも、失敗も成功もどちらもあると思いますが、失敗したら、『なぜ失敗したのか』を追究して、少しでも成功に持っていけるように、また、偶然の成功ではなく、必然的に自分から成功に持っていけるように、心技体すべての部分でレベルアップしていきたいです。」





《PICK UP PLAYERS》

無口返上! 声を出すリーダーシップと力強いプレーでチームを牽引


No8 吉田 杏(3年)
YOSHIDA KYO

1995年6月30日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
大阪桐蔭高校出身
身長186cm/体重102kg


■今日の試合、どんなことを意識してプレーしていたのでしょうか。
「前半、しんどい場面が多かったのですが、そこで自分自身、走って、ディフェンスの部分で相手を圧倒できるように、タックルとブレイクダウンでしっかり相手の攻撃をスローダウンさせたり、チャンスがあればボールを奪ったりといったことを意識してプレーしました。」

■プレーの手応えはいかがでしたか。
「いいところもありましたが、よくないところもあったので、そのよくなかったところを、また日々の練習で修正して、積み重ねていきたいです。しっかりイメージした上で結果を出すということを、きちんとやっていきたいです。」

■ボールキャリーでも、ディフェンスでの激しさでも、存在感がありますね。
「自分の強みはボールを持ったときのランとコンタクトプレーなのですが、それにプラスしてタックル、ブレイクダウンでの仕事量でもっと上を目指せれば、チームに必要とされる存在になれると思うので、このプラスの部分を意識して、誰よりも走って、タックルに行って、ブレイクダウンでいい仕事ができるようなプレーヤーになれるように、イメージしながらやっています。」

■先ほど、飯野選手が「あの無口な(吉田)杏が、しっかり声を出していた」と喜んでいましたね。
「(笑)去年まで2年生、1年生として試合に出させていただいていましたが、受け身と言いますか、上級生に引っ張られっぱなしでした。3年生になって、自分が去年までやってもらっていたことを、今度は上級生として自分がやって、チームを引っ張れる存在になれればと思っています。自分自身、声を発することで頭の中のイメージも湧くので、しっかりしゃべることを練習でも試合でもやっていって、リーダーシップが取れるように意識しています。」

■積極的に声を出すようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか。
「具体的なきっかけは特にないですが、ディフェンスのところでコミュニケーションをしっかり取れるといいディフェンスができるとわかったので。そのときにコミュニケーションの大切さを改めて感じました。いいコミュニケーションができないといいプレーができないわけですから、しっかりコミュニケーションを取ろうと。同時にリーダーシップにもつながりますので、そのことも意識して声を出すようにしています。」

■あらためて、今後への意気込みをお願いします。
「春シーズンが深まっていく中で、第三列やLOとしての自分の仕事、自分の強みの部分や、今、挑戦しているディフェンス、ブレイクダウンでの仕事量を強化して、チームに欠かせない存在になっていきたいと思います。」


これまで、どちらかと言えば、いや「非常に」無口なキャラクターと思われていた吉田選手だが、この日は積極的に声を出し、コミュニケーションしていた。インタビューの受け答えも昨年度とはまったく違い、明快な表現、かつ、自信に満ちた語り口に変わっていた。岩出監督も「彼は、経験を積むことで成長していくタイプ」と分析するように、去年までの経験に加え、この春のAチームでの経験が大きな成長を促しているようだ。もともと体の強さ、前に出る圧力には定評がある。コミュニケーションとリーダーシップが磨かれていくことで、チームの成長にも大きな影響を与えてくれることだろう。




《COLUMN》

――声を出すこと――


「PICK UP PLAYERS」でも紹介しましたが、これまで無口なキャラクターと思われていた吉田杏選手が、かなり積極的に大きな声を出している姿が印象的でした。

「声を出す」と言えば飯野バイスキャプテンが真っ先に思い浮かびますが、その飯野が「(吉田)杏が声を出していて、(うれしくて)涙が出そうになった」と言うほどでした。普段から一緒にいる飯野がこう述べたということは、ここ最近で急に意識が変わったのかもしれません。

「声を出す」ということについて、当の吉田自身は「いいコミュニケーションを取ることでいいプレーができる」「リーダーシップにつながる」というメリットを挙げています。

また、亀井キャプテンは「ラグビーではコミュニケーションが一番の核になります。みんな、練習中からコミュニケーションを取るべく、声を発しています。上級生が下級生に声をかけて、いい姿を見せてくれていると思います」と述べています。

実は「声を出す」ことには、もう一つ、大きなメリットがあります。それは「チームに勢いが出る」ということです。

この日の試合前のアップ時、最初は比較的淡々と進み、「静かな闘志」がみなぎる雰囲気でした。しかし、タックル練習になると、その淡々とした様子が一変します。メンバー外の選手たちから、メンバー名指しで気合いを入れる大きな声がかかりました。

「○○(メンバーの名前)、ナイス!」
「××、行け!」

すると、メンバー内からもさらに大きな声がかかるようになり、アップの雰囲気はがらりと変わったのです。まさに、声によってチームに勢いが生まれ、動きが生まれました。

そして、その勢いのまま試合に入ると、キックオフからいきなりのノーホイッスルトライ。3分後にはターンオーバーからのトライが決まりました。

アップの勢いがそのままゲームに出たシーンでした。

吉田に限らず、声を出すことを意識する選手が増えていることは、チームの成長を示していると言えそうです。




《THE NEW FACE》

ニューフェースたちの声を紹介します。

HO 室屋翔生(1年)
延岡星雲高校出身
身長178cm/体重100kg

「自分の強みは接点でのパワープレーです。課題としては、タックル、ドミネートタックルをしっかりやることに取り組んできました。帝京大学ラグビー部は入部前にテレビで見ていたとおりで、先輩方が進んで掃除等の仕事をしてくださるなど、すばらしい環境でラグビーをさせていただいています。今後の大きな目標としては、自分たちが4年生になるときまでずっと大学日本一になり続けることがありますが、個人としてはそれに貢献するためにAチームの試合に出られるように頑張りたいと思います。」


CTB・WTB 吉本淳之助(1年)
東筑高校出身
身長172cm/体重82kg

「自分の強みはタックルです。相手に食い込まれないように、向こう側に倒すタックルを意識しています。課題としては、パススキルとキックスキルが足りないと思っているので、そこを克服すべく、練習しています。帝京大学ラグビー部は先輩方が、ラグビーに対する意識の高さはもちろん、ラグビー以外でも人間として社会で生き抜く力を身につけていてすごいです。自分も見習っていきたいです。今はケガをしていてプレーができませんが、まずはケガを治して、以後、ケガをしないでずっとラグビーができるようにしていきたいと思います。」




《NEXT MATCH》
招待試合
対天理大学戦(http://www.tu-rugby.com/
6月5日(日) 天理親里競技場
13時キックオフ

関東大学春季大会A・第5戦
対東海大学戦(http://seagales.com/
6月11日(土) 佐賀県総合運動場陸上競技場
13時キックオフ


(文/木村俊太・写真/志賀由佳)

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