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関東大学対抗戦・第4戦 成蹊大学戦

関東大学対抗戦・第4戦 成蹊大学戦

2011/10/24

圧勝の中、次へのさらなるチャレンジを決意

10月23日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学 95-7 成蹊大学●



《帝京》
1吉田⇒猿渡 2白⇒森川 3前田(龍) 4マニング 5ボンド⇒小瀧 6大和田 7松永 8李⇒木下 9滑川⇒天野 10森田⇒中村(有) 11伊藤(拓)
12中村(亮) 13南藤 14徳富⇒池上 15竹田

《成蹊》※先発のみ
1竹内 2高田 3廣江 4三浦 5高橋 6亀井 7井上 8小林 9平賀 10太田 11松井 12藤本 13町田 14五十嵐 15尾上


対抗戦第四戦は成蹊大学戦。今シーズンは強豪校との対戦に苦戦の続く相手だが、帝京としてはいかに集中を切らさず、自分たちのプレーを出し切れるかが大事になる。

FW戦では優位に立てると予想される。注目はBKによるアタックの精度。そして、新たなメンバー、新たなポジションで挑む選手間のコミュニケーションにも注目したい。

【前半戦】
前日からの雨も上がり、晴天の中でいよいよキックオフ。開始早々から帝京はFWでプレッシャーをかける。スクラムは完全制圧。4分には相手ボールスクラムを押してターンオーバー。NO8李がボールを拾って、そのままインゴールを陥れる。

BK陣も声を掛け合う。WTB徳富、FB竹田らから積極的に各ポジションの位置確認の声が飛ぶ。竹田はすっかりBK後方からの舵取り役として定着してきたようだ。

先制後はBKによるアタックで前に出る。もちろん、接点へのFWの寄りの早さ、強さがその展開を支える。BKはディフェンスを引き付けての素早いパス回しや、スピードに乗って切れ込んでもらうパスなどで突破を図る。高いレベルへのチャレンジの部分でもありミスも出るが、それでも積極的にチャレンジを続ける。

タイミングが合うごとにビックゲイン。CTB中村(亮)の連続トライが生まれ、点差を広げる。FWと一体となった攻撃で前進し、最後はBKが取り切るという攻撃を見せる。

中村(亮)はこう振り返る。
「CTBの動きにはだいぶ慣れてきました。幅、深さ、広さといった間合いの部分を意識できるようになってきたので、今後はその精度をもっともっと高めていきたいです」

ただ、順調な加点に少し安心したのか、このあたりからやや停滞する時間帯となる。攻めながら、反則やミスが増え、チャンスの芽を自ら摘んでしまう。選手間の声も開始直後に比べ、やや少なくなってくる。

だが、今季バイスキャプテンに任命されたLOボンドがFWを盛り立てる。

「ソンチャン、頑張ろう! もっともっと行けるよ!」

この試合MVPをもらうこととなる李、大和田・松永の両FLも檄を受け、体を張り続ける。

30分過ぎにはSO森田の好タッチキックで相手ゴール前へ。マイボールスクラムを李がしっかりキープし、きれいにスクラムトライを決める。

その後も大和田のビッグゲイン、森田の縦突破、CTB南藤の鋭い角度で切れ込んでのラインブレイクと、スタンドを沸かす好プレーが続き、前半を31-0で折り返すこととなる。

【後半戦】
BKによる果敢なチャレンジが見られた前半戦だったが、後半に入ると、その精度の向上とともにFW、BKともに動きもよくなっていくこととなり、選手間の声も増えていったようだ。

4分、BK展開から竹田が絶妙なライン参加からトライを奪うと、FWも負けじとモールを押し込み、HO白が持ち込んでトライ。

途中出場のメンバーも活躍。SO中村(有)は森田とは違ったテンポでゲームをコントロールし、相手を翻弄。WTB伊藤(拓)の連続トライなどをうまく演出した。FL木下はビッグゲインあり、トライありと動きのよさで存在感をアピール。SH天野は素早い球さばきを披露。ペナルティからのクイックスタートでトライをアシストする。

途中出場のフロントローも安定感抜群。PR猿渡、初出場のHO森川ともにしっかりとスクラムをコントロールした。

結局、後半だけで10トライの猛攻を見せ、帝京は95-7で勝利を収めた。

注目したBKのアタックについては、特に後半は、先般SH滑川が話していたように、「いろいろな選択肢やプレーの幅」が随所に見られた。そして、それを引き出したFWの献身的な働きも、次戦以降への礎となるのではないか。PR前田、LOマニングらの忠実なフォローも光った。

チームとしてはまだまだ足場を固めている時期かもしれないが、見る側にとってはあらゆる可能性と広がりを感じさせてくれる、今後に期待感を膨らませてくれる。そんな一戦となった。


 

《試合後のインタビュー》

■岩出雅之監督
「今日は学生たちがどれだけ自分に厳しくプレーできるかに注目しながら見ていました。リードを広げた時間帯での気持ちの持っていき方の難しさもわかっていますが、後半は『余裕のある分を楽せず、より厳しさに使っていくよう、しっかり引き締めていこう』と言って送り出しました。ある程度、修正できたと思いますが、細かいミスもたくさんありましたので、それを学生たちがどう捉えて、どう修正していくかが次からの厳しい戦いへのカギになってくると思っています。
今日も多くの選手が出場機会を得ましたが、これはチーム力全体の向上とともに、誰にでもチャンスがあるという意味でチームの活性化を促す効果を期待しています。また、大きな舞台に慣れることで、次に出場したときに過度に緊張せず普段のプレーができるようになり、それによってチーム全体が活性化されることも期待しています。いろいろなポジションをこなす選手も多いのですが、多くのポジションを経験することによってラグビーの視野が広がっていくはずです。学生には試合で感じたことを練習で、練習で感じたことを試合でどう活かしていくかを考えていってほしいと思っています。
今日、最後にしっかりとトライを取ってきた成蹊大学さんの粘りには敬意を表したいと思います。我々の甘さを教えていただきましたので、次に向けて引き締まった準備ができると前向きに捉えたいと思っています。
次戦はタックルが重要なポイントになるだろうと思っています。それに加えて、我々の強みをどう出していくか。この時点では絞った戦い方をするよりは、いろいろな可能性にチャレンジするゲームをさせてあげたいと思っています。今日のような試合では気を引き締めて、逆に次のような試合では気持ちをダイナミックにもっていけるように、心のバランスのコントロールを学びながら成長してほしいと思います。これまでやってきたことを出し切るとともに、充実感の得られる試合にしたいと思っていますので、次戦も変わらぬ応援をよろしくお願いいたします。」

■キャプテン・森田佳寿(4年)
「今日は、前回の慶應大学戦同様、これから先に向かってレベルアップしていけるような、進化につながるゲームするために、内容にこだわろうという話をして試合に臨みました。前半の中盤あたりから甘さが出てしまったのは、自分たちの気持ちをいいゾーンに持っていけなかったからだと思います。後半は少し修正できましたが、多くの課題をいただけたので、今後の戦いにしっかり活かしていきたいと思います。オプションの精度や厳しさ、集中力といった部分がまだまだ甘かったので、練習からチームとして意識していきたいと思います。次戦はまずタックルから。そして、接点の部分でしっかり戦うことが大事。その中で、自分たちが取り組んできたことをしっかり出していきたいと思っています。」

■今季初先発で力強さを見せつけたLOジョシュア・マニング(3年生)



「今日の試合はいままで準備してきたこと、ゲームプランや個人のスキルなどを試す大事な試合だったと思います。今シーズン初先発でしたが、いつもどおりの準備をしてきて、自分の仕事は何かを考えながらリラックスして試合に臨めました。自分はボールをもって走るプレーも好きなのですが、今日の試合ではいくつかラインブレイクができたので、そこはよかったと思います。ただ、一番大切なラインアウトやスクラムといったFWとしての仕事の部分では、まだまだ十分なレベルに達していないと感じました。コーチに言われていることや自分で考えた課題を今後の練習で克服していきたいと思います。」

■切れのある突破を見せたCTB中村亮土(2年生)



「今日はアタックのオプションの精度、幅とか深さといった部分を意識しようと思って臨みました。パスのタイミングなども意識して臨んだのですが、持ちすぎてしまったところもあったので、もっと自分の間合いをよくしていきたいです。ただ、ここでのミスは次への課題として前向きに活かしていきたいと思っています。縦に突破するところは行けた場面もあったのですが、そのあとのダウンボール、倒れ方などをもっときちっとやっていかないといけないと思いました。次からより厳しい戦いが続きますが、試合に出してもらえたら厳しい中でもきっちりとしたプレーをしていきたいです。まずはディフェンスでどれだけ前に出るタックルができるか。これを常日頃から意識してやっていきたいと思います。」


■今日もスピードを見せつけたWTB伊藤拓巳(4年生)
「自分のやるべきことはトライを取ることとディフェンスすることだと考えて、これらをしっかりやろうという目標を立てて試合に臨みました。前半、ディフェンスのミスがあって、チームに迷惑をかけてしまったのは反省点です。アタックでは外でもらって切っていくプレーができたのでよかったのですが、味方が裏に抜けたときに自分がもっといいコースにサポートに入っていれば、もっとトライが取れたのではないかと反省しています。次の早稲田戦は絶対勝ちたい相手。出させてもらえたら絶対タックルで貢献したいです。まずはタックルからしっかりやっていきたいと思っています。」

■アタック面でも貢献したPR猿渡康雄(3年生)
「今日は対抗戦では初めて左プロップに入ったのですが、しっかりプレッシャーをかけることができたのでよかったです。スクラムは2回しかありませんでしたが、2回ともうまく組むことができました。フィールドプレーでボールをもらって前に出る場面が何度もあったのですが、しっかり前に出ることができました。ただ、そのあとのダウンボールの精度をもっと高めていきたいと思いました。前回も今回も短い時間での出場だったのですが、今後はもっと長い時間出られるように、あるいはもっと頑張ってスタートから出られるように準備したいと思っています。」

■HO森川由起乙(1年生)



「ファーストジャージには初めて袖を通させていただいたのですが、思っていたよりは緊張せずプレーできました。試合前考えていたのは、思い切ってプレーすること。それと丁寧に一つひとつのプレーをすることです。あまり長い時間ではなかったのですが、実際にはまずまずできたのではないかと思います。次の試合以降も試合に出られたら、いい意味で一年生らしくハツラツとしたプレーをしていきたいです。ポジションはHOなのですが、今PRもチャレンジさせてもらっていますので、ポジションに関係なく頑張っていきたいと思います。」

■後半のインパクトプレーヤーとして活躍したFL木下修一(3年生)



「今日は残り20分からの出場だったので、最初から飛ばしていこうと思って臨みました。ボールを持って前に出られましたし、トライも取れたのでよかったです。次もメンバーに入れるように、ディフェンスもアタックもしっかり練習していきたいです。飛ばしていってもバテないスタミナづくりもやってきたいです。」

■後半、軽快なボールさばきでテンポを変えたSH天野寿紀(3年生)



「後半に自分が出たらしっかりインパクトを与えられるプレーでチームに勢いをつけられるようにと思っていました。自分は器用な方ではないので、ハートの部分を強くもって、タックルやチャージなどで気持ちの入ったプレーをしたいと常に心掛けています。今日は初めての対抗戦ということもあって、緊張で視野が狭まっていた部分もあったので、これからは気持ちの入ったプレーに加えて、周りを見られる冷静なプレーも心掛けてやっていきたいです。今日の試合で課題もたくさん見えたので、練習でしっかり修正していきたいです。次戦に出場機会があれば、まずはタックルから。タックルをしっかりやることで気持ちも入り、自信がついてパスやランもよくなるので、きっちりやっていきたいです。」

■的確なゲームコントロールで終盤を支えたSO中村有志(4年生)



「厳しく激しいプレーで、スタンドで見ている人たちが自分が出て不満に思わない、満足してもらえるプレーをしようと思って臨みました。ひたむきにプレーができてよかったと思います。テンポについては、入ったのがちょうど相手のスタミナが切れてくる時間帯だったので、そこで自分がテンポを上げていこうという意識はありました。自分は特別人に強いわけでも、足が速いわけでもないので、周りを活かして自分も活きるということをいつも意識してプレーしています。次の早稲田戦は、ゲームの入りのところから一人一人がどこまで自分に厳しい気持ちで挑めるかが大切になると思っています。」
 

《PICK UP PLAYERS》

経験値を実力に変える成長力
CTB 南藤辰馬(3年生)




NANTO TATSUMA
1990年7月19日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
伏見工業出身
身長176cm/体重77㎏/血液型A型

■今日の試合はどんなテーマで臨んだのでしょうか。
「とにかく厳しいプレーをしようと思っていました。まずはディフェンスから。先週と違って今日はCTBだったので(先週の試合はWTB)、しっかりタックルに入ろうという意識で臨みました。」

■いろいろなポジションをこなしていますが、今日のCTBというポジションはどう捉えていますか。
「CTBは慣れていますから違和感はありません。ただ、タックルにしても、間合いにしても、まだまだ足りない部分があると感じました。でも、試合で経験を積むことで得てきたものもあったので、今日もいいプレーをすることができたと思っています。」

■今日はアタックでの活躍が目立っていました。
「アタックでのプレーはいつも練習でやっているものです。ミスもありましたが、いい入り方ができたプレーもあったので、そのプレーを毎回できるようにすることが今後に向けての課題だと思います。さらに、厳しいディフェンスをする相手に対しても、強さでどれだけ立っていられるかという部分を自分で身につけていきたいです。」

■今、自分自身が成長しているなと思えるところはどんなところでしょうか。
「対抗戦での試合経験を積んできたことで、厳しい相手に対して、自分がもっと厳しいプレーができるようになっているという点が大きいと思っています。以前はAチームの試合に出ると少し臆してしまって、思い切りのよくないプレーをしてしまうことがありましたが、公式戦に出たことでそういうことがなくなりました。」

■今日はBKのコミュニケーションはうまくできましたか。
「中村亮土と初めて一緒にCTBを組んだのですが、練習でもコミュニケーションを取っていましたし、それほど悪くはなかったと思っています。ディフェンスの機会が少なかったので、ディフェンスでのコミュニケーションはこれから試されていくと思います。CTB、WTB、SOとしっかりコミュニケーションが取れるように練習していきたいです。」

■複数のポジションをこなすための準備としてはどんなことを心掛けていますか。
「春から『WTB、CTB、FBのどこでもできるようにしておいた方がいいよ』と監督から言われているので、いつでも心の準備はできています。この3つのどこかを与えられてできないようでは、自分が期待されているものを出すことができません。それでは意味がないので、どのポジションで出ても同じ力を発揮して、Aチームとしてふさわしいプレーができるようにと思ってやっています。いつどこを任されても大丈夫なように、常に準備しています。」

■自分のプレーでここを見てほしいという部分はどこですか。
「足が速いわけでもないし、体が大きいわけでもないので、入っていくときのスピードなどでどれだけ相手を混乱させられるかということを考えてやっています。こうしたことをしっかり考えてやらないと相手を抜くことができないので、どれだけ考えてラグビーをしているかという部分を見てほしいですね。」

■今後に向けての抱負を聞かせてください。
「まずは次の早稲田戦に出られるようにしっかり準備したいです。早稲田戦に出ることは一つの目標だったのですが、今は出るだけではなく、早稲田を倒したいという気持ちに変わっています。おそらく、観客数など今日とは違った雰囲気の中でやることになると思いますが、緊張感を逆にパワーに変えて、自分のいいところを出し、チームに貢献して、早稲田に絶対に勝ちたいと思います。」

「地位が人を作る」と言う言葉がある。Aチームでの公式戦の経験を積むごとに成長している。本人は「体が大きくもないし、足も速くない」と語るが、突破力やディフェンス力は、端から見ても試合ごとに向上しているように映るし、体重が少し減ったからか、走りにも切れが増しているような印象を受ける。この成長力は大きな魅力。今後もこれまでのような成長曲線を描ければ、チームにとって欠かせない大きな戦力となるのではないか。
 

《NEXT MATCH PREVIEW》

【11月3日(木・祝)関東大学対抗戦 VS早稲田大学 秩父宮ラグビー場 14時キックオフ】

対抗戦第五戦は対早稲田大学戦。対抗戦も終盤を迎え、いよいよ強豪との対戦が続くことになる。相手は昨年度大学選手権決勝の雪辱に燃えているはず。お互いの気持ちと気持ちをぶつけつつ、熱さと冷静さを保って、さらなる成長を遂げる好ゲームを期待しよう。



(文/木村俊太、写真/川本聖哉)

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