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関東大学対抗戦・第5戦 早稲田大学戦

関東大学対抗戦・第5戦 早稲田大学戦

2011/11/05

ひたむきなプレー、的確な判断力でライバルに勝利


11月3日(木・祝)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学 12-8 早稲田大学●



《帝京》
1吉田 2白 3前田(龍)⇒猿渡 4マニング⇒小瀧 5ボンド 6大和田 7松永⇒木下 8李 9滑川 10森田11伊藤(拓) 12南橋 13中村(亮) 14南藤 15竹田

《早稲田》※先発のみ
1上田 2高家 3横谷 4土屋 5芦谷 6金 7山下 8大峯 9西橋 10小倉 11原田 12藤近 13村松 14中   15廣野


対抗戦も中盤を迎え、第五戦の相手は早稲田大学。昨年度、大学選手権決勝で死闘を演じたライバルだ。
当然、激しいゲームが予想される。2万人近い大観衆が見守る緊張感にも打ち勝ち、これまで積み上げてきたものを発揮できるかどうかがポイントになりそうだ。
注目はFWの安定とディフェンス。これまでとは違った雰囲気の中でも、自分たちの力を信じて、思い切り発揮したいところだ。

【前半戦】
練習マッチも含め2011年度初対決の早稲田戦だが、この日もゲームの入りから集中力全開の帝京フィフティーン。序盤から一気に攻め込むと、相手の反則を誘い、敵陣ゴール前へ進む。注目のスクラム。8人が一体となって低い当たりから猛プッシュ。
ジワリジワリと歩を進める。そこからFWが前に出てラックを作り、すぐさまSH滑川がボールを持ち出す。電光石火のサイドアタックでそのまま持ち込み、先制トライを奪う(5-0)。

出だしからリズムを掴む帝京。その後も、集中力は切らさない。先発に復帰したCTB南橋、HO白らの好タックルで相手の攻撃を防ぐ。
11分にPGで3点を返されると、やや受け身の時間帯となる。スクラムでは相手の厳しい組み方に付き合う形になり、やや安定を欠く。20分には、相手のパスが乱れたことでディフェンスのタイミングもずれてしまい、逆転のトライを許してしまう。



しかし、ここからもう一度、仕切り直し。しっかりとタックルに入り、相手の攻撃を止める。前出の南橋を筆頭に、LOマニング・ボンド、そして2年目を迎え急成長を遂げるFB竹田らが好プレーを連発。FW、BK一体の攻撃を見せるがあと一歩で取り切れず、お互い一進一退の攻防が続く。結局、前半は、5-8とリードを許す形で折り返すこととなった。

FWの安定に関しては、スクラムではやや優位に立ち、接点では相手を上回る厳しさを見せるも、ターンオーバーにはわずかに及ばず、という場面が多かったように見えた。またディフェンスは、失点した時間帯を除けばおおむね安定。大和田・松永・李のバックローも、すっかりFWの戦力となったことを証明するプレーを見せ、後半によりいっそうの期待が膨らんだ。



【後半戦】
前半は相手がライバル早稲田ということと、大観衆の雰囲気に弱冠・硬いプレーの目立った選手もいたようだが、後半戦、帝京はさらに前に出続ける。相手WTBの突破をボンドががっちり止めると、ラックからハイパントを蹴ろうとした相手SHにマニングがしっかりプレッシャーをかける。ワンタッチしたボールは勢いを失い、大和田が好キャッチ。すかさずラックから滑川が絶妙のキックを見せる。
このボールをWTB伊藤(拓)が拾って、ビッグゲイン。ゴールライン手前でつかまるが、相手のキックに李が出足よくプレッシャーをかけてチャージ。帝京ボールの5mスクラムとなる。

FW勝負となる。スタンドを埋めた帝京ファンと一体となってスクラムをプッシュする。相手はたまらずコラプシングの反則。すると今度は判断良くBKへ展開。SO森田が相手ディフェンスの動きを見て縦に突破。最後は相手ディフェンスを2人、3人引き摺るようにして逆転のトライを奪う(12-8)。

このシーンを森田は振り返る。
「まずはFWで勝負して、そこで取り切れれば一番いいのですが、取り切れない場合は相手のディフェンスを見て、あいた所を突くという攻撃をしました。自分が仕掛けたのは特に準備していたということではなく、相手のディフェンスの動きを見て判断したプレーです」

前半の滑川のトライ同様、相手の動きを見てのトライ。ハーフ団のとっさの判断力でトライを取り切る力を見せてくれたのは、頼もしい限り。帝京の攻撃力の幅広さを物語るものと言えそうだ。



その後もディフェンスは安定。相手の早さに組織で対応し、突破を許さない。
攻撃では滑川の仕掛けも増える。その分、ラックに巻き込まれてノーハーフ状態になることもあるが、WTB南藤がラックに駆け寄り、安定した球出しを見せた。

南藤はこう語る。
「ラックからの球出しは、特に普段から練習しているものではありません。ブラインドWTBの位置にいてラックに一番近かったので、自分が駆け寄って出しました」
終了間際には4分という長いロスタイムを残し、ゴール前まで攻め込まれる展開になる。相手はスクラムを選択。意地と意地とのぶつかり合い。だが帝京は必死のディフェンスで守る。

厳しいディフェンスを繰り返し、最後はWTB南藤がインターセプト。ピンチを脱して、ノーサイドとなった。後半は、相手の攻撃を全員で止め切り無失点。12-8で帝京が勝利を飾った。
試合後、帝京の選手たちからは反省や課題の声が多く聞かれたが、この時期にこの経験を、しかも勝利で飾れたことは、最大の収穫だろう。何よりも、ノーサイド間際の粘りのDF、そして敵陣に切り替えしての一体となったモールの圧力は、このチームの今後の最大の武器になるに違いない。





《試合後のインタビュー》

■岩出雅之監督
「今日は得点同様、緊張感のある、最後まで気の抜けないゲームでした。内容に関しては学生たちもけっして満足はしていないかと思いますが、こうした大観衆での緊張感の中、また早稲田大学さんのすばらしいファイトの中で、自分たちの準備してきたことを出し、勝利という結果を得たことは、次につながる大きな自信になったのではないかと思います。いつもはこうした大きな試合には選手をリラックスさせて送り出すことが多いのですが、今日は選手の気持ちを巻いて送り出しました。自信だけでなく、たくましさも身につけてほしかったからです。ただ、これは私が巻くだけで選手に伝わるものではありません。良い相手、大観衆という最高のステージがあったからこそです。その分、過緊張になった部分もありましたが、こうした緊張感の中で試合に臨めた経験を生かして、もっとたくましく、力強い選手たちになってくれると思います。
シーズンはまだ中盤です。一歩一歩、もっといい準備を積み重ねていきますので、今後とも応援のほど、よろしくお願いいたします。」


■キャプテン・森田佳寿(4年)


「今日の試合も、まずは春から自分たちが積み重ねてきたことをしっかり出そう、そして接点での局面でひとつひとつ勝っていこうということをチームとして意識して臨みました。やはり、この大観衆、また早稲田大学さんという厳しい相手に対して、自分たちのやってきたプレーを正確に、粘り強く、根気強く出し続けることができないシーンが多くありました。
勝利したことはうれしいのですが、まだまだ準備してきたことの半分も出し切れていないと感じています。現在のところ、対抗戦全勝という結果が出ていて、こういうときには慢心や油断に気を遣うものですが、そういったものが出てこないくらい取り組むべき課題がたくさんあると感じていますので、もっともっと精進していきたいです。
今日は大観衆の中、赤いTシャツや服を身に付けて応援してくださる方がたくさん見えました。試合をしている自分たちにとって本当に力になります。これからもいい活躍ができるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。」

■相手ランナーを好タックルで止めたFL大和田立(2年)
「前半、ちょっと緊張して硬くなった部分もありましたが、後半はタックルも行けていたと思いますし、FWとしても前に出られたと思います。スクラムは相手の組み方への対応がうまくできずに不安定になってしまいました。
次の明治戦もスクラムは大きな意味をもつと思うので、どういうスクラムを組むかが課題になると思います。今日はボールを持って前に出る場面が少なかったのですが、次はボールを持って大暴れしたいです。ハンドリングとタックルを次の試合への自分自身の課題として取り組んでいきたいと思います。」

■ナイスチャージで逆転のきっかけを作ったNo8李聖彰(2年)


「前半は早稲田大学戦ということや観衆の多さもあって、少し上がってしまい、スクラムのボール出しなどでミスが出てしまったのですが、後半はすべて切り替えて、キックチェイスやディフェンスなどあらゆる場面で全力を出し切ろうと思って臨みました。
キックチャージの場面は、相手にプレッシャーをかければ次のチャンスにつながると思い、思いっ切りチャージに行きました。次の明治戦はFW戦がカギになると思いますが、絶対に負けないようにどんどん前に出ようと思っています。チームの状態もどんどん上がってきていますので、今日の試合で出た課題を修正して、次はもっといいゲームができるように頑張りたいと思います。」

■好判断でゲームをコントロールしたSH滑川剛人(4年)
「内容としてはまだまだ満足してはいけないと思いますが、結果として勝てたという点で自分たちの成長が見られたのでよかったと思います。早稲田は絶対に負けたくない相手。大学選手権では当たるかどうかわかりませんから、もしかしたら今日が人生で最後の早稲田戦になるかもしれないと考え、絶対にしっかりとタックルに行こうと思いましたし、最後に仲間の顔を見るまで自分自身のプレーをやり切ろうと思って試合に臨みました。
最後のペナルティの場面で、早稲田にスクラムを選択されましたが、帝京FWの一番近くにいる者として、うちのFWなら絶対に止めてくれるという自信があったので、仲間を信頼してプレーしていました。次の明治戦は全勝対決という形で注目されると思いますが、それよりも自分たちが成長できるゲームをやらなければなりませんし、一日一日を大切にして、日々、根気強く練習に取り組んでいきたいと思っています。」

■逆転につながるビッグゲインを見せたWTB伊藤拓巳(4年・ゲームMVP)
「今日は前回の反省をもとに、自分が何をやるべきかを考えて試合に臨みました。厳しい試合でしたが、勝てたことはよかったと思います。これに満足しないで、もっと上のレベルを目指してしっかり練習していきたいと思います。
タックルをしっかりやるという課題も、外を大きく抜かれるというシーンはなかったのですが、もっともっと上を目指してやっていきたいです。キックチェイスから大きくゲインしたシーンは、本当ならトライを取り切らなければいけない場面でした。取り切れなかったことで自分の弱さを実感したのですが、まだまだ時間はあるので、練習してもっともっと力強いプレーヤーになりたいです。あとはアタックでどういうふうにボールをもらうかという課題も見えました。」

■随所で献身的な働きを見せたWTB南藤辰馬(3年)


「勝ちたいという気持ちは毎試合もっていますが、早稲田戦は特にその思いが強くなりますし、自分の対面が足の速いトライゲッターだったので、絶対にトライはさせないぞという気持ちで臨みました。厳しいゲームでしたが、その中でも勝てたことはすごく大きな自信になりました。
ディフェンス面では中村亮土とコミュニケーションを取りながらやったのですが、うまくいった部分とうまくいかなかった部分があったので、課題として出たものはきっちり修正していきたいです。これからも厳しい試合が続きますが、次戦でもその後の試合につながるいいプレーをしたいと思っています。」

 

《PICK UP PLAYERS》

頼れるBKリーダーがさらなる成長を遂げる
CTB 南橋直哉(4年生)



MINAMIHASHI NAOYA
1989年8月10日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
伏見工業出身
身長175cm/体重85㎏/血液型O型

■今日の試合はどんなことを考えて臨んだのでしょうか。
「自分たちのやってきたことをしっかり出すということですね。相手が早稲田ということを気にせず、自分たちのラグビーをやろうという考えで臨みました。」

■試合を振り返って、やってきたことはしっかり出せたでしょうか。
「いいところも、自分たちの甘さも両方出た試合でした。ディフェンス面で、もう少しバインドをしっかりやらなければいけなかったと思います。一人一人のタックルが甘かったので、もっとタックルの精度を上げることができていたら、相手のスコアをもっと低く抑えられていたと思います。
ただ、練習からアングルとか横との連携といったことを意識してやっていけば、これからいい形になっていくと思います。」

■今シーズンは試合を外から見る機会も多かったですが、そうした機会が今日の試合にどんなふうにつながりましたか。
「自分に代わって入ったCTBがいいプレーをしてくれていたので、自分も負けてはいられないという気持ちで今日の試合に臨むことができました。こういういい結果につながってよかったです。」

■BKリーダーとして心掛けていることはどんなことでしょうか。
「森田、滑川というキャプテン、バイスキャプテンがチームをしっかりとまとめていますし、彼らはみんなにいろいろなことを伝えられる能力をもっていますから、自分はそれとは違う形で、プレーの面でしっかり体を張ってチームを引っ張るということを常に意識してやっています。」

■自分自身の成長を感じるのはどんなところでしょうか。
「周りをうまく使う部分でしょうか。あとは、日頃やっているタックル、ブレイクダウンで成長していると感じます。」

■自分の得意なプレーというのはどんなプレーでしょうか。
「得意なのはディフェンスですが、今年はアタック面での進化ということに取り組んでいますので、そこにも自信をもってプレーしています。」

■最後に今後に向けての抱負を聞かせてください。
「対抗戦の残り2試合をしっかり勝ったうえで、そのいい流れを大学選手権につなげて、3連覇に向けての準備をしっかりしていきたいと思っています。これからも応援よろしくお願いします。」

頼れるBKリーダーが戻ってきた。大きなケガや体調不良ではないが、疲労などもあり、無理をせず出場機会を慎重に見極めてきた。ここからはエンジン全開。ディフェンス、アタック両面で、あのワクワクするようなプレーを存分に見せてくれるはずだ。“人への強さ”がアタック面により活かされたとき、帝京の得点力は激増するに違いない。ピッチを離れるとチビっ子ファンからも絶大な人気を誇る南橋。卒業後は神戸製鋼に進むことも内定。伏見工→帝京→神戸製鋼。帝京のビッグレッドマシンが、まずは大学ラグビーで完全燃焼を見せる。

 

《NEXT MATCH PREVIEW》

【11月20日(日)関東大学対抗戦 VS明治大学 秩父宮ラグビー場 14時キックオフ】

対抗戦第六戦は対明治大学戦。強力FWで鳴らす相手だが、FW戦なら負けるわけにはいかない。対抗戦の全勝対決として注目を集めそうだが、帝京としてはその先も見据えた上で、自らの成長につながる試合を目指す。対抗戦も残り2試合。いよいよ帝京が全開となる。

[スタンドを赤く染めよう!…森田キャプテンのコメントにもあったように、選手たちには皆さんの声援が絶大なる力になっています。次の試合も赤い服を身に付けて、帝京フィフティーンを応援しましょう(東日本大震災復興支援チャリティTシャツも、帝京ブースで100円にて販売中)]




(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

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