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2023/9/9【 関東大学対抗戦A 】vs成蹊大学 マッチレポート

2023/9/9【 関東大学対抗戦A 】vs成蹊大学 マッチレポート

2023/09/11

関東大学対抗戦A 対成蹊大学戦

9月9日(土)・駒沢オリンピック公園陸上競技場
○帝京大学117-5成蹊大学●


《BRIEF REVIEW》

いよいよ2023年度シーズンの対抗戦が開幕した。ワールドカップ・フランス大会も始まり、ラグビー界が大いに盛り上がる中、大学ラグビーの熱い戦いにも注目だ。
帝京の初戦の相手は、昨季、AB入替戦に勝利し、Bグループから昇格した成蹊大学。歴史と伝統ある相手に対してリスペクトを抱いて戦い、かつ今後につながる収穫の得られる試合にしたい。
開始直後、帝京はミスと反則でピンチを招くが、相手のノックオンなどもあり、攻撃に転じる。3分、FL奥井のキックとラックでのターンオーバーからつなぐ。FB小村がラックからパスアウトし、LO本橋-SO井上-WTB高本(とむ)とつなぎ、高本が走り切って今シーズンの初トライを奪う(5-0)。
11分には相手のペナルティキックをWTB高本(とむ)がうまくノータッチでキャッチしてつなぐ。WTB高本、FB小村で前進し、さらにラックからSH李-SO井上-FL奥井-LO本橋-FL奥井-WTB青栁(潤)-CTB戒田と渡り、戒田のパスが乱れかけるも、自分でうまくキャッチし、そのままトライ(12-0)。
このあと、14分、16分とキックオフからのノーホイッスルトライを連続で奪うが、その後、ミスが出て、守りの時間帯となる。それでも全員でしっかりと守り、大きな傷には至らない。
22分にはモールから持ち出してつなぎ、WTB青栁(潤)が、30分にはCTB五島が自陣から個人技で、32分にはPR上杉の大きな前進からつないでWTB高本(とむ)が、38分にはラインアウトからつないでCTB五島がそれぞれトライを奪い、帝京が大きくリードする(50-0)。
前半終了間際の43分にも、FB小村の抜け出しからCTB戒田へとパスが渡り、戒田がトライをあげ、55-0で前半を折り返した。
ハーフタイムには相馬監督から「相手のディフェンスにスペースがある時、そこに対して個人で戦うべきか、チームの形を整えて戦うべきかを考えよう」との声がかかった。
後半も開始直後から帝京の攻撃が続く。2分、相手ボールのラインアウトを奪ってつなぐ。ラックからSH李-HO江良-SO井上-CTB五島-CTB上田-CTB戒田と渡り、戒田が抜け出してトライを奪う(60-0)。このトライは、ハーフタイムに確認した「チームの形を整えて」取ったトライと言えた。
6分にはラックでNo.8延原がジャッカルし、ターンオーバー。SH李-CTB戒田-CTB五島と渡り、五島が前方へキック。これを追いかけたSH李が追い付いてそのままトライ(67-0)。
この後は、ラインアウトからのモールを2連続で押し切る。10分にはHO江良が、12分には江良に代わって入ったHO當眞がトライ(79-0)。16分にはハイパントをキープしてつなぎ、ラックからSH李-CTBアスイ-SO井上-CTB五島-FB小村-CTB上田-No.8延原と渡り、延原がディフェンスを振り払ってトライ(84-0)。
このあと、キックオフからのボールを自陣22mの内側でパスミスし、インターセプトされてトライを奪われるが(84-5)、帝京は慌てることなく、チームでの攻めの形を整えていく。
26分、LOシュミットの前進からチャンスを作り、ラックからSH上村-SO井上-CTBアスイ-FB青木と渡り、青木が抜け出す。CTB上田にパスし、上田がトライ(91-5)。
さらに、28分にはキックオフのボールをパスでつないで、37分にはスクラムを敵陣10mライン付近からゴール前まで押し込んでからつないで、どちらも最後はWTB青栁(潤)がトライ(110-5)。
41分にはラインアウトからのモールを押し込み、FL奥井が、44分には相手ボールのラインアウトを奪ってつなぎ、LO尹がトライ。
相手の最後の攻撃も、FL青木がジャッカルしてノーサイド。117-5で、帝京が対抗戦初戦を勝利で飾った。

《COLUMN》

―― 個人技で攻めるか、チームとして攻めるか ――

今シーズンの対抗戦が始まり、帝京は117-5と大差で勝利しました。

得点差が大きく開いてしまうと、意識の上ではそんなつもりはなくても、ついつい気持ちが緩んでしまったり、楽に点を取ろうとして雑なプレーをしてしまったりといったことが起こりがちです。しかし、この日の帝京にはそうしたものはほとんど見られませんでした。

試合後、この試合でどんな収穫を得られたかについて、江良颯主将に聞くと「個人で戦ってしまうと自分たちの形にならないということがよくわかったことが一番の収穫」「大学日本一を見据えた時、やはり個人ではなく、チームで形を作って戦うようにしなければ勝てない」と答えてくれました。

実際、この日の試合、個人技でディフェンスをこじ開けてトライにつながったシーンもいくつかありました。一方で、チームとして意図をもって攻撃し、相手のディフェンスの穴を広げてからそこへ攻撃していくというシーンもたくさんありました。
江良主将が語るのは「個人技で相手のディフェンスをこじ開けられるからといって、そればかりやってしまうと、チームとしての戦いが雑になってしまう」ということでしょう。

もちろん、個人技でディフェンスをこじ開けることが必ずしも悪いわけではないと思います。状況によっては、膠着した局面を打開するための大きな武器ともなるはずです。しかし、それをやるのは、この日のような大差のついたゲームにおいてではないということでしょう。
むしろ、大差がついたからこそ、チームとしての戦い方を丁寧に確認して、それを実行することが大事で、各々が自分勝手なプレーをやり出してしまったら、仮にトライを取れたとしても、チーム力は上がらない(日本一に近づく歩みにならない)ということだと思います。

また、江良主将はこんな話もしてくれました。
「個人技でトライを取っても、そのうれしさはその人だけのもの。でも、チームでトライを取ったら、チーム全員のうれしさになる。僕たちが目指している『One Heart』にも通じる。」

この日、帝京は「1勝」以上の大きな収穫を得ることができたようです。

(文/木村俊太・写真/川本聖哉)

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